表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仔狐さくら、九尾を目指す  作者: 真弓りの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/96

守りたいもの

どうやら、さくらにも漸く仔猫を必死で抱きしめる、小さな女の子が見えたらしい。


俺はホッと息をついた。


困惑した様子で動きが止まり、さくらのフサフサ尻尾と三角耳がへにゃりと垂れた。俺の顔を見ちゃあ女の子を見る、という動きを繰り返して、不安そうに前足はしっかりと俺の腕を掴んでいる。


そのまんまるでつぶらな瞳が「どうして? これがあのウネウネなの?」とでも言いたげに、俺を見上げていた。


うん、俺もびっくりしたよ。この子と話が出来れば詳しい事情もわかるんだけどね。


俺はしっかりとさくらを抱き上げたまま、また一歩前に出た。



「来ないでって言ってるじゃない!」



途端に女の子の髪の毛が、激しく揺らめいて威嚇してくる。


蹲ったまま仔猫をしっかりと庇っている女の子は、ギラギラとした目で俺たちを睨みつけてくる。名前を聞いても、歳を聞いても、睨みつけてくるだけで何も答えてくれない。


出てくる言葉は「来ないで」だけだ。



「参ったな、話が通じない」


「当たり前だろう? 簡単に話が通じるくらいなら、悪霊になったりしないからねえ」



ウメさんは飽きたみたいに、顔を洗い始めてしまった。



「今は雅人の浄化であの姿を保っちゃいるが、放っておいたらすぐにあの気味の悪い姿に逆戻りさね」


「……」


「下手な情けはかけるもんじゃない、あれだけ頑なだと浄化も骨が折れる。一思いに滅してしておやり」



でも、あの子、あんなに必死で仔猫を守ってる。


俺が車に轢かれたさくらを守りたかったみたいに、あの子もあの仔猫を守りたいだけじゃないのか。


あんなにちっちゃな癖に、あんなに必死に。



「さくら、滅するのはお前の仕事だろう」



ウメさんが一言そう言うと、さくらの耳がピーン! と立った。



「待って! 待ってくれ、さくら!」



俺は慌ててさくらを抱く手に力を入れる。ジタバタと暴れるさくらを、しっかりと抱き締めて俺は声を張り上げた。



「仔猫……その仔猫、ケガでもしてるのか?」



その言葉を聞いた途端、急に女の子の顔がクシャッと歪む。



「死にそう、なの」



初めて、来ないで以外の言葉が女の子の口から溢れでた。


やっぱり。女の子本人の事じゃなく、仔猫の事なら答えてくれる気がしたんだ。


あんなに必死になって守っている仔猫。この子にとって、今大事なのは自分じゃなくてこの小さな仔猫だったんだろう。


俺だって、さくらが死にかけてる時に名前だの歳だの聞かれても、それどころじゃねえって答える筈だ。


この女の子は今、きっとその瞬間で時が止まってる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ