第8話 出逢い
お読み頂きましてありがとうございました。
「それが・・・。」
「ああ、これが認識票だ。無理して全員のモノを取ってこなくてもいい。誰かひとりだけでも、どのパーティーかわかるからな。」
ギルド長が首に掛けられた鎖を引っ張り出して見せてくれた。もし、パーティーが全滅していた場合に遺品をすべて持って帰ってくるわけにはいかないからだ。
魔法の袋があってもそれは難しい。だが何も無いよりはマシだ。魔法の袋には1ヵ月分の食料だけが入っている。
「だが、それだと家族が納得しないだろう?」
「納得するさ。災厄の真っ最中のダンジョンへ救出に行こうっていうのだからな。これが、ギルド秘蔵のマップだ。完全には信用しないほうがいいぞ。なんせ作ったのは10年前だからな。」
地下10階までのマップは、ギルドの大事な収入源で誰でも買える。だがラスボスのいる地下30階までマップが作られていることは秘匿中の秘匿だ。
貴族など重要な人物を救出に行くためだけに作られたものだからだ。
「そして、これがダンジョンストーンの代わりだ。だが、決して無理をするなよ。」
大小様々な大きさの石が手渡される。とにかくなんでもいいから変わりのものをセットするだけでも災厄の被害が軽減されるらしい。
「ああ、ダンジョンストーンをはめる場所もわからないからな。」
「それは大丈夫だ。しばらくはダンジョンストーンのしずくが光っているらしいからな。」
無理をするなといいながらも、なんとしても災厄を止めたいらしい。だが俺は数人でいいから助け出せれば十分だと思っている。それが実績となり、勇者一行への風当たりが弱まればOKだ。
向こうには皇帝も殺したくない皇女が止めなかったという事実があるからだ。一蓮托生ということは、皇女を減刑させれば、俺たちも非難は受けるだろうがなんとか生き残れるに違いない。
姑息だが、できない空想ばかりでは生き残れない。
・・・・・・・
救出方法は単純だ。地下1階からしらみつぶしに探して生きていたら、担いでくるそれだけ。作戦もなにもあったもんじゃない。
地下1階・2階と進むが誰とも出会わない。モンスターが居れば横をすり抜けるだけだ。本当はレベルアップのために背後から攻撃したいところだが体力を温存するためであり、一撃で死なないモンスターが居た場合のことを考えるとこれが精一杯だ。
地下3階・4階と駆け抜けても誰とも出会わない。手に入れたのは認識票ばかり、やはり全滅なのか?
そんなことが頭をもたげる。頭を振って悲観的な考えを捨てる。
そのときだった。すぐ近くから悲鳴が聞こえる。
そこは、地下5階でマップには、休憩所との記載があった。
以前はモンスターが現れない安全地帯だったのだろうが、今はモンスターの溜まり場になっていることが多い。実際に地下4階までは、そこ以降の道を放棄するしか無かったのだ。
とにかく、行ってみるしか無い。
「助けにきたぞ!」
幸いにもモンスターの数は少ない。それに救出すべき人物との間に居るモンスターの横を通り抜けられるスキもあるようだった。
問題は、その人物だった。黄色い声だったのでまさかと思ったが、そこに居たのは必死に剣を振り回している少女ただひとりだったのだ。