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アリソラ 〜ARIASの宇宙(そら)〜  作者: 夏川四季
新章 第二部 『承』
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第5話 銀河の少女 ~Ⅳ~

一日遅れてしまい、すいませんでした。

では、本編へどうぞ!

「被害状況を報告してくれる?」

「はい。まず、けが人についてですが、軽症者が7人ほどです。大きな怪我をした者はいませんので、恐らく1日ほど安静にしていれば大丈夫でしょう。」

「大事でなくて、良かったわ」

「次に船へのダメージですが、右舷艦尾と右舷魚雷発射管が損傷。艦内の圧力隔壁、内部隔壁に直接のダメージは見られませんでした。なお、破損した装甲に関しましては、喫水下ですので、エルドライン港に入港しての修理は無理かと……」

「分かったわ。修理は、火星コロニーの宇宙港で済ませましょう。報告ご苦労様でした」

「了解です。では、失礼しました」

 第一艦橋にやってきていた管理課のクルーは姫川に一礼すると第一艦橋を去っていった。

「お疲れさん」

「ほんと、疲れたわよ。実践は、いくら命があっても足りないくらい寿命が縮まるわね……」

 正にその通りだった。実際はたった数分の出来事だったのだが、俺たちにとってはそれの何十倍の数時間もあったかのように感じていた。

 一回の戦闘でクルーたちの精神力は大きく削られてることになってしまった。

「それにしても、よく敵の位置が分かったわね」

「フィオナが見つけてくれてな。そのときカメラを向けたら一瞬だが光が見えたんだ」

「そう、フィオナが……。でも、なんで探照灯なんかを?」

「光でピンときたんだよ。もしかしたら、奴は光学迷彩みたいなもので隠れているんじゃないかってな」

 一瞬の光の中で俺は、銀河が上げる炎のようなものが見えたのだ。恐らく、光学迷彩用に船体の全てをモニターの様なもので覆っていたんだろう。

 そのモニターに銀河が発せれる炎から発せられる光が反射したのが一瞬の光だった。

 つまり、モニターに探照灯の光を照射すれば、必ず光が反射する一点があるはずと踏んだ俺の感が当たり、敵の位置を知ることができたのだ。

「光か……。確かに緊急時の対策にはなるけど、敵を攻撃範囲外から探知するのは難しそうね」

 そう。光を当てるのは有効なのだが、そのためには、相手がいる位置を大まかでいいから予想できていなければ意味がない。

 さっきみたいに攻撃を受けてから探知していては意味がないのだ。

「しかし、レーダーにもカメラにも映らないなんて、まるで忍者ね」

「ああ。宇宙の潜水艦だな」

「さしずめ、潜宙艦てとこね……。そうとなれば、対策案を考えとかにといけないわね」

 レーダーもダメ、光学カメラもダメとなると、新しい探査方法を確立しなくてはならないだろうな。

そのあたりは、技術課に任せるとしかない。銀河のアップデートや新装甲などの開発は銀河専属の技術課の仕事だ。直ぐにとはいかないだろうが、近いうちに良い案を出してくれるだろう。

「今日は火星に帰れそうにないわね」

「そうだな。今調子じゃ、コロニーに入港出来るのは明日以降だろうな」

 艦橋から見える宇宙空間を眺めながら俺はそう呟く。速力が乗らず、緊急修理を行っている銀河が再びエンジンを回すことができるのにはそれほど時間はかからないだろう。

だが、問題はそこではなかった。急遽、コロニーの宇宙港で補修作業が入ったのだが、事前の予約も何もなかったので、今現在、銀河を修理できる港のスペースが確保できないのだ。

故に、銀河はこの宇宙空間をさまようことになってしまった。

「疲れたから、ちょっとシャワー浴びてくる」

「了解。それじゃ、終わるまで艦橋に居座るとするか」

 姫川は『当たり前よ』といった感じの視線を送りながら、第一艦橋から出ていった。

 さて、1時間ぐらい暇潰さないとな。どうせ時間があるなら、面倒な戦闘報告書でまとめてしまうか。

 今回の銀河の破損状況や戦闘記録をまとめた書類をまとめていた時だった。艦橋の主幹エレベータが開いて、誰かが入ってきた。

「かぐやさんはどちらに?」

どうやら、入ってきたのはフレンのようだ。

「艦長はシャワーに行きましたよ」

「ああ、そうでしたか。これは失礼しました」 

そう言い残すと彼は艦橋から出ていこうとした。彼がそのまま艦橋から出て行ったのなら、俺は彼の方を見ることはなかっただろう。

「そうそう。貴方が坂上さんでしたよね?」

「……ええ。そうですけど」

「この船の航空課に所属していて砲雷長もしておられるとか。なかなか優秀なのですね」

 振り返った俺に、フレンは背を向けたまま話を続ける。

「さきほどの戦闘。あなたの状況判断能力は少々驚きましたよ」

 そう言うフレンだが、さっきの戦闘で一番顔色を変えずに艦橋にいたのはほかの誰でもないフレンだった。

 あの動じない表情。心の余裕がないと、あんな表情はできないと思う。正直、人間なのかと疑いたくなるほどだった。

「あの時うまくいったのは、たまたまです」

 書類書き終わった俺は、ディスプレイの電源を落とす。

「もう一つ、貴方に聞いておきたいことがあったんでした。アリアスに来てから、貴方はパイロットのへの道へ進んだらしいですね。それは本当なのですか?」

「確かに、アリアスに来てからですけど。なぜそれを?」

「いえ、私の友人からそう聞いただけですよ。たしか、つい最近まで在籍していたミッドウェー航空学校では主席だったとか」

「周りより操縦が少しだけ上手かっただけです。主席といっても大層なものではないですから」

「謙虚なのですね。実は、私も腕にはそれなりに自信がありましてね。こう見えても、ワシントン航空学校を主席で卒業した身なのですよ」

 ワシントン航空学校か……。

エリート中のエリートが通う航空学校。ミッドウェー航空学校の学費より何十倍というが学費かかるが、設備等もいつも最新型が使える最高の教育場所。

 田舎の航空学校とは雲泥の差とも言われるほどで、金のない航空学生たちにとって高嶺の花だ。

「よろしければ、今度お相手していただけませんか?」

 こちらを見ずに話す彼からなんとも言い表せない雰囲気が漂っている。

「こちらも仕事がありますから。でも、時間さえ合えば、俺としてはかまいませんよ」

「良い返事が聞けてよかった。では、その時を楽しみにしていますね」

 彼は、その時初めて振り返ると、ニコリと笑って艦橋から立ち去っていった。

フレン・ルーベルト……。どうも俺は苦手な人だ。

 横目で彼が立ち去っていったのを眺めながら、俺はそう思った。何を考えているのかよく分からない。顔に表情や思考が出てきにくいから、俺としては付き合いにくい相手だ。

「気まぐれなのか、狙って言っているのか。分かりにくい人だな……。お前は何か知っているのか? 姫川」

「は、はいッ!?」

フレンが出て行ったエレベータとは反対側のエレベータの影から除くアホ毛に向かって俺は問いただした。

「あ、あれ? バレてた?」

 パジャマ姿で俺の前に現れたのは俺の思った通り、姫川だった。

しかし、バレるも何もあれでは、身体隠してアホ毛隠さずといったところだ。幸い、フレンはそっちを見ていなかったから気づいてなかったかもしれないが、俺の位置からはバッチリ、姫川のアホ毛が見えていた。


次話もできれば、日曜日更新を目指して頑張っていきますのでよろしくお願いします!

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