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アリソラ 〜ARIASの宇宙(そら)〜  作者: 夏川四季
新章 第四部 『結』
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第7話 轟け46センチ砲 ~ ⅱ ~

銀河を緋龍から確認できる位置までくると、もう一度銀河から通信が入った。

『……なるほど。情報は全部こっちでまとめさせてもらいました』

 姉さんは、俺たちの置かれている状況や、ブラッディマリーに関する情報、今俺の知ってる情報を全て話した。

「姉さんはどう思う?」

『複雑に絡み合っている用に見えますけど、根本は簡単なところにあります』

「つまり私ってことですか?」

『そうですね。でも……』

「でも? 何かあるのか?」

 言葉につまる姉さんに俺は少し気になるところがあった。

『いや、今は気にするには早いですね。それよりも、まずは、艦長の考えから聞きましょうか』

「えっと、大海君も言っていましたけど、銀河の同時攻撃能力は5隻ですよね。緋龍とインフィニティの攻撃能力を持っても7隻。それ以上ならアウトです」

「でも、時間はそれほどない。向こうが提示したお金の受け渡しまであと一時間だからな」

 右手に見えるコロニーには、億とも言われる人々がいて、そのコロニーの周りに広がる宇宙には、人を一瞬に殺すことができる細菌兵器を持つ宇宙船が潜んでいるのだ。

 グズグズと考えることもできないが、何も考えずに突っ込んだらコロニーに大きな被害を与えてしまうかもしれない。

『確かに時間はないけれど、簡単に動くわけには行きませんね。そのあたりは、艦長はどう考えていますか?』

「はい。ソナーを打った場合、おそらく相手に感知されます。ですから、ソナーを打つならば、攻撃はすぐさま行わなくてはなりません」

「じゃ、その時に敵の数が7隻以上だったらどうするんだ?」

「銀河の同時攻撃数は5隻って言ったわよね。でも、手動攻撃も併用すれば、銀河単艦でも7隻攻撃できるわ」

『つまり、9隻まではいけるということですか……。でも、それで全てに対応できるとは言い切れませんね』

 姉さんの言うとおり、あくまでも、同時に攻撃できる数が増えただけで、敵の総数が分からない以上、攻撃に踏み出すのは賭けなのだ。

『我々は賭けに出なくてはならないということです。それも、絶対負けるわけにはいかない賭けに』

 最後の決定権をもつ姉さんにとって、この案を容易に受け入れることはできないだろう。

『分かっているかもしれませんが、これはコロニー全住人にかかわらず、アリアスで働く全社員の運命も握ることになります。今のところ、政府はこの要件を飲むか飲まないかその決定権はこちらに委ねるとも言ってきてます』

「つまり、失敗した場合の責任をアリアスに擦り付けるってわけかよ……」

 絶体絶命。四面楚歌。孤立無援。俺たちの置かれている状況は最悪だ。だが負けるわけにはいかない。

 これがどれほどのプレッシャーか。今、銀河のクルー全員がいつも以上にピリピリとした空気に包まれている。

 皆が、今まで感じたことないプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。

 一度は死線をくぐってきた銀河のクルーといえど、無駄に大きな責任感にその本領を発揮できない状況に陥っていることが、俺には無線越しからでも感じ取っていた。

 このままではマズい。いくら切れ味の良い剣を持とうと、いくら正確に命中する銃を持とうと、その使い手に戸惑いがあってはその武器は一瞬で自らの首を絞めかねないただ重りになってしまう。

「……どうするんだよ」

『おや、楽しそうな遊びをしているようだな。どれ、私もその遊びに混ぜてはくれんかな?』

「……そ、その声は!?」

『お主たちに全てを任せているようでは、太平洋皇国の名が廃るわ。』

「殿下!?」

『いかにも。国の信頼と恒久の平和を掛けて我ら皇国の剣で助太刀しようぞ』

「助かります殿下!」

『艦隊を引き連れてやてきたかったが、奴らに察知されて困るからな。こちらの戦力は戦艦長門のみじゃ』

長門だと……!? 皇国の守護神ともいわれる最強の砲を持つ戦艦長門がこの宙域にやってきているというのか!

『本艦は、コロニーから7万5000キロ先の宙域で待機しておる。ここからならば、敵のレーダーに発見されることなくこちらの主砲を遺憾なく発揮できる』

「えっ? でも、長門の最大射程は6万のはずじゃ……」

公表されている数字を偽ることはあるとはいえ、有効射程6万キロでさえ、他国から群を抜いて飛び抜けている長射程をさらに1万5000キロも伸ばせるとは思えない。

『それはあくまでも射撃管制レーダーの届く範囲じゃよ。そちらからの正確なデータリンクさえあれば、たとえ7万5000キロ離れていようと当てることは可能じゃ。究極のアウトレンジ艦隊決戦は我が国の十八番だからの』

「これなら、勝率がグンと上がる。イケるぞ姫川。」

「フフッ。そうね。私たちの恐ろしさを目に見せてやろうじゃないの!」


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