助かったよ、聡!
さ、聡!
「うっわ、雅人!? なんだよ、マジで倒れちゃってんじゃねえかよ!」
良かった!聡が来てくれた!
安心感が一気に襲ってくる。聡がこんなに頼もしく見えた事初めて……!
ありがとう! ありがとう、聡……!
スリスリと聡の足に体を擦り付ける。あたしに出来る事なんてこれくらいしかなくてごめんなさい。でも、本当に助かったよ、ありがとう聡。
「お、さくらちゃん! やだもう、何これ、可愛い!」
滅多に聡にはスリスリしないあたしが珍しく一生懸命にスリスリするもんだから、聡はだらしない顔で頭を撫でてくれた。
「もう大丈夫だからなー。とりあえず脈もあるし、ちゃんと連れて帰るから」
「ああ、早くしな。なんのためにお前を連れて来たと思うんだい、霊力を使い過ぎると命を落とす事だって普通にあるんだ」
ウメさん……!
ああ、ウメさんが聡を連れて来てくれたのね、ありがとう、ウメさん!
「え、そんなヤバイのか」
「決まってるだろう。そもそも雅人で浄化できるレベルの霊体じゃなかった。霊気でたりない分は自分の体力と命で支払うんだよ。体力だけで済んで僥倖じゃないか、相手が素直で助かったよ」
「ひえっ……」
「分かったら早く運びな。早く霊気を補充してやらなきゃどんどん体力を消耗する」
「ら、ラジャー!」
ぐったりした雅人お兄さんの両腕を持ってぐいっと背中に担ぎ上げた聡は「お、重い……」と情けない声を上げている。
何よもう、軟弱者! 頑張ってよう、雅人おにーさんがこんなに真っ青なのに!
「ちくしょー雅人のヤツ、俺より長いからうまく背負えねえよ。うわ、マジでどうすっかな」
ホントに困ったらしい聡は一生懸命に雅人おにーさんの腕を引っ張ったり、エイっと気合いを入れて反動で背中に持ち上げようとしたりしていたけれど、ついに眉毛を下げてあたしを見た。
「さくらちゃん、人の形になって雅人のお尻押してくれる?」
あたしもハッとした。ハラハラしながら見てるだけじゃなくて、手伝えば良かったんだ!
変化してもあたしの力は貧弱で、一生懸命に押してもなかなか雅人おにーさんは持ち上がらなかった。何とか背中に乗っけた時にはあたしも聡もホッと安心の息をもらしたくらい。
意識がない人間ってダランってしてブラブラして、とっても扱いにくいのねえ。
聡のヤツもヨワヨワで、雅人おにーさんを背負ったまま、ヨロヨロふらふらと危なっかしい。それでもようやくお家に帰れる帰れると思うと安心した。
最後に振り返って見てみれば、雅人おにーさんが浄化したからなのか、この道はなんだかとってもキラキラして見える。もうあの黒いモヤモヤも、嫌な匂いも、気持ち悪い感じも無いの。
あの子達もお空に溶けちゃったし、本当にここはキレイになったのね。
「おーい、さくらちゃん! 置いてくよー。雅人のヤツ重くって俺もう限界だし!」
まだおんぶしたばっかりじゃないの!
あたしが側で見張ってないと、聡のヤツすぐにへばっちゃいそう。
慌ててあたしは、聡の側に駆け寄った。




