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あなたが愛しすぎて  作者: m.
9/34

飲み会

ー6月上旬ー







「紗和せんぱいっ!今日お昼一緒にどうですか?」








「楓ちゃん…!もちろんいいよ!」








間宮くんと同時期に入社した涼宮楓(すずみやかえで)ちゃん。







佐々木さんが指導係として楓ちゃんを担当していて、私とはたまに会話する程度だ。









「楓ちゃん、可愛いよね。人懐っこくて」









「………そうですか?俺は苦手なタイプですね」








「え、なんで?何かあったの?」








「そういう訳じゃないですけど」








「………何もないのに苦手って決めつけるのよくないよ」








「………そうですね、すみません」









そしてお昼時間。








「楓ちゃん、休憩行けそう?」








「はい!今ちょうど終わりましたぁ!」







「お疲れ…!じゃあ行こっか」







私は社員食堂に向かって歩いていく。








「え?紗和せんぱいどこにいくんですか?」







「ん?社員食堂だけど…?」








「屋上じゃないんですか?」








「え…?」








「だってたまに屋上で食べてますよね?」









「あ…うん……でも今日は楓ちゃんと一緒だし社員食堂がいいかなと思って……」









「………屋上は直人せんぱいと食べたいからですか?」







「え…うぅん……そういう訳じゃ……」








「私知ってるんですよ?紗和せんぱいと直人せんぱいが屋上でお昼食べてるの」









「じゃあ…屋上で食べよっか…?」







「はいっ!」








私達はエレベーターに乗り、屋上へ向かう。







「あのベンチ座ろ………」








「なんかあのベンチ…日差しすごいですねー焼けちゃいそう」








「あ…じゃあ他の所にしよっか…?」








「大丈夫です、私も直人せんぱいと同じベンチで食べたいんで!」







私達はベンチに座り弁当を広げる。








「わー紗和せんぱいのお弁当すごいボリュームですね!毎日こんなの食べてるんですか?」







「うん割と…」








「私少食だからなぁ…こんなに食べられて羨ましいです」







「楓ちゃん細いもんね…!」









「そんなことないですよぉ〜紗和せんぱいも細いじゃないですかぁ」








「そんなことは…あ…入社してからもう二ヶ月位経つけど、仕事は慣れた…?」








「はい…!直人せんぱいがすっごく優しく教えてくださるので毎日楽しいですっ!」








「それなら良かった…!」








「紗和せんぱいは職種ちがうのになんで直人せんぱいと仲良いんですか?」







「佐々木さんとたまに一緒に呑ませてもらったりしてて……」








「へぇ……ていうか私も一緒に呑みに行きたいです!」








「うん…!もちろん!」









「じゃあいつにしますー?」









「あ、間宮くんも誘っていい?知ってるよね?」









「間宮……あぁ、私と同期の…あんま話したことないですけど」









「どうかな?」









「直人せんぱいがいるなら他に誰がいても別にいいですけど」








「じゃあ、スケジュール調整して連絡するね…!」









「お願いしまぁす!」










「………てことになって」








「まじか……」








「嫌…?」








「………別に良いですけど。紗和さんが居るなら」








「ほんと!?よかった〜!じゃあ行ける日教えてね!」








「分かりました」








ー二週間後ー








「あ、間宮くん!私達一番乗りだよ〜!」








席に座り早速メニューを開く。








「ねー見て!これめっちゃおいしそうじゃない!?」







「ですね」







「……あ、みんな来る前に私ちょっとお手洗い行ってくるね!」








私はふすまを開け廊下に出る。








お手洗いどこだろう……









店員らしき人を探すけど見当たらない。









「ねー誰か探してるの?」








「え…?」








私がキョロキョロしていると、後ろから20代くらいの男性に声をかけられる。








「なに、迷ってるの?」








「あ…お手洗いを探してて………」









「あーここ真っ直ぐ行って右に曲がったとこ」








「あ……ありがとうございます…」








男性に教えてもらった通り歩いていくとそこにお手洗いがあった。









佐々木さん達もう来たかな………








そんなことを考えながらお手洗いから出た私は目の前に立っていた人にぶつかりそうになる。








「わ………すみません…!」









「……あれ?さっきの子じゃん」








「あ…先程はありがとうございました…」







「誰と来てるの?」








「……会社の人達と………」









「まじかーだるいっしょ!」









「いえ…そんなことは……」









「俺ダチと来ててさ、みんな酔っ払って寝ちゃって…暇なんだよね」









「そう…なんですか……」









「ちょっとだけ抜けてさ、俺と飲まない?」









「………みんな…待ってるので…………」








「俺と飲んだ方が楽しいと思うけど?」









「すみません……大丈夫…です……」








「待てって」








私が横を通り過ぎようとすると、無理矢理腕を引っ張られる。








「いたっ…あの……離して…下さい……」








「んー?何言ってるか聞こえないんだけど」








「…………………」








「何?嫌ならハッキリ言えよ」








「す…すみません………あの……」









と、その時だった。










「何してるんですか?」








「間宮…くん……」








間宮くんが私の腕を掴んでる男の腕を力強く引き離す。







「ってぇな!なんだテメェ」







「あなたこそ何なんですか?」








間宮くんが私の腕を優しく引っ張り後ろに行かせてくれる。








「はぁ!?その女が俺を誘ってきたんだよっ!」








「………………」









「紗和さん、行きますよ」









そう言うと私の手を引いて歩いて行く。








私は後ろを振り返りながら間宮くんの後を付いていく。







席に着いた私達は座敷にあがりふすまを閉める。









「紗和さん大丈夫ですか?怪我とかしてないですか?」







「大丈…夫………」








そう言いながら腕をさする。








少しだけ赤くなっていた。









「ごめんね…ありがとう……」








「腕……冷やしますか?」









「あ…ううん大丈夫………」








「紗和さん、ああいう奴にははっきり言った方が良いですよ。調子乗るんで」








「………そう…だよね…」








「……紗和さん?」








ふいに肩を触られビクッとなる。








「え…あ……すみません……」








「う、うぅん…大丈夫……」








「あの…紗和さん」








「……佐々木さん達遅いね?まだかなぁ…」









私は気を紛らわせるように話題を変える。









スーッ







「お疲れさまでーす!」








「あ…お疲れさま…!」








「お疲れ様です」








「お疲れ。遅くなってごめんな」








「全然…!私達も今着いた所なんで…ね?間宮くん」







「…はい」







私は楓ちゃんと佐々木さんにメニューを手渡す。








「直人せんぱいは何にしますっ?」









「青木達は決めた?」








「まだです…おいしそうなものありすぎちゃって…」








「青木らしいな」








そう言って佐々木さんが笑う。









「……紗和さんこれとかどうですか?魚好きですよね」








「これめっちゃ美味しそうだよね…!」








「青木これは?よく頼んでるだろ」








「良いですね…!これは絶対頼みましょ!楓ちゃんは何がいい?」








「うーん…なんでも良いかなぁ。あんま食べられないし」








「そっか…じゃあ適当に頼んじゃうね…?」








「はーい」








私達は、というかほとんど私が食べたいものを注文し料理を待つ。








先に運ばれてきたお酒で乾杯し、私はグイッとお酒を流し込む。








「やっぱ仕事終わりのお酒は最高だね…!」








それを見ていた楓ちゃんが笑い出す。








「紗和せんぱいって…思ってた感じの人となんか違いますね?」








「え、そう…?」








「なんか…見た目と中身のギャップすごくないですか?そういうのってあえてそうしてるんですか?」







「え…?」







「そういうギャップ男の人好きそー。なんか……紗和せんぱいってあざといですよね〜。あ、いい意味で?」







「あざとい…」







「それ言ったら涼宮もあざといだろ。あ、いい意味で?」







「は!?どこが!?」








「ちょ…二人ともやめてよ…楽しく飲もうよ…ね?」








「…すみません」







「…………」







スーッ







「お待たせしました〜!こちら………」








良いタイミングで頼んだ料理が運ばれて来る。








「わ…おいしそう…!」







「直人せーんぱいっ!それ何飲んでるんですかぁ?」






「……ハイボールだけど」








すると楓ちゃんが佐々木さんのジョッキを持ち上げて飲み始める。








「え、おい…!」








「ハイボールやっぱ苦手だぁ〜」








「いや何で俺の飲むんだよ…」








「いいじゃないですかぁ…!あ、これって間接キスになっちゃいますねっ」








そう言うと楓ちゃんが両手で自分の頬を包む。








「何を言ってるんだ……」









「え…直人先輩照れてるんですかぁ?可愛いー」








「は…?むしろ迷惑……」








「え……迷惑なんですか……?」








楓ちゃんの悲しそうな顔に私は焦る。








「佐々木さん…!良いじゃないですか…少しくらい飲んだって……」








「ですよねぇ!?私そんな悪いことしてないですよね!?」








私は間宮くんに助けを求める視線を送る。








「……紗和さんこれ美味いですよ」







「え、ほんと…!?食べてみよーっと……」









私は料理を一口食べる。








「わ…ほんとだ、めっちゃおいしい!楓ちゃん、これおいしいよ!」








私は楓ちゃんに料理を勧めながら、ちらっと間宮くんの方を見る。








なんで笑ってるんだ……








間宮くんが意地の悪い笑みを浮かべている。








ー数時間後ー








「結構食べたね〜お腹いっぱい!」







「ほとんど青木が食べたけどな」









「ちょ…そんなことないですよ!」








「食ってる時一番幸せそうだもんな」








「それは喜んで良いんですよね…?」








佐々木さんは何も言わずに笑っている。








「佐々木せんぱぁい……わたしちょっと飲みすぎちゃったみたいです…」








楓ちゃんが佐々木さんの肩に頭を置く。








「楓ちゃん大丈夫…?時間も時間だし、そろそろ解散しよっか…」








「佐々木さん、涼宮送った方が良いんじゃないですか?俺、紗和さん送るんで」







「あぁ…」







「直人先輩部屋まで送ってくれるんですかぁ?嬉しい…!」







私達は居酒屋を出てそれぞれ別れて歩く。







「佐々木さん、楓ちゃんよろしくお願いします…楓ちゃん足元気を付けてね…?」








フラフラな楓ちゃんを佐々木さんが支えながらタクシーに乗り込む。








それを見送ってから私達も歩き出す。









「あ…間宮くん、私は一人で大丈夫だよ?」








「いや、送ります」







「でも駅までそんな遠くないし……」








「女の子一人で夜道歩くの危ないんで」









その言葉に私は笑う。








「どうしたんですか?」








「…………みんな優しいなぁと思って」







「………?」







「……私のことそんな気遣ってくれて」








「そんなの当たり前です」







「……ありがとう」








「……いえ」








私達も夜の街を歩き出す。









「………聞いても良いですか?」








「うん、何?」







「紗和さんって好きな人とか居るんですか?」







「え!?どうしたの、急に……」







「………別に深い意味はないです」







「好きな人はいないけど……」








「そうですか。てっきり佐々木さんのこと好きなんだと思ってました」








「へ!?佐々木さん!?なんで!?」








「なんとなく…です」








「上司として尊敬はしてるけど…」








「………そうですか」








「間宮くんは好きな人……いるの?」








「います」








「えっそうなんだ…!」









「同じ会社の人です」









「そうなの!?私も知ってる人?」









「知ってるっていうか……」









「私も協力するよ…!間宮くんの恋、応援する!」







「応援……」








「同じフロアの人?」








「まぁ……近い距離には居ますね」








「そうなんだ…!名前聞いても…いいのかな?」








「それは……言えないです」








「そっか…そうだよね…私いつでも協力するから何でも言ってね?」








「………紗和さん、駅着きましたよ」








「あ〜もう少し話聞きたかったなぁ…!」








「じゃ、俺向こう側なんで」








そう言って歩いていく。








「あ…間宮くん」








「はい」








「わざわざここまで送ってくれて…本当にありがとう…!」








「………紗和さんって変な人ですね」








「え!?なに…なんで!?」








「……自分の事もっと大事にした方が良いですよ」








「……どういう意味?」








「じゃあまた月曜日に…お疲れ様でした」








「えっうん……ありがとね…!お疲れさま…!」








私は間宮くんを見送り、駅の方へ歩いて行った。








ー次の日ー









「楓ちゃん昨日大丈夫でした?」








「いや……部屋まで一人で帰れないって駄々こねてさ……部屋まで連れて行ったら今度は全然手、放さないし」








「佐々木さん優しいですもんね」








「何でそうなるんだよ……」








「佐々木さんが女の子にモテる理由わかる気がします。その優しさについ甘えちゃうんですよね…」









「別に優しくないし、甘えられても困る…」








「楓ちゃん、佐々木さんのこと好きだから甘えたいんですよきっと」








「……まぁ上司としては部下に嫌われるよりは良いけどさ……」








「…………え?」








「………?」







「え、佐々木さん…もしかして楓ちゃんに上司として好かれてると思ってるんですか?」








「いや、それ以外の理由無いだろ」








「佐々木さんって…意外と鈍いんですね…楓ちゃん佐々木さんのこと異性として好きなんだと思いますよ…?」








「異性…?………いや、それは無いだろ。涼宮まだ21歳とかだろ?さすがに……」








「好きになるのに年齢関係あります?」








「いや、それは……」








「楓ちゃん可愛いらしいですし」








「……………………」








「佐々木さん?」









「あ…うん……そう…だな……」

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