進化?
「進化の過程?幽霊になってからもそんなのあるんですか?」
「それはまあ、もちろんありますよ、例えばそこらの猫でもね。猫又って分かります?」
「あーなんか聞いたことありますね、昔話的なもんで」
カンヌシさんと雅人おにーさんが穏やかに話してるから、あたしもお耳をぴくぴくさせつつ聞いてたんだけど、急に聡のヤツが落ち着かない様子になってきた。
「聡君のとこのウメさんなんか、そのうちなっちゃうと思いますよ?」
カンヌシさんの言葉に、あからさまに聡がびくっとする。
「相当な長寿でしょう?普通の猫の倍は生きてますもんね」
「やっぱ……やっぱそうなの?」
「え?猫?ウメさんって猫?」
「うん、母ちゃんがまだチビなときにこの神社から貰ったんだって……絶対30年以上生きてると思う」
「ええ、元はうちに迷いこんじゃった野良だったんですけどね、結構長いこと白龍様といたから、神気がうつっちゃったのかも知れないですね。とにかく、ウメさんみたいに長い長い時間を生きて、生きたまま霊界に片足突っ込んじゃうか、さくらちゃんみたいに強い心残りがあってとどまっちゃうかが、そもそものスタートになるんですよ」
はあ…と、雅人おにーさんと聡が感心したみたいに溜め息をつきながらあたしを見る。視線を感じてなんだか落ち着かなくって、あたしはファサッ、ファサッと大きく尻尾を動かした。
「ただ、大多数の霊は10年も経たないうちに淘汰されるんですよ」
それって、この前言ってた『消えちゃう』ってヤツ?
「やはり器がなかったり、器が衰えた状態ですからね。存在を保っていくのは存外大変なことなんです。ただその中でこうしてごく僅かな一部のモノは進化していきます」
カンヌシさんはそう言いながらあたしの頭をぽふぽふと撫でた。
「さくらちゃんみたいに劇的に変化するのは滅多にないですが、大体が同じように霊力を何がしかから摂取して存在を強めていくんですよ」
「もしかしてあの悪霊とかいうヤツもそのために」
「力を蓄えようとするのは本能ですから、明確にそういう意思があったわけではないでしょう、ただ、そうして力を蓄えた霊が段々と霊位をよくも悪くも上げる事になるんです」
あたしはゾッとした。あのまま雅人おにーさんの力を吸って黒いイヤなヤツが力をつけていたら、近いうちにアイツがレベルアップして、雅人おにーさんにもっと酷いことをしていたのかもしれない。
「最初は恐怖心や霊力…これは土地の力の場合も多いんですが…とにかく力を吸い取って蓄え、姿を意識的に見せられるようになります。そして次は相手に意思を伝えられるようになる。動物霊であれば人のように立ち上がった姿を模すようになり、この頃には自身の存在の属する処を定めるようになるのです」
「属するところ……」
「人に仇なす存在となるか、自然の中に居場所を定めるか…神と契約を交わすものもいますよ」
そう言ったカンヌシさんは、にっこり笑うとまたあたしの頭をぽふぽふと撫でた。
「こうして人を守る存在になるものも多いですしね」
うん!あたし、雅人おにーさんを全力で守るよ!
嬉しくなってちぎれそうなくらいしっぽをフリフリと振った。




