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やっぱ行くしかねぇか

「だよなー」


俺だって思うよ。 仔狐助けそこなって恐怖体験とか、何その絵に描いたようなホラー感、って。



「だよなー、じゃねぇよ! とっとと神社に行け! お祓いとかしてすっきりしねーとマジでやべーぞ」


「やっぱ行くしかねぇか」




そうして友達の聡に紹介されたのは、白龍神社というちっさめの落ち着いた神社だった。


意外な事に俺の通う大学のほど近くにあったその白龍神社。何度も前を通った事があっただろうに、今まで気に留めた事もなかった。結構な数の石段を登っていくうちに段々と生活音が消えていき、豊かな自然と鳥の声だけが周囲に残る。


学生達で賑やかなこの街に、こんな静かな場所があったとは。


鳥居の前で一礼し、さらに続く石段の端をゆっくりと登る。さすがに結構汗ばんできたけど、まだまだ寒が残るこの季節、鳥の声や爽やかな風もあいまって、むしろ気持ちいいくらいだ。


「桜、キレイだな……」


あの仔狐を助けた日も、桜がキレイだった。

あの桜は今では既に散ってしまって、若々しい葉桜に変わっている。標高が高いからか、ここの桜は今が満開みたいだけど。



石段を登りきってたどり着いたのは、小さな社。賽銭箱も鈴も控え目なサイズで、神主さんも見当たらない。


これって、どうすりゃいいんだ?





困ったものの、せっかく来たんだしまずはお参りするか……と、手水を使い社に近づいた時。


「ああ、本当だ」


後ろから声が聞こえた。


「何かご用ですか?」


生垣のむこうの日本家屋っぽい家から出て来たらしい、柔和な笑顔のオニイサン。話を聞くと彼がなんとこの神社のたった一人の神主らしい。



この神社に来た経緯を簡単に話すと、神主さんは俺を拝殿へと招き入れ、親身になって事情を聞いてくれた。


「成る程、二週間ほど前から」


「はい……それまでも毎日夜中の二時に目が覚めてて、ヤな感じだなぁとは思ってたんですけど、この二週間は特に酷くて……獣の唸り声とかするし」


「それで貴方は、その仔狐に祟られたと?」


「……タイミング的にそうかなぁと。夜眠れないのが結構こたえるんですけど、なんとか出来ませんか?」



俺的にはかなり真剣に頼んでいるというのに、神主さんは困ったように笑った。



「その仔狐を祓いに来たんですか?」


「祓うっていうか、俺的には寝れるようになればそれでいいんですけど」



今のところ、それ以外では別に困ってないし……と答えれば、神主さんはそれはそれは嬉しそうに破顔した。



「良かった、兎に角祓って欲しい、の一点張りじゃなくて」



どういう意味だ。

怪訝な顔で神主さんを見れば、神主さんはなぜか優しい笑顔で俺の肩あたりの空間を撫でた。


そう、何もない空間を、愛しげに撫でたんだ。



何か、何か居るんですか、そこに⁉



ガクブルする俺に、神主さんは事も無げにひと言。




「確かに可愛い仔狐ちゃんがいますね。ただこの子、どうやら貴方を守っているつもりのようですよ」



な、なんすか、それ!

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