政略結婚?
「そろそろ、終了としましょう」
ドクターストップならぬ、執事長ストップが掛かりました。
「リーヌさんから聞いておりますが、ユイ様は仕事が早く素晴らしいのですが、夢中になると寝食を忘れるタイプだと。通常業務では、午前中のみが針仕事と制限し午後は体力作りの時間としているはずです」
「!」
待ってっ、スーツ(ホスト)途中っ!
「あぁ、昼食の時間か」
ロダン様が時計を確認して、呟いた。
「何というか、見惚れていたな」
「う?」
いつの間にか前王様は、浴衣から私の縫った軍服(黒)に着替えていた。
そ、想像以上に、かっこいいっ
テンション上がるわぁっ
あ
「き、ごこ、ち、ど?」
改めて針子として、聞いてみた。・・が、喉が詰まって、ケホンコホンと咳が出る。
顎もまだ痛い。
今日はもう、喋りすぎた。
前王様に背中を撫でられ、口元にカップを差し出された。
蜂蜜を溶かしたお湯(精霊さん出汁入り)が、とっても美味しい。
と、言っても、筋肉痛の範囲なのか、顎は直ぐに回復することはない。
喉の違和感は癒えたけど。
使いすぎによる炎症かな?下手に大声出すと、血を吐くかもってお医者様にも警告されてる。
あと疲れやすい。皆が、ちょこちょこ休憩をとらせようとして、私もそれに逆らえない。
以前はもっと飲まず食わずだったのに、この成長した体はすっかり甘やかされ、弱くなったような錯覚をする。
うん。まだ成長に体力が、追いついて無いだけなんだよね。
「素晴らしい、着心地だ」
前王様はそう言って、微笑みながら頭を撫でてくれた。
「ユイはすごいな」
「?」
「ユイは、この国で加護縫いが、どんな意味を持っているか分かるか?」
「」
口を開こうとして、口元を指で止められた。
「すまんな、喋らなくていい」
私が喋らなくても、あまり意味なんて知らないことは、分かっているだろう。
加護縫いの服に、鋏を入れようとしたしね。
以前までは、精霊さんの力を宿せる?かなぁ?と、漠然としか想像出来なかったし。
だって、あの家の人達の仕事だと思うと、ねぇ・・・・
「後でちゃんと教えるが、ユイの加護縫いはかなり素晴らしく・・・・だからこそ、危険なのだ」
う?危険?
前王様は、首を傾げる私の手をとって、右手の人差し指に口付けした。
ひょわぁあっ!映画みたいっ
「我、ロメストメトロ・アージットは汝、針子の乙女に婚姻を望む者なり」
「にゅ?」
「ユイ、後で説明するから、今は名前を返して」
ロダン様が促すのに、私は考えた。
前王様はどう見ても、ロリではない。接し方が、子供扱いだし。
なのに、婚姻・・・・・・・・これ、私の身を守るため、必要なのか?
加護縫い・・・・私の想像以上に貴重で価値が高く、そして私の忘れかけてたが、ロリコンホイホイな容姿、王の花嫁候補にもなれる魔眼・・・・これ、すっごく野心家ホイホイな存在?
ヌイール家当主の気持ち悪い顔が、浮かんで、
「ユイ?大丈夫か?顔色が亅
「わ、たっ、し、ぬい、る家、かえ、され?」
顎の痛みも一時忘れた。
前王様と、ロダン様は、私の連想が想像出来たのか、あぁ・・・・と、何とも言えない表情になった。
「そうならないための、婚約だ」
私は慌てて、前王様の手を握り返し、人差し指に口付けを返した。
「ユイ、です。よ、ろし、く、お願、い、しま、す」