寝込み中
精霊を見れることとか、私の加護縫いが傷ついた精霊の治療になるとか、それらが色々と権力関係的にヤバそうとか………生家に知られると面倒臭いことになりそうなアレコレを、知って
もうちょっと世間的な常識を知るために、勉強しようか?と言われていました。
が
「おや、ユイっ」
朝一番にリーヌおば様が、慌てて私の頬を掌で挟んだ。
「顔が真っ赤だ、熱があるんじゃないかい?」
「ふへ?」
朝起きてから、なんかだるいなぁとか、ぼーっと思ってはいたが私に自覚はなかった。
「熱が出てるよっ」
ちなみにリーヌおば様と私は、同室だ。
着替えかけていた私を、寝巻に再び着替えさせ布団に戻した。
そんな私を精霊達が覗きこむ。
自覚の薄かった一因がこれだ。
これまで私は、あの最悪な環境で病気になったことがない。
風邪とかひきそうな体調になると、精霊達が寄ってきて、撫で撫ですりすりしてくれるのだ。そうすると不思議と体調は持ち直し、とりあえず病気にはならなかった。
怪我もそうだ。
妹が悪戯で投げつけてきた石で額を切った時も、慌てて集まって撫で撫ですりすりぺろぺろだった。結構血が出たことに驚いた妹が、自分でやっといてビビったのか大泣きして騒ぎになり、メイドが面倒そうに手当をしようとした時には擦り傷ほどになっていて、こんな傷で大騒ぎしてっと、私が怒鳴られ平手打ちをくらったのだった。
それにも精霊さん達がわっさり集まって、撫で撫ですりすりぺろぺろだった……瞬間は痛かったが、後には残らず消えて、腫れもしなかったし額も綺麗に治ったのだった。
私が病気や怪我をすると、本当のかすり傷でも精霊達がそうやって治してくれていたのだ。
「はふ」
布団でじっとしていると、じわじわと違和感に気付いた。
体中がミシミシと痛い。
筋肉痛にも似て、異なる痛みだ。
じっとしていられなくて、寝返りを打つと間接の節々がずれたような別種の痛みが私を襲った。
「うぐっ」
自覚すると痛みとか体調って、一気に悪くなるようなことってあるよね?
そんな感じだった。さっきまで普通に起きて仕度しようとしていたことが、信じられないくらい辛い。
ぎゅっと丸く小さくなって耐えていると、初日に私を診察してくれた初老の医師がリーヌおば様に引っ張られ入ってきた。
「おぉ、ユイどうしたね」
「熱があるみたいなんだよ、ってさっきも言ったろっ」
「どーれ」
手を取られ「うっ」と呻いた。
「ユイ?さっきよりも辛そうだ、早く何とかしておくれよっ」
「慌てるでない…微熱じゃが、うむ変じゃな」
「もしかして昨日、精霊治療とかさせられたせいかい?」
「落ち着かんか、血の流れが聞こえんじゃろうが。ユイ、どこか痛いのか?」
リーヌおば様は落ち着かない様子だったが、医師助手っぽいメイドさんが彼女の肩を抱いて医師から引き離してくれた。
「からだ、いたぃ」
どこがどうとは具体的に言えない痛みに、ぽろぽろと涙がこぼれた。
「精霊付きの子供はめったに病気や怪我はせんのにのぉ……昨日は筋肉痛になるほど働かせたかの?」
「人聞きの悪いっ、こんな小さい子をこき使うような人間はこの家にはいないよっ」
医師の『筋肉痛』という言葉に、私は落ち着かない痛みの中で気付いた。
うん、前の人生でも経験したことはあった。
こんな熱が出るほどでもなかったし、ほとんど忘れてたけど
これって
「……せい、ちょ、つう?」
医師がぽんっと手を叩く。
「おぉ、おぉ、そういえばユイは十五だったのぉ、栄養が行き届いてやっと一気に始まったのかもしれん」
現在絶賛寝込み中です。
全身を襲うだるさと痛み、筋肉痛に似たものと、節々が外れているかのような気持ち悪い痛み
熱も出ていて、発熱のためか頭も痛ければ、悪寒の伴う痛みがはしって辛い。
じっとしていても動いても、それぞれ別の種類の痛みが私を襲っていた。
成長痛は筋肉痛と同じように、精霊の撫で撫ですりすりはこない。
筋肉痛とかも一種の成長痛だもんね。
『治療』をしては、本人のためにならないのだろう。
その代わり飲み物や食べ物には、積極的に浸かっている。
ほとんど見かけ十歳で止まっていた成長が、一気にきたのだ。
強張った筋肉をほぐすためのマッサージを、悲鳴をあげながら受け。
ほとんど動けない私を、皆さんは親身になって世話してくれた。
お風呂は勿論トイレもね(泣)
当主様までお見舞いに来てくれて、頭を撫でて行かれました。
「今後の詳しい話は体調が落ち着いてからだな、悪いが先に対策をとらせてもらうからな?」
はい、お願いします。
もう難しい話は、全部丸投げしてしまった私だった。