ジンジャに居たのは
お、お祓い⁉
なぁに、それ。よくわかんないけど、このサトシとかいう男が雅人おにーさんに要らぬ助言をしてるっぽいのだけは直感で分かる。
何にも知らないくせに、どうして余計な口出しするのよぅ!
ばか! ばかぁ!
ぽかぽかと前足でパンチを繰り出してみたけど、悔しい事にあたしの体は透明で、サトシの体をすり抜けちゃう。全然気づいてすらもらえなかった。
くそぅ、おせっかいサトシめ。覚えてらっしゃい!
話が終わったのか雅人おにーさんが移動するから、サトシに捨てゼリフだけはしっかり言ってやった。……悲しい事にサトシには聞こえてないのは分かってるけどね。
そうこうしているうちに、雅人おにーさんはおせっかいサトシが言ってた方向にゆっくりと歩いていく。
サトシが言ってた、ジンジャってところに行くつもりなの?
ねぇ、やめようよ。
ろくなところじゃないよ。きっと。
一生懸命、雅人おにーさんに話しかけたけど、やっぱり全然気づいてくれないの。
どうしよう、雅人おにーさんもおせっかいサトシも、あたしが悪ものだと思ってるんだもの。きっと、あたしが悲しくなるところに連れて行こうとしてるに決まってる。
もしかして、お仕置きされるの?
痛いの、やだなぁ……あっ! あのおっきい何かにまたぶつかられたらすっごくイヤだ!
それとも……雅人おにーさんの傍に、居れなくなっちゃうとか?
考えていたら、どんどん悲しくなってきた。
雅人おにーさん……あたし、迷惑?
すっかりしょげてしまったあたし。
でも、雅人おにーさんは容赦なくどんどん石段を登っていく。
なんだか。
なんだか、上の方から、すごく大きな力が押し寄せて来た。
やめて、雅人おにーさん。
この先に行っちゃやだ。
なんだか、凄く強いのがいるの。
雅人おにーさんの部屋にいる黒いヤツなんか、足元にも及ばないような、ものすごく大きな力……。
雅人おにーさんが石段を登り切った時、その強い力が姿を現した。
まっ白で、大きな……白い龍。
「うわぁ……綺麗」
怖かった事も忘れて、思わず呟いた。
それくらい綺麗だったの。鱗が、白いのに虹みたいに光るの。ピカピカじゃなくって、不思議な……霧に光が当たったみたいな優しい光。
それなのに、あたしをチラリと見た白い龍は、「ふん、野狐か」って、ばかにしたみたいに呟いて、ふいっとむこうに行ってしまった。
悲しい。
雅人おにーさんにも嫌われちゃったのに、会ったばっかりの綺麗な白い龍にまでばかにされるなんて。
ちょっとだけ落ちこんでいたら、白い龍が優しそうな人を連れて戻ってきた。……あれ?この人を呼びに行っただけなのかな?