第7話「グラベンテ戦2」
「走れ!走れ!止まるなよお前ら!」
クマノスケ達は、グラベンテから逃げている。
一度は、死を覚悟したが、突如現れた謎の女戦士。
行動からして敵では無いと分かった。
しかし、あの者達は一体何者なんだと思う。
しかし、今はそんなことはさておき、助けられた命を繋ぐためひたすら、魔者達の戦場から逃げる。
「クマさん!あの鎧を着た女が俺達にくれたとか言ってた物ってなんなんすか?」
純白の鎧を着た女戦士は、ケン達に何かを渡した。
しかし、それは形のあるものではなくオーラであった。
オーラとは・・・
「道中には、敵がいるとかどうとか言ってたよな確か、、でも、貰ったのは武器とかじゃなくて、、何て言えば良いんだかオーラ?何処か懐かしい暖かいオーラだった、、」
ジュリはシンジにかえす。
「まだ、敵は見当たりませんがきっと何かが起きた時に分かるのかもしれません!今はとにかく遠くへ遠くへ逃げましょうよ!」
ケンは、シンジとジュリに向かって言った。
ケンの言う通り、道中に敵がいる可能性は高い。
今まで見てきた情景からするに、形の無い物を貰ったがその時が来たら何か分かるのかもしれないと思っていた。漫画とかゲームとかであればそれが当たり前だから。
「良いこと言うじゃねぇか!ケン!ほんの数時間でえらく大人になったな!ハァッハハァッ!シンジ!ジュリ!ケンが言う通り、何が合ったときに分かるはずだ!俺もそう思う!何せ、あの女に命を救われたんだからな!ユリもこの有り様だ、、、今は、とにかく遠くへ行くことだけを考えろ!」
ユリの意識は未だ戻っておらず、ケンが背負って逃げている状況であった。負傷はしていないが、それに近い状況。危険が近くにあるのなら、早くその危険から遠ざかることが何よりも大切な事であるとクマノスケとケンは、思った。
一方その頃、グラベンテは、魔具ガラドボルグの力を解放し、醜きゴブリンマスターとなり女戦士と対峙している。
「力に溺れた者だと!?力こそが全てだ!力無き者は、蹂躙される、、お前ら、魔帝の者達はその現状を知らない!貴族様には縁の無い話だからな!」
禍々しく形を変えたガラドボルグをグラベンテは、振るう。
「その考えは、正当化できない!力が支配する世界は必ず綻びが生まれる!グラベンテ!覚悟しろ!」
大剣と槍がぶつかる音が空気に響く。
グラベンテの力は、先程とは比べ物にならない。
精霊を召喚し戦っていた後方支援の戦い方から自らが全線へ向かう超攻撃型になっている。
「フフッ、、先ほどまでの威勢はどうした?私の強さに唖然としているのかな?」
「黙れ!」
女戦士は、大剣を強く握りしめる。
一度、後方へ下がり間合いを取る。
「どうした?逃げるのか?退いたものに勝ち目は無いぞ!」
グラベンテは、後ろに下がった女戦士へ突っ込む!
その勢いは、凄まじい。
「・・・・・・・・・・」
女戦士は、目を閉じる。
「魔具インスクティアよ!我に力を!」
「貴様も力に頼るではないか!笑わせるなぁ!」
片手で槍を天へ突き上げた。発達した上腕筋からは、湯気が出ている。グラベンテは、力の限りガラドボルグを振り下ろす。
振り下ろした勢いにより空気が分断される。
そして、衝撃波が女戦士へ向かう。
何が裂かれる音がした。
女戦士は、何も出来ずガラドボルグの前に倒れた。
体は、見事に2つに裂かれ、辺りには血が、、、、、
「口だけの女が!貴様のせいで私の獲物5匹が逃げてしまった、、、まぁ、魔帝の配下を1人始末した方がアイスバーグ様は喜ばれるか、、、」
グラベンテは、女戦士の亡骸に近づく。
「血も涙もないと言うが本当に血が出ずに死ぬ者もいるのだな、、、」
グラベンテは、女戦士の亡骸から血が全く出ていない事に気付く。
血が出ていない?
「魔帝は、まだ若いこんな小娘を戦場に送り込むのか、、、つくづく悪趣味で哀れな奴だ!」
グラベンテが、女戦士の亡骸に触れたその瞬間。
「な、なんだと!!」
亡骸は、砂のように消えた。そして、、、、、
ズサッ!!!!!!
何か、大きい物がグラベンテの体に貫通した。
「甘かったな!私が簡単に死ぬとでも思ったか?」
「糞!!幻術か!!グハッ、、、お、おのれ小賢しい!!小娘ッ!!」
グラベンテの後ろには、死んだはずの女戦士がいた。
そして、大剣を振るい後ろから突いていたのであった。
「これが、私の魔具インスクティアの能力!幻術をもって相手を倒す力!お前のガラドボルグは、私のインスクティアより遥かに強い!だからこそ、私自身の力を鍛錬することでインスクティアの能力を最大限に活かす!これが私の戦い方だ!」
女戦士は、インスクティアを引き抜く。
グラベンテの体からは大量の血が流れる。
不意を撃たれたグラベンテは、最後の力を振り絞りガラドボルグを握ろうとした、、、、
インスクティアの剣擊により、ゴブリンマスターと化したグラベンテの首が中に浮く。
無情にも、頭部を失った体は地面へ倒れる。
クマノスケを殺そうとしていた男は、突如現れた謎の女戦士によって討ち取られた。
「ふーぅ、、、、終わった、、、あの者達は、上手く逃げているだろうか、、、」
女戦士は、ケン達が逃げていった方向を見つめている。