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白龍神社に逆戻り

「いやぁ、悪かったね聡君」


「悪かったね、じゃないですよ! 俺がどんだけ怖い思いしたと思ってるんですか!」



驚いた事に、先日処置をして帰したばかりの雅人君と仔狐ちゃんだけではなく、聡君までこの社に突然来たものだから何事かと思えば、どうやら昨夜は聡君が怖い目に遭ったらしい。


必死の形相で訴える聡君に、申し訳ないと思いながらも僅かに苦い笑いが込み上げる。霊感が強いというわけでもないのに、彼はなぜかしらこういう不幸な出合いが多いのだ、昔から。しかも今回は私が簡易的に行った処置が原因なわけだから、私としても苦い思いがある。


前回は雅人君に騒ぎが聞こえないように、雅人君側の聞こえる感覚を弄っただけだからね。あの部屋に他の人が泊まれば、それは確かに仔狐ちゃんの奮闘ぶりが聞こえてしまうだろう。


仔狐ちゃんもすっかりションボリしてしまっている。先日同様、またもや耳とふかふかしっぽがシューン……と力なく下がり、心なしか項垂れてるし。いや、可哀相な事をしてしまった。



「お前が手を抜くからだ」



白龍様からも呆れたようにお小言を、いただいてしまった。いや、元はと言えば白龍様が丸投げするからですよ?やることメッチャ多かったんですから。


さりとて聡君の話を聞く限り、仔狐ちゃんは毎夜随分と大暴れしているようだし、このままにして近所から煩い的に苦情をもらうハメになったら雅人君が可哀相だ。



「ふむ、名も貰ったようだな」


ほう、なんと名付けられましたか。


「さくら、というらしい」


可愛い名前を貰えたようですね。


「雅な名よの。本人も気に入っておるようだ」



白龍様の言葉に、頭の中だけで返事をする。白龍様の言葉は通常、他の人には聞こえないだけに、声に出して会話しようものなら怪しい人になってしまうので仕方がない。白龍様は私の考えなど手に取るように分かるらしく、考えるだけで会話が成り立ってしまうのだ。考えを読まれるというのは、いつもの事ながら若干恥ずかしい。



「それは仕方がなかろう」


……そうですね。ところで、仔狐……さくらちゃんの霊力はいかがですか?


「ふむ、そうよの。あと一週間もすれば、あの部屋の悪しきモノを祓えるほどにはなろう」


そうですか、良かった。順調に成長しているわけですね。



名を貰った事で、仔狐さくらちゃんと雅人君の魂につながりが出来る。そのつながりから、彼の傍にいるだけで、さくらちゃんにはちょっとずつ霊力がチャージされるように術を施したのだ。


雅人君は実は『視えないのに霊力が高い』タイプだ。


霊などを視る能力はないというのに霊力だけが高いと、本人は気付かずとも今回のように悪しきモノから力を狙われる事がある。あの部屋の悪しきモノは、雅人君に悪意を送り込んで自分が取り込みやすい力に変換してから、雅人君の力を吸いとっていたのだろう。


まだ日が浅い段階で相談に来てくれて良かったのだ、本当に。



さくらちゃんにも雅人君の力を横流しする回路を開いてあげたから、今では徐々に力を増してきている。彼女の場合は名付けによって作った絆を元に、雅人君側にダメージがいかないようにしてあるが……はっきり言って前回はこれに相当の力を使ってしまって、他にたいしたことが出来なかったのだ。



さて、それでは処置に入りましょうか。

力の回路を太くして……音が他に漏れないように仕掛けをしないとね。



私はおもむろに仔狐……さくらちゃんに歩み寄った。

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