表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/96

雅人おにーさん、どうしたの?

どうしよう。


雅人おにーさんが、ずっとションボリしてるの。


聡のおうちから帰ってきてから、ため息ばっかりついてるの。テレビからは楽しそうな笑い声が聞こえてくるのに、雅人おにーさんはちっとも楽しそうじゃない。


ねえ、どうしたの? もしかして聡にイジワル言われたの?


心配で、雅人おにーさんの胡座の中に飛び乗った。


うーんと体を伸ばして、雅人おにーさんのお腹に体をこすりつける。こんな時、なぐさめる事でも言えればいいのに。



「さくら」



あたしに気づいた雅人おにーさんが、優しい目で見下ろしてくれた。大きなあったかい手が、あたしの体にゆっくりと降りてくる。



「ごめん、心配かけちゃったんだな」



モフモフと両手であたしの顔を挟むようにして撫でてくれる手は、いつもみたいにとっても優しい。


気持ち良くってあたしの尻尾は右へ左へユラユラ揺れる。


あああ〜〜〜……極楽……。



じゃない!


ウットリしてる場合じゃなかった!


あたしじゃなくって、雅人おにーさんを元気にしたいのに!


一生懸命に見上げたら、雅人おにーさんは困ったみたいに眉毛を下げて、小さく笑い声をもらした。



「大丈夫だよ、さくら。そんなに心配そうな顔しないで。ちょっと自己嫌悪なだけ」



ジコケンオ?


よく分かんないけど、雅人おにーさんをいじめるヤツは、ちゃんとあたしがぶっ飛ばしてあげるから!


そう息巻いてはみるけれど、雅人おにーさんを苦しめてるヤツがなんなのか、分かんないことには噛みつきようもないんだよ。


ねえ、雅人おにーさん、あたし何と戦えばいいの?


困って小首を傾げたら、雅人おにーさんはあたしを抱っこしたまま、ごろんと仰向けに寝っ転がる。


そのまま背中をふわふわ撫でてくれながら、雅人おにーさんは小さな声で呟いた。



「なあ、さくら。俺、百合香さんに呆れられちゃったよ」



あたしに話しかけてるみたいなのに、どうしてか独り言みたいにも聞こえる、とっても寂しそうな声。聡じゃなくて、百合香おばーちゃんに叱られて、そんなにションボリしているの?



「しばらくは仕事もさせられないって。俺が無茶したせいで……ごめんな、さくら」



えっ! あたしがぐーすか寝てる間に、そんな話になっちゃってたの!?


あの優しい百合香おばーちゃんが、そんなに怒るだなんて。


驚きでポカンとしちゃったあたしの耳に、いきなり玄関のピンポンが鳴る音が響いてきて、あたしは思わず軽く飛び上がってしまった。


もう、いったい誰なの。今、大事なお話してるとこなのに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ