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アリソラ 〜ARIASの宇宙(そら)〜  作者: 夏川四季
新章 第二部 『承』
39/57

第5話 銀河の少女 ~Ⅰ~

どうも夏川です。


まず前話のことなのですが、桜の口調が変わっている場面があります。

あれは刀夜と二人っきりの時の口調がなので、疑問に思われた方には申し訳ございませんでした。


修正版にしておきましたので、良かったら読んで見てください。


さて、今回で銀河の出番がやってきました!

楽しみにされていた方、これからしばらくSFぽい宇宙船の話ができるとおもいます


これからは、日曜日投稿にして行こうと思いますが、冬季休暇などで予定が変わるかもしれませんので、皆様にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。


では、本編へどうぞ‼

翌朝、朝早くから姫川に叩き起こされた俺は、ブラックコーヒーとトーストを胃に流し込んで、アリアスの制服に着替えていた。

「今日は銀河にとって大事な日なんだからね。しっかりしなさいよ」

「はいはい。全く、朝から面倒なことだ」

「はいは、一回でいいのッ!」

 田舎のばあちゃんみたいに口うるさく突っ込んでくる姫川を適当にスルーしつつ、今日の予定を確認する。

今日の日程は、事前に封鎖した火星付近の宙域に今日のお客様となる一般の人や企業の人が観覧用の宇宙船で待っている。

そこに、俺たちが行き、あらかじめ用意しておいた標的を銀河の艦砲射撃で破壊するというのが今日の予定だ。

姫川、アズ姉、鹿嵐とともに、エルドライン港に停泊している銀河へと向かうことにした。

「長官、今日はお休みなんでしょ?」

「ああ。アメリカ大使館にいるからな。ということは、今日は俺たちだけか……」

 今日はお披露目会ということなので、実際のクルーより少ない人数が銀河に招集されていた。

 整備課と夜間課の人間のほとんどは、今日は休みらしい。羨ましいことだが、仕事は仕事なので仕方ない。

桟橋から銀河に入り込んだ俺たちは、主幹エレベータに乗り込んだ。そのまま、第1艦橋に着いたエレベータの扉が軽い機械音と共に開く。

 一番早く第一艦橋にたどり着いたと思っていたが、艦橋には先客がいた。

「おや、皆様いらっしゃいましたか」

 そう言って髪をかき上げたのは、20代前半の若い男性。外国人特有の白い肌に金髪碧眼。

 あの顔、どこかで見た覚えがあるな。

「ふ、フレン!?」

「艦長。お知り合いですか?」

「おっと、紹介がまだでしたね。フレン・ルーベルトと申します。以後お見知りおきを」

 フレン・ルーベルト。

聞いたことがある。最近になって、急成長しだした兵器企業の御曹司。そして、航空機パイロットとしても名を広めている人物。この手の世界では結構有名で俺もその噂を聞いたことがあるくらいだ。

 でも、なんでそんな人物が銀河に? アリアスに所属しているなんて聞いた覚えがないんだが……。

「フレン。な、なんで貴方がここに?」

「おや、居てはいけませんか? かぐやさんの仕事ぶりをしっかりとこの目で焼き付けておこうと思いましてね」

「そ、そう。 みんな、自分の持ち場について!」

全員が乗艦したこと確認した姫川は、何故か、フレンから逃げるように、艦長帽を被ると艦長席に備え付けられている無線機を手に取った。

「艦長より達します。宇宙の外でたくさんのお客様が待っています。みんな、恥の無いように! それじゃ、出航準備」

「了解。出航準備。錨上昇。機関始動」

 錨が巻き上げられた銀河に火が灯り、エンジン音と共にゆっくりと前進を始める。

 エルドライン港を出た後、周りに障害物がないことを確認した銀河は、目的地に向かうために速力を上げる。

「目標宙域に向かう。上げ舵20。G2モードに以降。銀河発進!」

「宜候。銀河発進します!」

 豪音と共に港を出た銀河は空に舞い上がる。

火星の重力は地球に比べ小さいので、銀河の上昇は地球の時に比べて軽々と高度を上昇させていく。

「作戦宙域まで距離3万。約3分で到着します」

「本作戦は、銀河初の仕事となる。銀河の攻撃対象となる目標は動いてないし、反撃もしてこない。この好条件で攻撃を外したら笑いものになるわよ。くれぐれも外さないでよね」

「了解。で、目標は主砲だけで片付けるのか?」

 銀河の最大の攻撃力を誇る主砲で片付けるのが、スマートで安価でもある。こちらも、軍艦と言えど、撃つ弾全てを国が払って貰えない、ある程度は負担してくれるが、俺たちは企業、弾をバカみたいに撃つのは利口ではない。

「そうね。一応、演習用のミサイルも搭載しているから、使用してもいいわよ。アレンジは、あんたに任せる」

「俺次第ってか、あまりこういうの得意じゃないんだけどな……」

 演習で使用できる兵器を砲雷長席のモニターに確認してたとこだった。砲雷課から俺宛に通信が入った。

「はぁい、刀夜。ターゲットを攻撃する方法決まった?」

 そう言ってきたのは、他でもないフィオナだった。そう言えば、フィオナはウチの砲雷課に来ているのを思い出した。

「まだ決めてないが、それがどうかしたのか?」

「いい案があるんだけど、聞いてくれる?」

 いい案か。防衛学校砲雷科に通っていた人間のアイディアなら聞かない道理がない。

「いいぞ。どんな案なんだ?」

「えっと、ターゲットは三角陣形をとっている駆逐艦って考えることができるよね?」

「確かに、言われてみればそうだな」

 標的は銀河の進行方向から言うと右側に1万キロという近距離にちょうどこちらに頂点を取るように直角三角形の陣形をとっている。

 これは、艦の速さを生かした駆逐艦が近距離での雷撃攻撃をする時の基本陣形にそっくりだった。

「それだったら、一番、二番砲に零式通常弾を副砲群に参式拡散弾を準備。VLSに艦対艦ミサイルを二発準備。」

「へぇ。なかなか。その心は?」

「実戦を想定したやり方で行こうと思うの。一番砲で一番手前の目標を、艦対艦ミサイルで残りの二つを撃墜。未知なる敵の為に砲弾に余裕を持って、敵の反撃も考慮して、迎撃用に参式弾頭っていうシナリオでどう?」

 正直、フィオナの提案には驚いた。俺の考えていた以上の回答だった。

俺もミサイルと艦砲射撃で目標を狙う予定位は考えていたが、実戦を配慮したやり方ではなかった。

 実践を考慮した考えができるのは、防衛学校砲雷科で学んでいたフィオナらしい考えだった。

「よし、それで行こう。助かったよ。フィオナ」

「えへへ。どういたしまして」

 フィオナのおかげで、自信を持って作戦に挑めそうだ。

「戦術は決まった。目標の陣形から、本作戦は三角陣形で本艦に攻撃してくる駆逐艦を想定したものとする」

「へぇ。アンタにしては、なかなかいい線いってるわね」

 艦長席に座った姫川が機嫌良さそうにそう笑うと、艦長帽を深くかぶった。

「女神さまの助言があってね」

「女神さま?」

 不思議な顔をしている姫川を横目に俺は宣言した。

「一番、二番砲に零式弾装填。副砲群に参式弾装填。中央VLSよりバルムンク(艦対艦ミサイル)発射準備ッ!」

「了解です! 砲雷課、準備に取り掛かります」

「刀夜。さっきの言葉後でゆっくり聞かせてもらうからね。総員、第一種戦闘配備ッ! これより、銀河は作戦宙域に突入する」

 戦闘配備を知らせる警告音が銀河全体に鳴り響き、銀河の主要ブロックを守るように隔壁が閉じられる。

 戦闘用の非常電源に切り替わった銀河艦橋内はいつもより少し薄暗くなる。銀河の戦闘準備は整った。

後は、その身に隠された牙で相手を喰らうだけ。

「1時の方向、距離3000に駆逐艦磯風を確認」

 なるほど、あれが今回のお客様が乗る船か。

もう、あとには戻れない。フィナが提案した作戦を俺なりに全力で完遂するまでだ。

「レーダー。目標は捉えてる?」

「もちろんです。3時の方向、距離1万」

「砲雷課より伝達。第一、第二主砲、装填完了。並びに、中央VLS展開完了。いつでも発砲できます」

「目標補足。誤差修正。仰角プラス0.05度。発射準備よし!」

「撃ち方始めッ!」

 艦長による攻撃の許可が下された。銀河の火器に火がつけられる。

「バルムンク発射ッ!」

 銀河の両舷に取り付けられているVLSのハッチが開き、その中から目標に向かって炎の尾を引きながらミサイルが発射された。

 バルムンク。アメリカ海軍で開発された最新型艦対艦ミサイルで、その威力は一発で駆逐艦に深刻なダメージを与えることができるほど。

 今回使用したのは、使用期限が迫っている廃棄予定のミサイルだから比較的安価で、きちんとした状況で保存されていたものなのでモノはかなりいい。     

「続いて、第一主砲。撃ち方始め!」

間髪を入れず、あらかじめ砲口を向けていた第一主砲が火を噴いた。巨大な主砲が紅蓮の火柱を上げて46センチ主砲弾を撃ち出す。

46センチ主砲弾の重量は2トン近くある。しかも、それほどの超重量の砲弾が秒速6500キロメートルで飛んでくるというのだから、物理的なダメージの巨大さは、深く考えなくても分かるだろう。

 そして、砲弾の初速を稼ぐためにレールガンでも火薬を使うのだが、流石は46センチ砲。尋常じゃない火柱だ。

 生命を受けた炎の龍の如く、超重量の砲弾が飛び出していった。

この距離からのミサイル攻撃と艦砲射撃の威力と命中精度は抜群。しかも、相手は動いていない。当たないはずがない。

銀河から放たれた3つの牙が、寸分も違わず目標となっている船に食らいつき、紅色の火球を作り上げる。

「主砲弾、並びにミサイルの命中を確認。目標、消滅しました」

「よし」

「作戦成功ね」

 作戦終了により皆が安堵した瞬間だった。誰がそいつの登場を予知していただろうか?

「待ってください。レーダーに感あり。10時30分の方向。距離、10万の位置に艦影5つ! 本艦に向かって来ています」

「何?」

それは、索敵範囲10万キロを誇る銀河で一番精度の良い射撃用レーダー、八十三式電探が艦影を捉えた瞬間だった。


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