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針子の乙女  作者: ゼロキ
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加護効果

男の人は、あっさりと上着を脱いで渡してくれた。

ちょっと面白そうな表情で。

と、いうか肌着も…無駄に長い上着に隠れて見えなかったが、ズボンもろくでもねぇ縫製だった。

「ユイ、とりあえずソレを直してみなさい。女の子が男性の肌着やズボンを、脱げと言うような目で見ないように」

ロダン様が頭痛そうに目元を押さえて言うので、しぶしぶ受け取った上着を見た。

無駄に長い上着は、ベルトで折り返し固定されてても膝を隠すほどだった。脱いで渡されれば、もう地面から十五センチほど…といった具合だ。

魔法使いのローブにしても足首が微妙に覗いてる感が、すごください。

更にはただの筒のような作りで、前も後ろもないような…ベルトで折り返してたくしあげてなければ動き辛かったのだろう。

さっそく作業場にて、ロダン様と男の人に見守られつつ、邪魔な裾を切り落とそうとした。


したけど出来なかった。


ガチッと音がして、鋏の刃が入らなかったのだ。

「う?」

「…ユイ、それは腐っても加護縫いされた服だ。刃は通らないよ」

ロダン様が苦笑して言う。

「加護、縫い」

「王の服は全て、ヌィール家当主が用意することになってるからな」

「王様?」

「やっぱり、聞こえてなかったか。前王のロメストメトロ・アージット様だ」

「おぅ」

うむ、驚いた。

よくあっさり脱いでくれたものだ。

たぶんロダン様への信頼が厚いことと、前王様が強そうなのと、私が貧弱だけど、自分で刃が通らないことを確かめるまで納得しそうになかったからだろう。

あと、出来はともかく下着もズボンもコレと同じなのだろう……

「針子のユイ、です」

スカートのはしっこを摘まんで一礼。

そういえばあまりの酷さに、挨拶を忘れてました。

反省。

しかし心の大半は、この残念な服をどうにも出来ないのかと、悔しくてたまらないという感情に持っていかれていた。

と、私の影からにゅっと珍しい男性型の精霊さんが現れて、腰の剣を抜くといきなり服にブッ刺した。

レイピアみたいな剣だった。抜いたの初めて見た。

…あれ、飾りじゃなかったんだ。

「え」

前王様が目を丸くして、せいれいを見る。

おじさまなのに可愛いな、この人…と思いながら、改めて服を手にとれば、加護縫いの力が籠った糸が、全て力を失っていて、あっけなくブチブチと切れた。

「おぉ」

思わず歓声をあげ親指を立てて、フッとクールに笑って(サイズと形容的にカッコイイより可愛いんだけど)影へと戻った精霊さんを称賛した。

バランバラになった布と、宝石飾りやらを作業台に広げ、私は鋏を構えた。

加護縫いなら私も出来る。

ソレをばらすと面倒なことになりそうだけど、魔眼やら精霊さんに好かれてることやら、どうやら男性タイプの精霊さんの力が…ちょっと問題になるかもしれんことやら………

この屋敷の人達に慕われるロダン様の人柄と、そのロダン様が連れてきた前王様を信頼して、


私はとうとう人前で、全力の腕前を披露することを…決めた。




まぁ、理由の大半は、加護縫いの効果があるからって、こんなしょぼい服をえらい人に着せるかっ?!という、怒りであったりした。


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