もう1つの解決策
「あらら、随分としょげちゃいましたね」
「ちぇー雅人、愛されてんなー」
二人が面白くなさそうに言うのも無理はない、ってなくらいには、さくらの落ちこみようはあからさまだった。可哀相過ぎて思わず頭をモフモフと撫でてから、抱き上げる。
さくらは気にしちゃいないだろうが、今はケモ耳しっぽ付きでも見た目は可愛い女の子だ。伏せはダメだ。
おお、抱き上げてみて初めて分かる真実。やっぱり見た目が変わって見えるだけなんだな、重さは全く感じない。いやいや、霊体なんだから当たり前か。なんてことを考えつつ、休日のお父さん的に片腕で軽く抱っこすれば、さくらは不安そうにギュッとしがみついてきた。
これは……神社に預けるって選択肢は絶対にナシだな。
俺はさくらをしっかり抱っこしたまま、神主さんに向き直る。
「それで、もう一つの方法は?」
「スポ根まるだしで、1000本ノックです」
……はい?
意味が分からん。正直びっくりし過ぎてアホ面だと思うけど、それくらいわけがわからない。神主さんはぽかーんと口を開けた俺と聡を見てクスクスと笑った。
「例えですよ、例え。雅人君を餌にじゃんじゃん手頃な悪鬼を倒しまくって、雅人君もさくらちゃんも強くなれば、まあいずれは問題なくなりますからね」
……うわぁ、思ったより何のひねりもなかった。
「うわっ⁉」
さくらが猛烈な勢いでバタつき始める。
「危ない!危ないからっ、……暴れないで、さくら」
「何言ってんのよ、そんな危ない事雅人おにいさんにさせられるわけないでしょ!……って、怒りまくっているそうです」
「あ……さくらが?」
確かに押さえ付けてないと、今にも神主さんに襲いかかっちゃいそうな勢いだ。
「なんかこう、この前さくら達が暴れてるの聞こえなくしたみたいに、逆に俺とさくらの霊力が目立たないようとかはできないんですか?」
「おー!シールドっぽい!」
頼むから黙っててくれ聡。真面目に話してるのがなんか恥ずかしくなるから。
「できなくはないですが、二人の強まった霊力を隠すには結構な力をつかいます。供物の量がハンパなくなりますよ? とりあえずご両親のご理解がないと難しいと思いますが」
「あ、供物……」
そうだよな、神様だってタダ働きしてくれるわけじゃないんだもんな。
「雅人君の体で払って貰う事も出来ますが、死んでから相当こきつかわれますよ」
何そのブラック宣言。
「うわぁ、霊界って労働基準法とかないだろうしなー、凄そう」
「珍しく同意見だ」
「珍しいの⁉」
「さくらちゃんにも今、外道、って罵られたそうです」
外道。よくそんな言葉知ってたな。
「ぜったい反対!ぜったい反対!ぜったい反対!……って、全力で叫んでるみたいですね」
うん、俺も体払いは絶対反対。