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針子の乙女  作者: ゼロキ
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レース編み

高速でレースを編み込む私

蜘蛛が吐き出す糸は、細さや透明度も自由自在なので、糸代金ゼロ。レース編み用の道具さえあれば、無限に生み出せることのできる趣味となります。魔力を込めないと半透明から白……と、色合いのバリエーションはないですけど。

リハビリ中も、真っ先に体の感覚を取り戻したかったのが、この人生で会得した針子技術だ。

自分でもちょっと人間離れしたとしか表現できない早さと美しさ……でも作業部屋以外で針仕事は出来ない。

なにせ針、刺す物だ。

まぁ、自分は一本しか持ってないから管理も何も…という状況だが。

私の不調が急速な成長痛だと知ったリーヌおば様が、用意しプレゼントしてくださったのがコレだった。

流石に前世でもレース編みまではしてなかったのだけれど、編み物はしてたし、おば様に基本的な手本を教えられただけで、技術会得しました。

……もしかしたらこの世界って、レベルとかスキルとかあるのかもしれません。

私、裁縫関連に対して、レベル最上位なのかも……

高級そうなレースを自分で生み出せる喜び、たまりません。

一層仲良くなったメイドのお姉さま方には、嫁入り用のベールとして欲しいわときゃっきゃっと褒められました。

やっぱりこの世界でも結婚はウエディングドレスなのでしょうか?

ぬ、縫いたい、作りたいっ

綺麗なのとか、可愛いのとか、清楚なのとかっ


今の私なら、材料さえあれば余裕なのですよっ


「お嫁さんのドレス、つく、りたい、ですっ」

私が目を輝かせて言うと、お姉さま方も手を挙げました。

「作ってユイちゃんっ、資金ならたっぷり出せるわっ」

「私もっ」

「私もぉっ」

そんな休憩中なお姉さま方に、通りかかったメイド長様………濡れたような紫色の髪と黒い瞳で、溢れんばかりの毒のような色気を纏った……ん?魔王様女幹部?というような威厳をもった年齢不詳な彼女………エンデリア様がそっと顔を覗かせ一言零して去って行った。

「婿か恋人を見つけられてから、ユイ様におねだりなさいね?」

メイドのお姉さま方は、一斉にビシッと背筋を正されて………それから一斉にorz状態となった(笑)

「え…っと、みんな、いない、ですか?」

皆、美人なのにと、心底不思議だと思う私に、お姉さま方は深くため息をついた。

「あのね、この屋敷でちゃんと働いてるメイドの大半は、婚約者が嫌で実家と縁を切った娘達か、メイド仕事の生きがいとか誇りがあって人生捧げちゃってる娘達が………良い男を捕まえて、メイド仕事をすることも応援されてる勝ち組しかいないのよっ」

「はは、まれに恋人が出来ても、仕事と俺、どっちが大切なんだとか言い出す女々しい男しか」

「んなこと言い出す時点で、仕事の方が大切になるわ」

「わかるわ~、更にあほなのになると、ご主人ロダン様が好きなのかとか、あほか、主人に色目を使うようなメイドもどきとかと一緒にみられるなんて、侮辱、許すまじっ」

彼女達の体から、ろくな男がいやしねぇと吐き出すようなオーラが湧きあがった。

あぁ、仕事にプライドと生きがいを持った、ハイスペックな女性達の悲哀………もうちょっと結婚適齢期を過ぎてしまうと、仕事に人生を捧げる分類に入ってしまうのですね………

イイ男が捕まらないかぎり。

「ま、へたな男、に、つかまる、より、幸せ?」

「ユイちゃん、言うわね…」

「父、母、見る……夢見れ、ない」

「あぁ」

「うん」

「なるほど」

子供を道具扱いが前提の夫婦だ、妹はよく結婚に夢を抱けるもんだ……なんか、あの子の脳みそ具合が今更ながらに心配。

ちなみに前世でも、結婚に夢みたことなかったなぁ、亭主関白な父と言いなりで奴隷のようだった母……ある意味あの夫婦も子供を自分の優秀な遺伝子を引き継がせる道具としてしか見てなかったと思う。

大学行かずに就職するってだけで、縁を切られたしね。

自分の思い通りにならないと怒鳴る父と、どうしてお父さんの言うことが聞けないのと泣きながら叱る母

友人、先輩達に恵まれてなかったら、人間不信に陥っていただろう。

それか全てを放棄して、親の言いなりの人形か・・・・

あの家庭環境でよくぞ反骨精神たくましく成長できたものだと、現世の私は感心する。

前世は最低限の命の保証があったからなぁ…高校は卒業した年齢だったし。

ここじゃ、下手に家出したって孤児院に行きつけるか保護されるかも謎だったしな……知識が簡単に手に入らないのは痛かった。

「けっこん…かぁ」

針仕事さえ取り上げられなければ、どうでもいい……と、恋愛願望の枯れてる私であった。

熱に魘されてる時にロダン様のいくつかの質問の一つに、そう答えたことを思い出したのは、ロダン様が彼を紹介された時だった。

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[気になる点] ❯ロダン様が彼を紹介された時だった。 ロダン様<に>又は<から>彼を~ もしくは ロダン様が彼を<私に>紹介された時だった。 ではないでしょうか?
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