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あなたが愛しすぎて  作者: m.
7/34

チョコとお礼

新年からあっという間に時は過ぎ、気付けばバレンタインの季節になっていた。







デパートに行くとチョコレートがずらっと並んでいるのが目に入る。







バレンタインかぁ………









会社のみんなに配るために私は小分けのチョコを選び、レジに向かう。







途中で足を止め手作りコーナーを見る。








私は手作り用のチョコもカゴに入れ、改めてレジへ向かった。








そして2月14日。







少し早めに会社に着いた私はみんなのテーブルにチョコを置いていく。







佐々木さんの机の前に来た私はそこで立ち止まる。








バッグからチョコを取り出し、うーん…と迷っていると後ろから声がする。







「……どうした?」








「ひゃっ…!」







びっくりして変な声が出る。







「……?」








「おはよう…ございます…」








「おはよう…どうした?」








「あ…あの……」









と切り出した所で向こうから人が来るのが見えて口をつぐむ。







「ん?」







「あ、なんでも…ないです」







私は他の社員に挨拶をして秘書室へ向かう。










ーPM12:00ー







「お疲れ」







「あ、お疲れさまです…!」








「……元気そうだな」







「え?」







「あ、いや…朝何か言いかけてたから気になっててさ。何かあったのかと思って」







「あ…あぁ…!今日バレンタインじゃないですか…!だからチョコ…渡そうと思って…」







「あぁ…そういう事か…何であんな思い詰めたような顔してたんだよ…」







「あの…手作りで…チョコ作ってみたんですけど……」







「手作り…?」







「………佐々木さんには色々とお世話になってるので…作ってみたんですけど…それを渡そうか迷ってて……でもやっぱりこっち渡しますね」






私はバッグから既製品のチョコを取り出して佐々木さんに手渡す。






「あ、これは買った物なので安心して食べて下さい」







「ありがとう…でもわざわざ手作りで作ってくれたんだろ…?」







「……私手作りチョコ作ったことがないので上手くできなくて…そもそも手作りのチョコ食べるの嫌な人もいるじゃないですか…既製品だと味も保証できますし…」







そう言って笑う。







「……なら貰って良いか?」







「え…?」







「別に手作りチョコ嫌いとか無いから」







「いやでも……味の保証はできないですよ…?」







私はチョコを遠慮気味に手渡す。







すると佐々木さんはその場で包みを開け、チョコを頬張る。







「……美味いよ」







「本当ですか…?」







「うん、ありがとう」







「……佐々木さん良い人すぎます……」









「いや、本当に美味いって」








「それなら…良かったです…あ、本命チョコではないですからね…!」







「そりゃそうだろうな」







そう言って笑い合う。










「今日佐々木さんご予定は…?」








「いや、特に無い」







「なら…独り者同士、呑みに行きません?」







「うん、良いけど」







そして夜。








「お疲れさまでーす!」







「お疲れ」








私達はビールジョッキで乾杯する。







「あ…そうだ」






私はバッグからチョコを取り出し、いつもの店員さんに手渡す。






「えっ…これって…もしかしてバレンタインチョコっすか!?」








「はい…!いつもおいしいお酒とお料理、ありがとうございます…!」









「いやー嬉しいっす!これからもよろしくお願いします!」







店員さんの笑顔に私まで笑顔になる。







「……ホワイトデーは何が欲しい?」







「え、早くないですか!?」







「いや……心のこもった物を貰ったからな…ちゃんとお返ししないと……」







「お返しなんて別に良いですよ……」








「そういう訳にはいかないだろ…青木に何あげて良いか俺良く分からないからさ…今で聞いておきたい」







少し考えて、私は口を開く。







「じゃあリクエストがあるんですけど……」







「ん?」







「前から気になってるお店がありまして……佐々木さんが良ければ一緒に行って欲しいです…!」








「そんな事で良いのか?」







「はい!一人で入るのはちょっと勇気いるので……」







「じゃあそれで」







私達は早くもホワイトデーの予定を立てながらお酒を呑む。







「そういやもうすぐ新入社員が入ってくる季節だな」







「ほんとあっという間ですよね〜今年こそ!秘書希望の子が入って来ますように…!」








「中々人来ないもんな、青木の所」









「そうなんですよ…!楽しくて、やりがいのある仕事なんだけどなぁ…」








「今年は誰か来ると良いな」








「ほんと、この通り…!」









私は両手を合わせ拝むポーズをとる。













そんな会話をしてから一ヶ月。








ホワイトデーの日がやってきた。









「今日、日曜で良かったな」









「はい…!私楽しみすぎて昨日あんまり寝られませんでした…」








「青木らしいな。…で、どこなんだ?行きたい場所って」








「あ、えっと……ここです!」









私はスマホを佐々木さんに見せる。








そして約一時間後。







「わ……やっぱ結構並んでますね……」








車から降り、列の最後尾に並ぶ。








「佐々木さん……大丈夫…ですか…?」








「ん?何が?」








「いや…女の子ばっかりなので……」








「………そりゃ気まずいよ……でも来たかったんだろ?」








「はい…でも佐々木さんまで巻き込んでしまってすみません…」








「良いよ。お返しだからな」








30分近く並んだ後、ようやく席に案内される。









「佐々木さんは…何か頼まれます…?」








「そう…だな……」








メニュー表にはパフェがずらっと並んでいる。








「………青木は?食べたい物決まってるのか?」








「うーん…迷ってます。これとこれで……」








「なら両方頼めば?」








「え?いや…一人で2個なんて恥ずかしいですし………じゃあ…私このいちごパフェで…!」









ピンポンピンポン









「お待たせいたしました〜!ご注文お伺いいたします」








「えっと…このいちごパフェを1つと……」








「このシャインマスカットパフェを1つ。あとコーヒーもお願いします」







「え…?」








「ご注文は以上でよろしいでしょうか〜?」








「あ、はい…」








注文が終わり、店員が向こうに去っていく。









「え、佐々木さん…シャインマスカットパフェ食べたかったんですか?」







「いや…青木せっかく来たんだから、食べたいの食べた方が良いだろ。二人で2個頼めば恥ずかしくないだろ?」







「え…でも………」









数分後、パフェが運ばれてくる。








「わ…!めっちゃおいしそう……!」








「すげーボリュームだな…」








「……佐々木さんも食べましょ…?」








「いや、俺は甘い物そんな得意じゃないから…」








「そうなんですか…?それじゃ頂きますね…?」








「どうぞ」








私はいちごパフェを一口頬張る。








「うわ…めちゃくちゃおいしい…!!!」








あまりのおいしさに私は夢中でパフェを食べる。









すると佐々木さんが笑い出す。








「……どうしたんですか?」









「いや、本当美味そうに食うなーと思って」









「だって…超おいしいんですもん…!」








どっちもおいしくて手が止まらない。








「そういえば……」







「ん?」







「佐々木さん、甘い物苦手なんですね?」







「うん」







「なのにバレンタインチョコ無理に食べさせちゃって…すみません」








「いや…あれは本当に美味かったよ」







「無理してません…?」







「全然」






「なら良かった…!次は甘くないものをあげますね?」







「次も貰えるのか?」







「もちろんですよ…!まだまだお世話になると思うので…」







そう言って二人で笑い合う。








パフェを食べ終えた私達は店を後にする。








「佐々木さん、パフェの代金ほんとに良いんですか…?」







「お返しだからな」







「私一緒にお店に来て欲しかっただけで奢って頂くつもりは…それに結局パフェ全部私が食べちゃいましたし…」







「あれだけ美味そうに食べてくれたら奢りがいあるよ」






「ほんとありがとうございます…!このご恩は必ずお返しします…!」







「良いって…あ、俺ちょっとトイレ行ってくるから車で待ってて」







「私ちょっとそこの景色みてますね!」








着いた時から気になっていた、少し山が見える景色を眺める。







んーっと軽く伸びをしていると後ろから肩をトントンとされる。







「佐々木さ…?」







「何みてるのー?」







そこには見知らぬ二人組の男性がいた。







「え…?」






「俺達、さっき同じパフェのお店に居たんだけど気付いてた?」







「あ……いえ…」







「その時から可愛いなって話しててさぁ〜。あの、一緒に居た人って彼氏?」







「違い…ます…」







「え、まじ?じゃあさ、連絡先交換しない?」







「え…」






「俺らも彼女居なくてさぁー暇な時遊んでよ」








「えっと…連絡先は…ちょっと……」








「彼氏いんの?」








「いない…です……」







「なら良いじゃん、てかほんと可愛いね」







そう言うと一人が私の肩に触れる。







「あ…の……」








「何?」







「…………………」







「青木…?」







「さ、佐々木さん……」







私は走って佐々木さんの元へ行く。







「……知り合いか?」







私は首を横に振る。







「ねー連絡先だけ交換してよ」







そう言うと男が近付いてくる。







「………………………」








私は思わず佐々木さんの袖を掴む。








「………行こう」








佐々木さんはそう言うと私の手を引く。








助手席のドアを開けてくれる。








「は…?なんだよ…彼氏でもないくせに」









私はすぐに乗り込むと佐々木さんがドアを閉めてくれる。









佐々木さんも運転席に乗り込むとすぐにエンジンをかけその場を離れた。








「……青木、大丈夫か?」








「は、はい…大丈夫…です」








私は右手で自分の左腕をさする。







しばらく車を走らせていると佐々木さんが口を開く。







「………少し休憩するか」








そう言うと道端に停車する。








「ほら、左見てみろ」







「え…?」







俯いていた私は顔をあげるとそこには海が広がっていた。








「………わ……綺麗………」








バタン








私達は車を降り海の近くまで歩いていく。







夕日に照らされた海がとても綺麗だ。








私は潮風を思いっきり吸い込む。








「……少し落ち着いたか?」









「えっ…?」








佐々木さん…私の為にここに連れてきてくれたんだ。







「さっきは…あの……ありがとうございます…」








「いや…もっと早く来られたら良かったな…」








「…………………」









私は海に近付いて海の中に手を入れる。








「つめたっ………」








その冷たさがなんだか心地よかった。








「佐々木さん…」








「ん?」








「海…見てたら癒されますね」








「…だろ?」









二人無言で海を見ていたら、この雰囲気が何となく気まずくなった私は佐々木さんに海水をかける。









「おわっ!何すんだよ」









佐々木さんが海水を避けようとつまづいた姿に思わず笑みがこぼれる。








「手が滑っちゃって…?」









「嘘つけ…」








私はその反応がおもしろくて海水をかける手を止めない。







「え、ちょ…やめろって…服濡れる……」








しばらくふざけたあと私達は車に戻った。









「青木…ふざけんなよ…これどうすんだよ……」








佐々木さんがびちゃびちゃになった服を伸ばし、私に見せる。








「すみません…やりすぎました…!」








「絶対思ってないだろ……」








私はせめてものお詫びで持っていたタオルを渡す。








「あ…これ着ます?」








そう言って着ていたカーディガンも脱ぐ。








「いや、良いって…」







「これオーバサイズなんで入ると思いますよ?」








「………青木が寒いだろ」







「はしゃいで少し暑くなったんで……」








「………そもそもなぁ、お前があんな事しなければ……」







そう言って呆れたようなため息をつく。








「だからすみませんって…!ほら、風邪ひいちゃったら困るんでこれ着てください!私なら平気なんで」







そう言って無理矢理カーディガンを佐々木さんに羽織らせる。








「……思ったよりあったかいな」







「でしょ?」







こうしてホワイトデーの一日は過ぎていった。

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