受験戦争!
―――中学3年生、秋。
「ハル、また違う!そこはこの公式を使って…」
「うわぁぁぁぁっ、もう駄目だーっ」
悠斗に勉強を教わり始めてもう随分経つ。
毎日勉強だらけの苦痛の日々は、いつも微塵も勉強してこなかった俺にとってもう限界に等しかった。
「もう俺は勉強なんてしたくないんだ…もう嫌だぁぁぁ」
「じゃあ銀陽高校は諦めるんだね?」
「それは駄目だ、俺はあそこに行くという使命があるからな。」
「それならもっと勉強しないとね。ハルの学力じゃまだほど遠いから。」
「うわぁぁぁぁぁぁ…」
あぁ、こんなときにドラ〇もんがいてくれたら…!!
「ハル、空想してる暇があったらこの問題を解こうね?秘密道具とか誰も出してくれないから」
「何で考えている事が分かったんだ悠斗!?」
「まぁこれだけ一緒にいればね…嫌でも分っちゃうんだよ。」
「ふーん…おし、勉強再会だ!やってやるぜコラー!!」
「うん、その意気その意気。」
銀陽高校に入るためならこのくらいどうってことないぜ!
悠斗にも迷惑かけてるし俺も頑張らないとな。
「うし、じゃあこの問題を…」
「貴方達、やる気があるのはいいことだけど場所を考えなさいね。うるさいと他の方の迷惑よ。」
俺の声を遮ったのはクラスメイトで学力学年トップの優等生。
心なしか声に怒りを感じるのだが…
あ。
「そういえばここ、図書室だったな…」
「え、ハル、忘れてたの?」
「あ、あはは…」
―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
「おい見てくれ悠斗!今回の模試の結果!」
「どれどれ…あ!銀陽高校合格圏だ、凄いよハルー!」
「俺…マジで受かっちゃうかもしれねぇ…」
「ハルってば、受かるために勉強してたんでしょ?っていうか僕が教えてるのに成績が上がらないはずがないじゃん」
コイツ…こんな言葉を平気で口にするから頭いい奴は困る。
「じゃあ成績が伸びなかったら?」
「それは本物のバカだね」
どうやら俺は本物のバカになることだけは避けれたようだ。
悠斗と帰ってきた模試の結果を見て騒いでいたら、クラスの皆が俺を見て呟く。
「まさか、春也がなぁ…」
「アイツ、2年までは俺と一緒にバカやってたのに」
「そんなの、悠斗君のおかげに決まってるじゃない!」
「だよねー、いいなぁ北野君。悠斗君に勉強教えて貰えて。」
な、なんか言いたい放題言ってやがるな…?
確かにほとんどは悠斗のおかげだけど、俺だって頑張ったんだぜ。
「…悠斗、女子がお前に勉強教えてほしいらしいぞ。」
「え?僕はムリだよ。だって僕はハルの専属家庭教師だからねー」
「まぁ一日くらいならいいんじゃないか?俺なら別に大丈夫だし。お前も俺に教えるの疲れるだろ?」
すると悠斗はまさか、とため息を吐く。
「疲れないよ。僕はハルに受かってほしいからね」
「でも、万が一落ちたらゴメンな。」
「ハル、それ言っちゃ駄目だよ。僕頑張るからさ!」
「ありがとな、悠斗。」
「うん。絶対合格しようねー」
悠斗がいてくれて助かった、俺はいい親友を持った。
「なぁ…あの2人ってどういう関係なんだろうね。」
「ただの友達だろ、それ以外に何かあるのか?」
「いや…何かただならぬオーラと言うか…」
「わかる!もしかして…」
「付き合ってたりして!」
「ブホッ!!」
「どうしたのハル!?」
ちょっと待て、勘違いもほどほどにしやがれ。
俺と悠斗が付き合ってるハズが…
「ハル、今の女子の言葉に反応したの?」
「お前も聞こえてたのかよ、じゃあアイツらの誤解解きに行くぞ!」
「いっそのこと、本当のことにしちゃう?」
「はーっ!?何言ってんだお前!?」
「あはは、冗談だよ。」
前言撤回だ。
俺は大変疲れる親友を持った。