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戦い方は慎重に。

良かった。


ふらふらと倒れ込んだ女の人を、雅人おにーさんが介抱してくれて、ちょっとホッとする。


まさかあたしと戦ってるっていうのに目の前で他の獲物に手を出すなんて思わなかった、なんて貪欲なヤツなの。


でもそのおかげで、大きなダメージを与えられた。


さっき噛み付いた腕はもげたように途中から消えてなくなって、ヤツは苦し気にのたうち回っている。今ならば追撃できるかも知れない、あたしはヤツはの手が後ろへ大きく振れた瞬間を狙って、ヤツに踊りかかった。


さらに牙をたてたら、焦げたような嫌な臭いが立ち昇って、また腕が一本蒸発していった。



「ギ……ガア……ッ……」



ヤツから距離をとって着地したあたしを、鋭い殺気が襲う。あんまりビリビリするくらい殺気を放つから、ヤツを注意深く見てみたら、黒髪の隙間から鈍く光る目が、あたしを睨みつけていた。


腕を二本ももぎ取られたというのに、まだまだ全然弱気になったりしないなんて。そう思っていたら、ブルブル震え始めたヤツの体を突き破るみたいに、新しい腕が生えてきた。


さっきの女の人から奪い取った生気を使ったんだろうか、新たに生えてきた腕は獲物を求めるように気持ち悪く動き始めている。



「う……わっ、エグ……」



後ろで雅人おにーさんの嫌そうな声がきこえる。


でも大丈夫よ、雅人おにーさん。あたし、絶対に負けないから!



腕が一本増えたところで、最初の状態からしたらそれでもまだ一本少ないんだもん。それに、今の腕を出した事で、ヤツは少し疲れたみたいにも見えるから。


ウロウロと、ヤツの隙を狙って周囲を歩く。


ヤツの黒い髪の毛と枯れ木のような腕はウネウネと動いているけれど、やっぱり一定の距離に近付かないと襲いかかってはこれないようで、イライラとあたしが飛びかかってくるのを待っている気配が伝わってくる。


どうするか。


今まではヤツの隙を狙ってたからあの髪の毛と腕の一斉攻撃を受けずに済んだけど、今飛び込むのは危ない気がする。


飛び道具が欲しい。でも自分の中の気の残り具合を見ると気を放つには心もとない。チラリと後ろを振り返ると、雅人おにーさんがとっても心配そうに、あたしを見ていた。


迷ったけれど、あたしはヒラリと雅人おにーさんの傍に降りたつ。ウメさんにも、出来る限り身に危険の及ばない戦法を取るように、耳にタコが出来るくらい言われてるから。



「どうした?さくら」



雅人おにーさんの脚にスルリと身を寄せ、スリスリしてみた。霊力をおねだりする時いつもこうするから。少しだけ霊力を貰えれば、気の塊をヤツにぶつけられると思うんだ。


なのに雅人おにーさんは「怖いのか?」と抱き上げてくれた。


違う!

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