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聡のレクチャー

そう言ったっきり、聡はまた黙り込む。


自分の手を見つめて、テレビに視線を向けて、俺の顔を見たかと思ったらさくらをモフモフと撫でて。


なんとも落ち着かない素振りなのに、口元は何か言いたげに開きかけては閉じるを繰り返している聡は、明らかに挙動不審だ。


しばらくそんな怪しい動きを繰り返していた聡は、ついに「あーもう!」と一人で喚いてから、俺にしっかりと視線を合わせてきた。



「一カ月!」


「?」



目の前に突き付けられた一本指に、俺は訳が分からずきょとんとしてしまった。



「少なくとも一カ月は仕事を回さないってばーちゃんが言ってた」


「百合香さんが」



さっきから、それを言い淀んでいたんだろうか。



「大事をとって一カ月、安静にさせるって言ってた。お前の体、本調子に戻るまでそれくらいかかるんだってさ」


「え……でも、体は別になんとも」



そう、ちょっと疲れてるくらいで別にもう、どうってことないんだけど。そう言おうとしたら、聡が真剣な顔で頭を振る。



「体は大丈夫だってばあちゃんも言ってた」


「じゃあ」


「やべーのは霊力のほうなんだってさ。格上の浄霊を無理やりやろうとして、霊力の上限をこえたんだろ」



俺は、仕方なく頷いた。情けないけど、百合香さんからも明確にそう説明を受けている。



「そういう時ってやたら危ねえらしいんだ」



ばあちゃんからの受け売りだけど、と前置いて、聡は俺の目の前にペットボトルを無造作に置いた。



「このコーラがお前の霊力だとするとな、いつもはこう蓋がしまっててさ、必要な時だけ蓋を開けて使ってるんだってさ」


「へえ」



まさか聡になにかをレクチャーされる日が来ようとは。おれは若干違和感を感じながらも真剣に話を聞く。



「んで、今回はこう」


「うっわ! 何すんだ!!!」



こいつ、コーラ振り回してから開栓しやがった!!!!


泡立ったコーラが噴き出して、机に、部屋に、思いっきり噴き出した。ベッドまでの距離が遠かったことだけが幸いだったが、俺の部屋も俺も甘いベタベタで盛大に濡れまくったんだが。



「こんな感じで霊力を無理やり増幅して使った状態らしい」


「聡てめえ、言葉で説明しろよ……!」



したり顔で説明を続ける聡に、ついクレームが口をつく。


ふきんやタオルじゃおっつかねえんじゃないか? まだまだ泡がペットボトルの口からダラダラ流れてる。これもう、バスタオルを犠牲にして部屋中ふきふきする羽目になるんじゃねえかな。



「で、今のお前の霊力はこんな感じ」



そう言われて、俺の目線は自然ペットボトルの口に向く。


……え、この、いまだにダラダラ溢れてる、このコーラの状態ってこと? 俺の霊力が?

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