霊力増幅を習得!
うぅ……怒鳴り声……なあに?
目が覚めたら雅人おにーさんがウメさんからめっちゃ怒られてた。
「違う!霊力は体の中を循環させて、膨らませてからさくらに送るんだよ、わかんない坊だね!」
送る?
あ……雅人おにーさんの霊力……あったかくって気持ちいい。
そういえばさっき、ウメさんが貰うだけじゃなくて増やして返せば雪だるまみたいに霊気が大きくなるんだって言ってたっけ。そうやってお互いに霊力を高めて返していくと、どんどん強い霊気が練れるんだって。
雅人おにーさんから貰った霊力が、体中にジンワリと沁みてくる。
毎日ごはんみたいに貰ってるからなんの抵抗もなく体に浸透して、まるで冷え切った部屋でストーブにあたってるみたいに気持ちいいの。
さっきまでしっぽも上がらないくらい疲れてたけど、雅人おにーさんの霊力を貰うと一気に元気になっちゃうから不思議だ。もう、体中がポカポカあったかい。
そのあったかさを集めて集めて、雅人おにーさんがあったかくなるといいなあって思いながら、あたしは雅人おにーさんに霊力を送り返してみた。
「……!?」
静電気がバチバチってした時みたいに、雅人おにーさんの体がビクッと揺れる。
そっか、霊力を貰うのは毎日みたいにやってたけど、送り返すのは初めてだもんね。最初は結構ビックリするよね。
「さくら?」
まさか、って顔であたしを見てるけど……そう、今霊力を送り返したのはあたしだよ。
そう伝えたくて、雅人おにーさんをしっかり見ながら尻尾をやんわりと振る。湯船の中でふんわりと揺れる尻尾を見て、雅人おにーさんはなんとなく察してくれたみたい。
ひとつ頷くと、送り返された霊力を受け入れて体の中で循環させた雅人おにーさんは、またもやビックリしたみたいに目を開く。
分かる分かる!
最初に自分のじゃない霊力が入ってくると、違和感あるもんね。
でも、どうやらそれが良かったみたい。違和感のおかげで体の中を巡る霊力を追いやすくなったらしい雅人おにーさんの、それからの成長は早かった。
あれから毎日修行して、あたしも雅人おにーさんも大分強くなったと思う。
あたしはともかく、雅人おにーさんは本当に大変そうだった。だって修行だけじゃなくってお勉強もあるし、バイトだってある。ごはんも作らなきゃいけないし、お掃除や洗濯だって大変そう。
ああ、あたしに実体があれば、少しは助けてあげられるのに。
ウメさんによると、うーんと強くなったらあたしみたいに体がない霊体でも実体を持てるようになるんだって。
それは、すごくすごく魅力的だなあと思う。
その、うーんと強くなる第一歩として、あたしと雅人おにーさんは今日初めて、ついに悪霊討伐のお仕事を請け負ったのだった。