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針子の乙女  作者: ゼロキ
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これはやばい

ヤバイ

これはやばい


鏡を前にして、私はだらだらと内心で冷や汗を零した。

成長痛に襲われ、ほとんどを寝込んだ一カ月

それから一気に失った辛うじて付いていた体力と、自身のコントロールのつかなくなった体のバランスを整えるリハビリ

完全復活には二カ月ほどかかってしまった。

その間、自分の容姿の変化など、気をとめていられるはずもなかった。

薄い赤毛っぽかった髪色は、虐待の五年間で汚れて痛んで灰色だった。

この屋敷に来て洗われて、自分の髪から赤が抜けて白髪になっていたことには気付いていた。

現在の私の髪

痛んだ部分は切り落とされ、さらりと短めのおかっぱとなっているのだが………

輝きはただの白髪ではない。

銀だ。

私が自分で操る魔力の糸と、ほとんど変わらない輝きが、小さな頭部を煌めかせている。

痛んでいたせいで、白髪にしか見えなかったらしい。

がさがさガリガリだった肌は、つやつやのもちもち、真っ白しっとりだが全体的に細い。

手足は十五にふさわしく伸びたのだが(小柄にだが)、細くて握ったら折れてしまいそう。

胸も尻も、ウエストもなかった幼児体型……いや、下腹部は餓鬼のようにぽこんとふくれてた体つきも……くびれと丘が産まれていた。

掌で泳いでしまうくらい囁かな丘、両手を当てるとほわっとした柔らかさを感じる。

桜色の頂は小さめだが、美乳だ………見たら優しく可愛がらずにはいられない怪しさがある。お風呂でメイドのお姉さま方にも散々揉まれたが、小ささゆえか型崩れもこれ以上の成長もなかった。

そこからきゅっと締まったウエストは、コルセットもいらないほど細い。

尻も小さいなりにちょっとは大きくなっていた。

医師助手メイドお姉さまの話では、幼少期の栄養不足の深刻さは精霊付きでなければとっくに死んでてもおかしくない状況だったので、これ以上の女性的な成長は初潮が来ても望めない可能性が高いと言われた。

脇も股間も無毛なのもそのせいか、急成長のせいか、どちらかだろうと言われた。

こちらも今後生えない可能性は高いと言われた。

処理の面倒がなくていいけどね……前世での特有の単語が頭に浮かんだが、女性として黙っておく。

顔の方は、眼だけがぐりっと大きかった金褐色の部分は、健康な肌色と肉のバランスでもって大きめくらいで収まり、飢えた様子独特の特徴ではなくなっていた。

がさがさだった唇はつるつるぷるるんな、リップも塗ってないのに桜色

少し鼻は低めだが、欠点というより童顔っぽい容姿をひき立てる顔のパーツバランス


本当にやばい

なんだこの容姿、

完全に犯罪者ロリコンホイホイじゃないか?


栄養バランスばっちりな、ちゃんとした量の食事in精霊エキスの効果がこれだっ!

という状態だった。

危うい雰囲気を醸し出す、精霊のような美少女

それが前世の目から見た、今の私だった。

「………」

リハビリ後半辺りから、メイドのお姉さま方が着飾らせたがったわけがよく分かる。

我ながら、これに着せたい服を作りたい欲求が山と湧いて出る。

下着はキャミで十分だよね、レースとか甘いのもクールなのも合いそう。

レースのガータベルト欲しい。

太ももまで絹の靴下で覆いたい。

寒色も暖色も合いそうだけど、くっきり原色は避けた方がよいだろう。

ヌィール家の女性は原色ドレスばっかだったから、イメージ的によくないのもあるが……基本顔立ちの種類が違うわ……本当にあの家の子供だったのかしら?

「じつの、おや、似て、ない」

鏡を覗きこんで呟く私に、周囲のメイドさんやリーヌおば様は深く頷いてくれた。

「どちらかというと、王家の顔立ちですね。五代ほど前にヌィール家に降嫁された王妹、美姫ソワール様に似てらっしゃいます」

やっと完全復活した私の様子を見に来られてたウルデ様が、さらりと問題発言をかました。

「あー、ヌィール家がまともだった頃の」

「国家精霊の映し身とか、伝説になってるソワール様ですか」

「確かに、色合いは違うけど肖像画とか像とか似てるわ、ユイは幼い感じが前面に残ってるから、ぱっと見気付かないけど」

「人攫いがよだれをたらしそう………」

皆黙りこくった。

犯罪者ロリコンホイホイという私の、『やばい』という認識は間違っていないらしい。

いや、ちゃんと十五にも見えるよう成長した分、余計に性質が悪いのかもしれない。


本人でさえ、山ほど着飾らせて、金か銀の等身大鳥籠に閉じ込めてしまいたくなるような容姿なのだ。

一人での外出は、対策がとれるまで禁止となった私だった。


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― 新着の感想 ―
ユイの感性だと、自分の容姿もマネキンやドールみたいに思うのかな。
[一言] 『いいのかい、そんなにホイホイついて来ちまって?』   ↓ 逮捕、尋問、裏付け捜査、芋づる式逮捕。
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