第5話 モンスターの弱点
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「えっ、こいつもですか?」
ここは地下30階にラスボスが居る初心者ダンジョンなのだか、団長から説明を受けるモンスターの弱点がすべて、背中なのだ。
前からでは倒すのに団長のような大きなダメージを与えられる人間でも一撃ではできないのに背中の特定の部位に剣を突き立てると簡単に倒せてしまうのだ。
だからなのか、俺の訓練のためと言いながら、他の団員には抑える役目を与え、俺が素早く敵の後ろに回り込み剣を突き立てる・・・。ひたすら、繰り返すだけである。どう考えても、俺ひとりが働いていて、他の団員は暇そうだ。
めっちゃ押しつけられてはいるような・・・。気のせいだと思いたい。
それが功を奏したのか、その時は割と直ぐにやってきた。レベルアップだ。この世界のレベルアップはゲームで言うHPなどのステータスが一律何倍かされるらしい。
初めてのレベルアップは5倍、次は2倍というように徐々にその倍率が下がっていくのだという。今日は2回レベルアップしたので・・・つまり、俺の走る速度はオリンピック記録の20倍になったというわけだ。
しかも走り込みの訓練のお陰で40キロメートルほど走れるだけの体力はついている。フルマラソンを12分ほどで走れる計算だ。もうここまで来るとわけが分からない。まあどうやっても、ドーピング検査に引っかかるのだが・・・。
地下10階に着いたところでキャンプを張る。キャンプを張るに適した場所もすでに調べられており、予定通り進んでいるというわけだ。
各階のモンスターは常にポップアップしており、俺たちが通り過ぎた後も初心者の冒険者たちの訓練やもっと階下では低レベル冒険者たちが日銭を稼ぐために奮闘しているらしい。
ここがわりと安全なダンジョンと呼ばれているのにはわけがあり、地下30階まで到達すると好きな階から入口まで戻れる道具が与えられるのだ。
「こんな楽な、ダンジョン攻略は初めてだ。なあ皆。」
「そうですね。こんなに余裕でキャンプを張れる日がくるとは思いませんよね。」
他の団員の話では、団員全員でヘトヘトになるまで戦って3日かけてギリギリ、この場所まで来れるという。
やっぱり、押し付けられていたんだ。ジロリと団長を睨むがどこ吹く風だ。
それにどういう理屈かわからないが、年を取れば取るほどレベルアップはしにくくなるなだそうだ。メンバーは皆40歳を越えており、年に数回、このダンジョン攻略を行っているが誰もレベルアップしたことが無いのだそうだ。
「だから、お主に倒して欲しかったのだよ。それにその防具があれば、まずダメージは無いしの。」
・・・・・・・
ダンジョン内でのキャンプは穏やかだ。しかし、いつもヘトヘトになるくせに鍋やフライパンまで持ち込んでいるのはどういうわけだ?
まあ、温かい食事にありつけたのだから文句があるのでは無いのだが・・・。
「いやぁ・・・。」
そういってそれらを持ち込むように指示した団長は言葉を濁した。『箱』スキルに入れておけばいいだけだが。