退屈過ぎるんだよ
ああ~~~もう、退屈過ぎる……!
あれから、もう十日くらい経っただろうか。聡の助言に従って、大学とバイト以外は至極まじめに家に直帰するという生活を続けてきたがもう限界だ。
だってさ、ついこの間まで、暇があれば聡ん家で百合香さんの猛特訓を受けてたんだよ。
吐くかもってくらい毎日体も霊力も鍛えてたのに、それがいきなり無くなったんだから手持無沙汰なのは仕方がない。さくらと出会う前の生活に戻っただけなのに、こんなに違和感があるもんなんだなあ。
ダダ洩れコーラの霊力をなんとか自主トレで少しずつでも回復できないかと思ったけど、この状態の時に無理すると、変な風に癖がついて良くないんだってさ。
しかも今日と明日は土・日だから余計に時間が余って仕方がない。遊びに行こうにもどっかでえげつない霊とか拾ったら、こんどこそ百合香さんに破門されそうだから、それも怖くてできない。
聡と一緒ならある程度は守ってくれるらしいけど、さすがにそこまで迷惑かけるのも嫌だし。
自然俺は引きこもりかっていうくらい、部屋の中でじっとしていることが増えていた。今日なんか布団から出るのさえ億劫で布団の中でもだもだしてる。完全にダメな人だ。
これがあと二十日も続くのかと思うと、正直気が重い。
「なあ、さくら。退屈だよなー」
声をかけたら、布団から三角耳がぴょこんと顔を出した。次いでつぶらな瞳が見えたかと思ったら、嬉しそうに顔にスリスリすりよってくる。
ちえ、なんだよ。ご機嫌だなあ。
さくらはこうして声をかけるといつでもご機嫌で、スリスリしてくれたり舐めてくれたりする。
うん、可愛い。
よしよしと撫でてやれば、布団の中でしっぽが嬉し気にモフモフと暴れ始める。
そのうちすっかり嬉しくなってしまったのか、さくらは布団から飛び出して、ベッドの周りを凄い勢いで跳ねまわり始めた。
退屈ではないらしいが、体力はもちろん有り余っている。
あんまり楽しそうにさくらがはしゃぐもんだから、布団の中にいるのがだんだん馬鹿らしくなってきた。
えいやっと布団をはいで伸びをしながらベッドを出ると、窓からはさんさんと日の光が降り注いでいる。空は真っ青、雲一つない晴天だ。
「うっわ、いい天気だなー! なあさくら、ちょっとくらい外に出たいよなあ」
そう話しかけたら、さくらが目の前でビシッとお座りを決めてくれた。
うっわ、目が超キラキラしてる。「お散歩なの!?」とでも言いたげだ。そしてしっぽがめちゃくちゃフリフリされてる。
そうか、さくらも行きたいんだな、外に。
俺は、必死で考えた。
こんな俺の状態でも、変な霊に憑かれないところってねえのかな。
この度、この『仔狐さくら、九尾を目指す』が、第六回ネット小説大賞の一次を通過しましたー。
こんなこともあるんだなあとビックリです。
二次通過は難しいかと思っておりますが、さくらちゃん、頑張ってくれるといいなあと思います。