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針子の乙女  作者: ゼロキ
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緊急処置

 「軽いですな・・・・・・・・」

 ノリのよい声に、センリさんは気が抜けてしまったようだった。

 「センリさん、大丈夫?」

 「ユイ様ぁ」

 まだ座り込んでいたセンリさんは、目を涙で潤ませながら私を見上げた。

 「私、三級・・・・・・・・センリさん、二級、の、資格」

 転生者意外で、ゲートを利用できる存在・・・・・・・・

 アリアさんが言った、転生者誕生の原因。


 転移者

 神の宿代? 寄り代?

 

 『センリさん、日本語、わかる?』

 「おぉ! ユイ様、祖父母の故郷の言葉が話せるのですかな!? 私、かろうじていくつかの単語ならば、覚えておりますぞ! 話せませんが」

 「センリさんの、お祖父様と、お祖母様、もしかして、        ?」

 瞬間、私の喉に足元から影が飛んできた。

 「ユイ様!」

 「ユイ様!?」

 誰も止められなかった。

 カシャンという金属音がして、遅れてジャラリと鎖が擦れる音が響いた。

 私の首には、自分の影と繋がった鎖付きの首輪が・・・・・・・・魔力でもない実体はない、さわれないのに確かに存在する不思議な物質がはまってしまった。

 足元の影の側には、予想外に押し出されてしまってぽかんとした表情の闇の精霊さんが転がっていた。

 「ガイド殿!? ユイ様に何が!」


 《第三級資格保持者・が、第二級資格保持・第一級資格保持・条件を看破・しました。緊急・処置発動します》


 あ・・・・・・・・なんか、ヤバい?

 でも、神様の作ったゲートだもん、資格保持者の推測なんてできない方がおかしいよね?

 第一級が神様を宿した転移者達で、第二級がその近しい血縁者・・・・・・・・第三級が私達、転生者。

 「まって! まって下され!! 緊急処置とは、ユイ様に何を!」

 センリさんは真っ青になって叫んだ。

 その姿を見て、私はなるほどと納得してしまった。

 これ、普通に推測するくらいなら、きっと問題にはならなかった。

 「センリさんの、安全の、ため?」

 「ユイ様!? 何を納得なされておりますかな?」

 「あ~、ユイ様、えっと、何かマズいことを言い当てちゃった感じですか?」

 エンデリアさんから解放されたミマチさんが、さわれない首輪を確認して鎖の伸びている影に這いつくばって顔を寄せた。

 「これ、魔力じゃないですね~。神力系だと推測します」

 「闇の精霊が、影から追い出されてしまっていますからね、その推測は当たっているでしょう」

 「どうすればユイ様は解放されますか!?」

 皆さん真っ青だ。ミマチさんさえ、口調はいつも通りなのに、顔色悪く表情が強張っている。

 「・・・・・・・・」

 「わ、わわ、私のせいですかな?」

 特にセンリさんは、センリさんこそがきつい首輪をはめられてしまったかのような、絶望感溢れた表情だった。

 「センリさん、のせいじゃない、よ?」

そろりと足を動かしてみる。

 「おお!」

 歩いた、けれど私の足は前に進まなかった。ひらひらと両手を振ってみたが、影の形が微動だにしない。

 「これ、ユイ様だけ迷宮の法則に捕らわれてますね~、影の範囲だけ迷宮の伸縮効果が発動しているみたいです」

 アリアさんが展開した迷宮を思い出した。

 「私、どんなに歩いて、も、この場所、から、移動でき、ない?」

 「たぶん、他の人が抱き上げても・・・・・・・・下手に影の範囲外から出そうとしても、首輪が締まってしまいそうですね~」

 私は顎に指を添えた。

 「なら、」

 魔力の糸を伸ばして、月水精霊さんに咥えてもらった。

 私達の周辺だけ、適度に除湿してもらう。

 「着替えよ?」 

 アージット様達に知らせて、相談するにしても湯浴み着状態ではいられないだろう。

 「! えっと、私がアージット様達にゲートのことやここまでのことを話してきます」

 ルゥルゥーゥさんが手を上げた。

 「私はユイ様の警護として、この場所から離れません」

 「いやいや、ストールちゃんは鎧着込まないと、アージット様通せないでしょ!?」

 ミマチさんの突っ込みに、ストールさんは固まった。

 「そうですね、鎧一式を持ってくるには人手が足りません。センリも迷宮温泉の範囲から出ない方がいいでしょう。三人の服は私が持ってきます」

 私が鎧一式持ってきましょうかなとか、言い出しかけてたセンリの上げかけてた手は、ヘニャリと下ろされたのだった。

 「ミマチはユイ様の護衛を、センリはミマチがユイ様に不埒なまねをしないように、見張りを」

 「いやいやいや、いくら私でも! こんな事態に本能むき出しな行動はしませんからね!?」


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