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第25話 『唸る参式弾』

ニコニコ生放送で活躍されている生主さんにアリソラのヒロイン、『姫川かぐや』のイラストを描いていただきました。


挿絵(By みてみん)


こんなに素敵なイラストを描いていただいた大友ゆうきさん。本当にありがとうございました!!

「ユリア。潜宙艦の位置は特定できそうか?」


「現在検索中です。ミサイルの進行方向から逆算に後30秒下さい」


相手はかなり厄介だ。持ち味のステレス性を活かして攻撃してくるからには、同じ場所に留まっていることはないはず。


「先を読まないと出会えそうにはないな……。姫川。敵の残存艦隊は?」


『現在センチュリオンと長門が交戦中。あとは3隻の重巡はユーラシアの正規海軍が対処中よ』


澤崎がこの戦場に自らの身を投じるとは思えん。ならば、センチュリオンはフェイクか?


自分は安全なところで戦場を見ている高みの見物気取り。全く、とことん汚いやり方だな。


あいつはこの戦場にいないということか。


「センチュリオンと長門の戦いはどうなんだ? 長門が優勢か?」


 一度にらみ合った相手だ。センチュリオンの攻撃能力はかなりだろう。


『そうね。センチュリオンの主砲は長門と同型の主砲に思えたけど、圧倒的なほどに長門が優勢よ』 


「なに?」


 長門が優勢? 確かに同型と言えど、劣化コピーに追い抜かれるほど、皇国海軍は弱くない。


しかし、長門がこの戦場に来ることは、澤崎にも読めたはず。何になぜあれほどの大艦隊を動かした?


 長門が出てくれば、圧倒的不利になる無人艦隊を……。


「本当の目的は銀河じゃない……?」


「ま、マスター……」


 あまりにも驚いているのかユリアの声が一瞬途切れてしまう。


「ユリア、どうした?」


「超巨大エネルギーを計測! 12時の方向、距離5000!」


5000だと! そんな長距離砲なんて――。


今までの大戦で使われてきた様々な兵器が俺の脳裏によぎる。その中にその破壊力と恐ろしい程に長距離から打てる長距離砲があった。


「ッ!! 惑星間レーザー砲だ!」


『なんですって!! 全艦緊急回避! 艦首ブースタ―全開。面舵いっぱい!』


『りょ、了解!」


「間に合えッ!」


 俺が緋龍の操縦桿を右にめいいっぱい倒したのとほぼ同時だった。巨大な青白い塊が、宇宙の果てから突如現れた。


 異様なほどまでに明るい、青白い宇宙空間。


 その光景を目と辺にした俺には、出てくる言葉などなかった。言葉で表せない本当の恐怖。


 圧倒的で勝ち目のない超巨大なレーザーの塊だったのだ。


直前に回避行動を行った銀河は、なんとかその攻撃を紙一重で交わしたものの、衝撃によるレーダーシステムダウン。艦内のG制御システムにまで異常が生じたのだ。


『艦隊復元!!』


『さっきの攻撃で第2エンジンの出力が低下しています!』


 黒煙を上げる銀河の速力は明らかに低下している。


 マズイ。第2射が来ればひとたまりもないぞ。 


「マスター、長門が!」


「長門がどうした!」


ユリアの声で俺は巨大なレーザーが通り過ぎた破壊の跡地へ素早く視線を向けた。


「な、なんてことだ……」


回避行動が遅れた長門は、後部に惑星間レーザー砲の直撃を食らっていた。自慢の巨大なAPCエンジンの内部が見えるほどまでに溶けた装甲。砲身が吹き飛んで、見るも無残な形に変形した第4主砲。


美しい蒼色の船体には、巨大な引っかき傷のような惨たらしい傷が走っている。


「殿下! 殿下、ご無事ですか!」


『クッ、刀夜ですね。こちらは大丈夫です。長門はそう簡単に沈みはしませんよ。それよりも、惑星間レーザー砲の第二射を防いでください』


 あくまでも長門の無事を知らせる殿下だが、その声には隠しきれていない震えがあったのが俺にも分かった。通信の後ろからは『ダメージコントロール。第三隔壁を閉鎖!』『負傷者の集計を急げ!』


 明らかに長門が大ダメージを受けたことを知らせる慌ただしい指示が聞こえくる。

澤崎の目標は長門だったのか! 皇国一の宇宙戦艦さえ葬りされば、皇国の防衛ラインに大きな穴が空くことになる。


つまり奴の真の目的はこれだったのだ。だが、悠長に心配している暇はない。第2射を撃たれれば、長門はもちろんのこと、銀河も爆沈しかねない。


さっきの攻撃の直撃を食らったセンチュリオンは、かろうじて原型が分かる程度で、装甲のほとんどが溶け出して、中の隔壁が見えていた。急がねば、次にああなるのは自分たちなのだ。


「ユリア! 第2射までいくらかかる?」


「さっきのエネルギー量からして、約2分30秒です!!」


「銀河の最大射程が3000。ここからじゃ間に合わない」


 俺たちにできる策は尽きていた。例え、主砲が届く位置まで詰めても、長距離射撃となれば、レーダーを頼らなくてはならない。


 光学照準による射撃では、レーダーを凌ぐほどの精度は出ない。大きく見えていた希望の光がとてつもなく遠くに感じられてしまう絶望感。


 俺は、残り2分という時間を何もできずに死んでしまうのか?


『……いや、航空機のデータリンクならまだ可能性はある。刀夜、緋龍を使って敵を補足できる?』


「だが、主砲の距離じゃ無理だぞ。例え徹甲弾を使用しても3500が限度だ!」


『まだよ。銀河の力を舐めてもらったら困る! 第1、第2主砲に参式圧縮粒子弾、装填! 砲雷課は、最大射程で発射のタイミングを待って』


 そうか! 参式弾ならかなり距離は稼げる。圧縮したアタランタ粒子を開放して放つ特殊な弾頭をしているため、少々威力は落ちるとはいえ、46センチ主砲。


かなりの飛距離と威力が稼げるはずだ。


「よし、ダメもとでやってやる! このまま何もできずに死んでたまるかッ!!」


 スロットルレバーを押し込み、緋龍を加速させる。


少しでも希あるのなら、それに賭けてやる。


「残り1分です!」


「最大速力で接近。ターゲッティングの後、すぐさま離脱するぞ」


「了解ですマスター!」


 最大速度で光速の30%に迫る緋龍の速度では、相手の対空砲火は気にしなくて大丈夫だ。


「エネルギー反応地点まで残り2400。ターゲッティングを開始します!」


 相手の対空火器が火を噴くが、それを予測して期待を右へ左へと振り回す。かすめるように敵の巨大なレーザー施設に向かって緋龍を突進させる。


 近くをかすめたレーザーによって緋龍の翼端の一部が吹き飛ぶ。


「被弾! ダメージは軽微なり」


「まだまだッ!」


 ロールを効かせた、捻りで対空砲火を欺き施設へと最接近する。


 全長200メートルほどもある巨大な円筒形の施設。後ろ側に付けられているエネルギータンクから。圧縮したレーザーを直径30メートルはある発射口から撃ち出すタイプのものだ。


 この兵器は先の大戦で国連によって禁止された惑星間レーザー砲。間違いない。


「捉えた!」


 光学照準器越しに見えた巨大なレーザー砲に向かってスイッチを押す。


「ターゲッティング完了! 銀河へデータ送ります!!」


『データ受けっとった。捉敵よし。主砲、捉えました!』


『参式弾、撃ち方始めッ!!』


 姫川の声と同時に、操縦桿を倒し緊急回避に移る。銀河の砲口から圧縮された粒子が放出される。


 紅い粒子の束が一つの直線となって銀河から撃ち出されたのだ。これほどまでに高圧縮された粒子は、普通なら粒子同士のぶつかり合いによって進路がそれる。


 緻密な計算の上で放たれた参式粒子砲は、まるでレーザー施設に吸い込まれるかのように進路を右に曲げつつ、エネルギーが集まりつつある巨大レーザー砲の砲口を貫いた。


アタランタ粒子とレーザーエネルギーによる過剰な粒子衝突のより、大きな爆発が施設全体を覆う。

 爆発の連鎖は、エネルギータンクにまで誘爆を起こし、巨大な火の玉とかした。


『参式弾の着弾を確認!』

 

その声で、戦場にいたどの艦からも歓喜の声がわきが上がる。


『喜ぶのはまだ早いわ! 対空警戒を厳として当宙域より離脱! みんな帰るわよッ!』


 姫川の声を筆頭に皇国海軍にユーラシア正規海軍が続く。戦いは終わった。


 一度切りしか撃ってこなかった潜宙艦は立場が危ういと判断したのか、その後,

俺たちが火星に着くまで襲撃してくることはなかった。


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