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消極的な決め方だけど

さくらの答えは案の定『俺の霊力をさくらに移す』だった。さらに言えば神社で預かって貰うのも嫌らしい。


でも俺だって、さくらだけ危険な目に合わせて、さくらだけ飢えた思いをさせて、さくらだけ下手したら消滅の危機に晒されるなんて、そんな手段をとれるわけがない。


俺は説得を試みることにした。



「なあさくら、さくらの言うとおりに俺の霊力をさくらに移すとしてさ、さくらは神社に行った方がいいと思うんだ」



うう、あからさまに落胆している。

見開かれた目には急激に涙が盛り上がって、今にも涙が落っこちそうだ。耳としっぽのションボリ具合はもう見なかったことにしたい。ごめん、さくら。



「あのな、さくらが俺に危険な目にあって欲しくないように、俺だってさくらが危険な目にあうのは嫌なんだ。腹をすかせたり消滅する危険がない守られた空間に居られるなら、俺はそれがいいと思う。この神社なら安心だし、可愛いがってくれる。あの、俺さ、毎日遊びに来るから」


「……自分が傍にいるのは迷惑なのか、と言っているそうですよ」


「いや、違くて!」



弁解しようとしたら、さくらは耳をギュッと押さえて座り込んでしまった。



「聞いたはいいものの、答えを聞くのは怖いようですね。こんなに嫌がられると、さすがにこちらも若干微妙なんですが」


「す、すみません……ええと」



神主さんに微妙な顔をされてしまった。

しかし参ったな、毎日会いに行ってもダメなのか。


俺だってさくらと一緒に暮らすのはそりゃ楽しいよ。もともと動物好きだし、狐があんなお利口で可愛くて勇敢だなんてこと知らなかったから、今じゃ可愛くて仕方ない。いや、今はなんか女の子の姿になっちゃってるけど、それはとりあえず置いといて。とにかく、優先順位というか、命の方が大事だろう?


困ったなあ、とさくらの頭をヨシヨシと撫でながら逡巡する。さくらが、耳を押さえたまま、つぶらな瞳で見上げてきた。涙と鼻水でなんかもう顔は凄いことになってる。


ああもう、しょうがないなあ。



「こういう時は消去法だな、嫌なヤツは頭から退かしていって、最後に残った方法に決める、って事な?」



消去法、という言葉にきょとんとしたさくらに軽く説明してから、俺はひとつずつ選択肢を消していく。



「まず、バリア張って貰って体払い、これは無しな」



親に払って貰うのも、なけなしのバイト代から捻出するのも無し。もうデカい金は払えない。



「次に、俺の霊力をさくらに移すのも無し」



さくらは首を傾げているが、だってしょうがないじゃないか。



「だって俺はそれでさくらだけ危険な目に遇うのは絶対嫌で、さくらは俺と離れるつもりはないんだろ?だから神社に行くのも無しな」



耳がピンっと立ち上がった。離れないで済むのは本当に嬉しいらしい。



「で、残る選択肢はひとつだな」


「ええ、霊力はそのまま残すんですね。じゃんじゃん手頃な悪鬼を倒しまくって、雅人君もさくらちゃんも強くなってくれるのは我々も大歓迎ですよ」



さくらはまた、しゅーんとなってしまった。これまでの言動から考えるに俺が危険に晒されるのが本気で嫌なんだろう。ぶっちゃけ俺だって怖いよ。今回の相手はさくらに任せたくらいだから、多分そこまで強力なヤツじゃなかったんだ。それでも俺、一瞬ヤバいと思ったし。


正直どんくらい危険なのか、どれくらい怖いのか未知だし。第一神主さんがにっこり笑って妙に上機嫌なのも怖い。



「とりあえずそれでやってみて、マジでヤバかったら再検討できますよね?」



予防線を張ってみた。

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