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あなたが愛しすぎて  作者: m.
8/34

新入社員

ー5月ー






新年会をきっかけに私は部署のみんなとも親しくなり、楽しい日々を送っている。






どこから漏れたのか、白石さん達に新年会のことがバレてしばらく機嫌が悪かったことを除いてはすこぶる順調だ。







4月には新しく社員も何人か入社し、なんと私にも後輩ができた。







「紗和さん、おはようございます」








「おはよう!間宮くん」







自身の業務をこなしながら後輩にも色々教えこまないといけない…結構ハードだ。







「今日はランチどこ行きます?」








「どこでも良いよ!間宮くん決めて」








間宮隼斗(まみやはやと)

仕事熱心で分からないことがあれば積極的に聞いてくるし、何でも吸収しようとする。

先輩としてはすごく教えがいのある後輩だ。








間宮くんが入社してから、お昼を一緒に食べることが多くなった。







「こういう時はどうしたら良いですか?」








「あーそれは先方の都合もあるから……〜〜〜…」








間宮くんは熱心にメモを取っている。








「間宮くん、仕事熱心なのは良いことなんだけど…ランチくらいゆっくり食べよ?」








「あ…はい、そうですね」







そう言うと急いでご飯をかけこむ。







「すみません、トンカツお願いします」







「え、まだ食べるの!?」







「はい、腹減ってるんで」







そう言って運ばれてきたトンカツをもぐもぐ食べてる間宮くんを見て私は思わず笑ってしまう。








「どうしたんですか?」







「おいしそうに食べるなーって思って」







「紗和さんもいつも美味そうに食べてますよ」








「…そう?」








そう言って私達は笑い合う。








「いらっしゃいませー!」







「あれ?紗和ちゃん!?」







私は声がした方へ顔を向ける。







「あ…矢吹……さん?」








「え、オレの名前覚えててくれてるんだ。てかめっちゃ久しぶりじゃん!元気してた?」







「あ…はい…矢吹さんは……」








「オレは紗和ちゃん不足で全然元気ないわー」








そう言いながらチラッと間宮くんの方を見て会釈する。








「え、もしかして彼氏できたの?」








「ち、違います!会社の後輩で……」








間宮くんも戸惑いながら会釈する。







「なーんだー…よかった…てか紗和ちゃんスーツ姿も超いいじゃん!可愛い〜」








そう言うと私の姿をじっと見る。







「いやいやそんなこと……」








「あ…紗和さん…そろそろ行かないと…時間…」








私は時計を見て立ち上がる。







「そ、そうだね…!矢吹さんすみません…仕事戻らないといけないので失礼します…」








「えーもう行っちゃうの?」








私達は矢吹さんに会釈しながらその場を去る。








「間宮くんごめんね…まだ時間あったのに……」








「いや…あの人お知り合いですか?」








「うーん知り合いって言うか……今日で会うの二回目なんだけどね……」








「にしては……なんか馴れ馴れしいですね」







「うーん…」







「………気を付けた方が良いですよ」








「え…どうして?」








「いや…なんとなく、です。男の勘っていうか」








「何それ…!でも矢吹さん佐々木さんの後輩で仲良いからそんな変な人じゃないと思うよ?」








「……………………」









「間宮くん…?」








「……男に見せる顔と女に見せる顔は別ですからね」







「…?あ、間宮くんほんとに時間やばくなってきた!早く会社戻ろ!」








私は間宮くんの態度に疑問を持ちながら小走りで会社へと急いだ。







ーPM6:00ー








私はノートパソコンを閉じ大きく伸びをする。








「間宮くんそろそろ帰ろっか…!」








「そうですね」









私達は帰り支度をし、会社を出る。







「それじゃあ、また明日ね!お疲れっ!」








「あ、紗和さん」







「ん?」








「今度の休み、予定あります?」








「休みの日…?映画観に行く予定だけど…」








「……その映画って誰かと行くんですか?」








「うぅん、一人だけど…?」








「なら、俺も一緒に行って良いですか?」








「え、なんで?」








「……俺も映画観たいと思ってたんで」








「や…でも映画って……ゾンビ映画だよ…?」








「…ゾンビ……俺も好きなんで…ゾンビ物」








「え…そうなの!?じゃあ一緒に行こ!」








そして休日。








私と間宮くんは映画館で待ち合わせる。








間宮くんの姿が見えた私は小走りで向かう。








「お待たせ間宮くん…!来るの早いね!?」








「………いや、俺も今来た所なんで」








「それなら良かった…それじゃ入ろっか!」








「……………」







「間宮くん?」








間宮くんが立ち止まったまま私の方を見ている。








「どうかした…?」









すると間宮くんがハッとした表情を浮かべ私から目を逸らす。








「あ…いや、何でもないです。…入りますか」







「うん…?」








私達はチケットと飲み物を購入し、映画館の中に入る。







「席ここだね」








席に座り上映まで時間を潰す。








「間宮くんもゾンビ映画好きなんだね…!苦手な人結構多いからさ…まさかこんな近くに好きな人がいるなんて思わなかった…!」








私は嬉しくてテンションが上がる。








「まぁ………そう…ですね」









ブーーー








上映のブザーが鳴り響き照明が暗くなる。










二時間後。







「めっちゃおもしろかった…!最後のゾンビ同士が戦うシーンやばかった……え………間宮くん…?」








私が横を見ると間宮くんは口元を押さえ表情も暗い。







「大丈夫…?」








「外…出て良いですか」








「あ、うん…」








私達は映画館を出て、外のベンチに座る。









「間宮くん…大丈夫…?」









「………想像以上に…グロくて……」








「ゾンビ映画だからね……間宮くん好きなんでしょ?ゾンビ映画……」








「いや………苦手………です」









「苦手なの!?じゃあなんで観たいって……」








「紗和さんが好きな映画一緒に観たいと思って…」








「何それ……だから無理して付いてきたの!?」








間宮くんが無言で頷く。








「もーなんでそんな無理するかなぁ……」








そう言って間宮くんの背中をさする。








「紗和さんの事…もっと知りたいし…近付きたくて…」








「毎日会ってるじゃん……」









そう言って笑う。









「そういう事じゃなくて…仕事以外に……」







〜♪







「あ、ごめん…ちょっと電話…」








私はベンチから離れ、電話に出る。









「…………はい…!じゃあ後ほど…!」










電話を切り間宮くんの元へ戻る。









「……間宮くん、少し落ち着いた?」









「はい、大分…」








「それなら良かった…!じゃあそろそろ解散しよっか…」








「え…ご飯食べないんですか?」









「あ…私この後約束があって……」








「そう…ですか……」








間宮くんが寂しげな表情をする。








「じゃあ、俺行きますね…」








「あ、間宮くんも一緒に…来る?」








「え…?でも…お邪魔じゃ……」









「相手佐々木さんだから…間宮くんも何度か会ったことあるよね?」









「佐々木…さん……」









私は佐々木さんの確認を取って間宮くんと待ち合わせ場所へ向かう。








「……佐々木さんと付き合ってるんですか?」








「え!?付き合ってないよ!なんでそんなこと聞くの?」







「何か仲良さげですし」







「仲良いって言うか…良く一緒に呑んだりしてるってだけでそれ以上は別に何もないよ…」








「………そうですか」








「あっ…間宮くん車だから呑めないね…」








「……ご飯食べたいんで平気です」








居酒屋に着いた私達は中へ入る。







「あ、佐々木さん!お疲れさまです!」







「お疲れ」







「………お疲れ様です」








「もう、何か頼みました?」









「いや、俺も着いたばっかりだから」








メニュー表を開き、あれこれ注文していく。









「紗和さん良くここ来るんですか?」









「うん!常連だね…」








すぐにビールが運ばれてくる。









「間宮くん呑めないのに…なんか…ごめんね…?」








「いや、気にしないで下さい」









「じゃあ…乾杯…!」








アルコールが入り、私の会話もどんどん饒舌になっていく。








「………でね、間宮くん…ゾンビ映画実は苦手だったらしくて……」








「じゃあなんで観に行ったんだ?」








「それが……私が好きな映画一緒に観たかったって……そんな可愛い理由あります!?」









「いやだからそれは…」









「毎日一緒にいるのにもっと私のこと知りたいって…どんだけ勉強熱心なんだ…って思いません!?」









「え…それって………」








「紗和さん、飲み過ぎです。もう良いですから俺の話は」








「ほんと可愛いなぁ間宮くんは…!」









私は間宮くんの頭をポンポンと撫でる。









「…………すみません、生下さい」









「え、お前車で来てるんだろ?」








「………なんか呑みたくなったんで。代行呼ぶんで大丈夫です」







「お、いいね!一緒に飲もー!……とその前に私ちょっとお手洗い行ってきます…!」








私は席を立ちお手洗いに向かう。








「………佐々木さん、紗和さんと良く呑んでるって本当ですか?」








「良くって程では無いけど…たまにな」








「どう思ってるんですか?紗和さんの事」








「どうって?」








「異性としてです」








「異性として…?別に何とも思って無いけど…」








「なら、俺紗和さんの事狙いにいって良いですよね」







「……え?」








「俺、紗和さんの事好きなんで」








「………………」









「………何話してるんですか?二人して」










「うわ!びっ…くりした……」









「男同士の話ってやつですか?」








「え…いや……青木いつからここ居た…?」








「今ですよ、なんか二人して深刻そうな顔してたんでどうしたのかなーと思って」









「じゃあ…何も聞いてないんですよね…?」









「え、私の話してたの?」








「え!?いや……そういう訳じゃ……」









「別に大した話してないですよ」









私はふーんと言いながら席に座りおつまみを食べる。








「すみません、おかわり下さい」








「間宮くん、結構呑むね?お酒強いの?」








「割と強いです」








「なんか間宮くんの酔った姿想像つかないかも…!ね、佐々木さん」








「……そうだな」








「酔ってもそんな変わらないですよ。紗和さんみたいにダル絡みもしないですし」







「え、私ダル絡みなんてしたことないんだけど」








「俺の話ベラベラ喋るし」








「だってあんな可愛いエピソード誰かに聞いてもらいたいじゃん」








「可愛い……ね…」








「佐々木さんもそう思いますよね!?」









「………確かに、青木は酔ったら結構面倒だな」








「はい…!?佐々木さんまでそんなこと言うんですか!?」








「ほら、やっぱりそうなんじゃないですか」









「……すみません!私もおかわりください!」








「まだ呑むのか…?もう何杯目だよ…」








「全然酔ってないんで大丈夫です!」








気付けば飲み始めて3時間が経とうとしていた。








「そろそろ帰りますか…」








「そうだな」








「えーもう帰るんですか!?明日も休みですし…もう少し呑みましょうよ…!」








「もう0時過ぎますよ…」









「なら私の家で飲み直します?家近いですし」








「…………………」









「青木…それはさすがに……」









「とりあえず…出ますか」









私は伝票を取り若干ふらつきながらレジへ向かう。








「俺、間宮の分払うから青木は自分のだけ出して」









「え…割り勘…?」









「私がね、奢られるの嫌だからいつも割り勘にしてもらってるの」








「あ、間宮先出てて良いよ」








「………俺も払います」








「良いって」








「俺も佐々木さんに奢られるの嫌なんで。払います」







結局三人で割り勘し、お会計する。








「じゃあ行きますか…!」








私は二人の腕を掴み家に向かう。








「いやいや、ちょっと待て」








「え、なんですか?」








「青木の家には行けないって……」









「え…なんでですか…?」








「何でって…」









「間宮くんは来るよね?」









「…………はい、行きます」








「さっすが間宮くん!それじゃ行きますよー!」








私はさっさと歩いて行く。








「え、お前行くのか!?」








「紗和さんの家で飲み直す事の何が問題なんですか?」









「いや…だってさ…」









「………佐々木さん何か変な想像してます?」








「は!?いや…俺はただ………」








「間宮くん何してるの?早く行こ…!」








私は遠くにいる間宮くんを呼ぶ。








「まぁ…俺はむしろ一人の方が良いんで、佐々木さんは来なくても…」








「………………………」









「…………それじゃ、お疲れ様で…」








「いや、俺も行く」









「佐々木さんも来るんですね?はい、行きますよー!」








二人の元に戻った私は腕を引っ張り家に向かって歩く。








「さっきから二人で何話してるんですか?」








「や…別に……」








「まぁ二人が楽しいならそれでいいですけど…!」









「……そう見えるんですか」








「うん、仲良さそうに喋ってるなーって」








家の近くにあるコンビニでお酒とおつまみを買い家に向かう。








ガチャ








「どうぞ…!」








「お邪魔…します」








「お邪魔します」








「佐々木さんに部屋見られるのなんか恥ずかしいですね…」








「何で…」








「ほら佐々木さんの部屋と違って全然綺麗じゃないし…狭いし……」








そう言って苦笑いする。









「え…紗和さん、佐々木さんの部屋行ったことあるんですか…?」








「あぁ…うん」







「へぇ…」








「二人とも適当に座ってて下さい…!……あ、ちょっと着替えてきても良いですか?家では部屋着じゃないと落ち着かなくて」








「はい」








私は部屋に行き、服を着替える。








ガチャ








「お待たせしました〜!って言っても皿に移しただけだけど」








「可愛い…」







「ん?」







「今日着てた服も可愛かったですけど…紗和さんの部屋着もめっちゃ可愛いです」








「あぁこれ、可愛いでしょ…!このボーダーの配色に一目惚れしてね……」







「いや、その部屋着も可愛いですけど…それ着てる紗和さんがもっと可愛いです」








「………間宮くん酔ってる?」









「全然酔ってないです」








「お二人も着替えます…?スウェットでよければありますけど……」








「いや…大丈夫」








「俺も…大丈夫です」









私達は改めて乾杯をする。








「………それで、紗和さんどうして佐々木さんの部屋に行ったんですか?」








「え?」








「さっき言ってたじゃないですか」








「あぁ…話すと長くなるから……」








「時間はたっぷりあるんで。聞きたいです」








「なんでそんなに気になるの?」







「いやだって、女性の部下が男性上司の部屋に行くなんて状況普通に考えてないですよね。付き合ってる訳でもないですし」








「………部屋には来たけど、別に何も無い」








「何も無いのに部屋に来る理由は?」








「私の部屋が水トラブルでいられなくなって……それで佐々木さんの家に泊まらせてもらって……」








「え…泊まったんですか…!?」








「空いてるホテルがなくて……」








「………もう良いだろ、間宮」








「何で…佐々木さんなんですか?」








「それは…たまたま佐々木さんに会ったから……」









「佐々木さん本当に下心なく泊めたんですか?」









「当たり前だろ!?」









「…………………」






「…………………」








「ねぇ、どうしたの間宮くん……なんでそんなに色々聞くの……」








「……別に」







「……………………」







「……………………」









「………私、ちょっと外の空気吸ってくるね」









ピリついた空気に耐えられなくなった私は、立ち上がりベランダに出て、ため息をつく。








「………………………」







「………………………」








「………青木の様子見て…」








「……俺行ってきます」








ガラガラ








「……紗和さん」








「………………………」







「怒って…ますか」







「……………うぅん…別に怒ってない…」








「……すみません…紗和さんが佐々木さんの家行ったって知って…嫉妬しました」








「嫉妬…?なんで…?」








「…………すみません。戻りましょう?」








「うん……あの…間宮くん」








「……はい」








「佐々木さんは……本当に優しさで泊めてくれただけだから……」








「………………………」









「佐々木さんを責めて欲しくないな……」








「………はい」









そして私と間宮くんは部屋に戻った。








「ちょっと飲みすぎちゃったみたいで…外の風に当たってました…すみません、佐々木さん……」








「いや…大丈夫か…?」








「はい…!」








「…………佐々木さん、さっきは……すみません。失礼な事言いました」








「いや…俺の方こそごめん…青木もごめんな、変な空気にしてしまって」









「楽しく飲みましょう…ね…?」









そして数時間後。









「……青木、寝ちゃったな」









「……はい。紗和さん無防備過ぎます…」








「それだけ俺達を信頼してくれてるんだろ」









「何か……警戒心無さ過ぎて心配です」









「そんな事無いと思うけどな……」









「……………………」









「ただ……心配な所はあるな」








「………何かあったんですか?」









「前に…男二人に声掛けられててさ…怯えてるように見えたんだけど男に押されてて…俺がたまたま傍に居たから良かったけど、青木一人の時どうしてるのかと思って……」









「そう…ですか」









「ん………」








「紗和さん…?」









「あれ……私……いつの間に……」









「青木、もう時間も時間だし俺達そろそろ…」








「え…帰るんですか…?泊まってけば良いのに……」








「………本気で言ってるんですか?」








「うん…もうこんな時間だし……」








「……大体どこに寝るんですか?」








「うーん…その辺に雑魚寝とか…?」









「………佐々木さん、帰りましょう」








「……そうだな」









「じゃあまた…三人で飲みましょうね…?」








私は二人を見送り、ドアを閉める。








ピピピピピピ








「……………………」








ピピピピピピ









私はスマホを手に取る。







少し目が覚めるのを待って、佐々木さんにメッセージを送る。








”昨日はありがとうございました…!すみません、私途中寝ちゃったりして…帰り大丈夫でしたか?”








しばらくしてメッセージが返ってくる。








”大丈夫。大分飲んでたみたいだけど平気か?”








間宮くんにもメッセージを送り、しばらくやり取りしたあとまたベッドで横になる。







「頭いた………」







私はしばらくベッドから動けず無駄な休日を過ごすこととなった。

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