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あなたが愛しすぎて  作者: m.
32/34

精神的ダメージ

そして直人さんは本当に家を出て行った。








会社に行くと、直人さんの姿はなかった。










他の社員に理由を聞くと、長期で有給休暇を取っているらしい。









PM12:00








「お腹空いたー!青木さん今日はどこで食べます?」








「私弁当持って来てるから…」








……と嘘をつく。








「そうなんですか…!じゃあ行ってきまーす!」








「行ってらっしゃい」









私は屋上へ行き、ベンチに座って無心で景色を眺める。











仕事が終わり、家に帰るとソファに座りまたボーッとする。









こんなことを続けていても仕方がない。









そう思った私はソファから立ち上がり、空のダンボールを広げる。









そして自分の荷物をダンボールに詰めていく。









直人さんが居なくなったのに、不思議と何の感情も湧かなかった。








無意識に脳が考えることを拒否していたのかもしれない。








三日後。









「おはよう」









「おはよう…ございます……青木さん…?」








「ん?」









「体調…優れないんですか?」










「え…なんで…?」










「ちゃんとご飯食べてます…?」










「………食べてるよ…」










「そう…ですか……」










そして家に帰り、また荷物をダンボールに詰めている時だった。


















ガタンッ










「はぁ……はぁ………」











急に胸が苦しくなる。










「はぁ…はぁ……はぁ……」












私は冷蔵庫から水を取るため立ち上がろうとするけど、苦しくてなかなか立てない。











「苦し……たす…けて………」











………そこで私は気を失った。














「………………………」










目が覚めると、見慣れない景色が広がっていた。









「青木さん…?……青木さんっ!」









「猫田…くん…?…ここ……病院…?どうして……」









「今日青木さん会社に来なくて……連絡取れないし…住所教えてもらって家に行ったら青木さん倒れてたんですよ…!?」









「え…?……あ……」









そこで私は何があったのか思い出した。











「迷惑かけて…ごめんね……もう大丈夫だから……」









「ほんとですか…?」









「うん…ありがとう…」









「何かあったら連絡してくださいね…?じゃあ僕会社戻ります……」










そう言うと猫田くんは病室を出て行った。










なにやってるんだろう私……










会社にも猫田くんにも迷惑かけて……










その日何度か発作を起こした私は、朝方ようやく眠りについた。













「…………………」










「紗和………?」









「………直人…さん…!?…どうして……」










「猫田から連絡貰って……それより体調は……」










「………大丈夫……ごめんなさい…病室まで来てもらって……」










「………大丈夫じゃないだろ」











「………本当に大丈夫…また迷惑かけて…ごめんなさい…」








「紗和……」









そう言うと直人さんが私の頭に触れる。










その瞬間、ビクッとなった私はまた胸が苦しくなる。










「はぁ…はぁ…はぁ……」










「紗和…!?」











「ごめ…ごめんなさい……ごめ……んなさい……本当にごめんなさい…」











私はパニック状態に陥る。











「どうしました!?青木さーん聞こえますかー?大丈夫ですから、落ち着いてください」









「ごめ……なさい……」










「深呼吸しましょうねー吸って〜吐いて〜」










「………………………」










「落ち着きましたかー?」









「………………………」









「大丈夫?青木さん」









「………は…い……すみません……でした……」









「まだ少し呼吸乱れてるので、横になっててくださいねー」








「はい…………」













「あの、少し宜しいですか?」










「……はい」









ガラガラガラ








パタン










「青木さんの…ご家族ですか?」









「……恋人…です」









「そうですか」










「あの…彼女…どうして発作を……最近は良くなってたはずなんですけど……」









「恐らくですが…精神的にすごく追い込まれることがあって再発したんだと思います」










「…………………」










「あと…青木さん食事も満足に摂っていないみたいなので今点滴しています」










「そう…ですか……ありがとうございます……」










「とりあえず今日はああいう状態ですので、お帰り頂いて…また後日いらして下さい」










「……はい…」










ガラガラガラ










「青木さん、ご気分はいかがですか?」










「………落ち着き…ました……あの…彼は……」









「今日はお帰り頂きました。発作を起こしすぎるのも良くないので、今日はゆっくり休んでください」









「はい………」








直人さんに触れられた瞬間、DVを受けていた頃の記憶が蘇ってすごく怖かった。









今までこんなことなかったのになんで……








そして次の日。








目が覚めた私は、スマホを確認する。









"体調はどうだ"








"大丈夫…昨日はごめんなさい…"









"紗和が大丈夫なら、電話したいんだけど…"









私は病室を出て、直人さんに電話をかける。









「もしもし…紗和…本当に大丈夫なのか…?」










「うん…大丈夫……」









「ごめん……」









「なんで直人さんが謝るの…?私が悪いのに……謝っても…許されることじゃないの…わかってるけど…本当にごめんなさい……」










「もう…謝らなくて良いから…」









「………直人さん……もう…無理して私に会いに来なくていいよ…これ以上迷惑…かけたくない……」









「紗和……」









「それじゃ……」









私はそう言うと一方的に電話を切った。










その日も発作を繰り返し、また朝方眠りについた。
















「………………………」









目が覚めた私はベッドから体を起こす。









「え…?直人…さん……なんで……」









そこには病室の端に椅子を置いて、腰掛ける直人さんの姿があった。








「紗和の許可も取らずに会いに来てごめん……」









「昨日…もう会いに来なくていい…って……」









「紗和が心配だ…また発作…起こしてるんだろ……」









「………………」










ガラガラガラ









「青木さーん食事お持ちしました。昨日も全然食べてなかったから今日は少しでも食べてもらえると良いんだけどなぁ…」









「はい…ごめん…なさい」









「無理はしなくて良いからね?」









「ありがとう…ございます」










食事を置くと、看護師が病室を出ていく。










「食欲…無いのか…?」









「……………………」









「紗和…?」









「……………何を見ても…おいしそうって思えなくて……」








「え…?」









「今の会社に来て……久しぶりに…料理がおいしく感じて……何を食べても…おいしくて……幸せ…で……なのに……なんで……また…」










そう言うと涙が溢れてくる。









「紗和っ……」










直人さんが私のベッドに駆け寄った瞬間、またビクッとなった私は頭を抱える。










「え…違う…!そんなつもりじゃ……」










「………………………」










「ごめん…紗和………」










「…………………………」










少ししてドアを開く音が聞こえる。










「紗和…俺帰るから……怖い思いさせて…悪かった…」









「…………っ……」









何か言いたいのに言葉が出てこなかった。










〜♪










「…………はい」










「………間宮です」










「……どうした」










「紗和さんの事……裕…猫田から聞いて」










「………………………」










「………何が…あったんですか…?」










「…………お前には関係無い」










「………………………」











「紗和には俺が付いてるから。じゃ」










「待って…下さい」









「………………………」










「紗和さんから…あの時の話…聞いたんですか…」









「………………………」










「もしかして…それが原因で………」










「………もう良いだろ。切るぞ」











「すみません…でした」









「……………………」








「あんな事して…本当にすみません…佐々木さんも…紗和さんも傷付けてしまって…本当に…申し訳ございませんでした…」








「………………………」









「次日本に帰った時…佐々木さんの気が済むまで俺の事殴ってくれて良いので…もう二度と紗和さんにも会いません。あんな事させてしまった俺が悪いんです。紗和さんは何も悪くありません」









「……………………」










「これ…本当は言っちゃ駄目だと思うんですけど……紗和さんがあの時の話をした理由…なんですけど……」









「…………何だ」










「紗和さん…佐々木さんとの将来の事…考えて…隠し事はしたくないからちゃんと話す…って」









「…………」









「俺のせいで…紗和さんこんな事になって…本当にすみませんでした…それじゃ…失礼します」









そして次の日。









ガラガラガラ









「……直人…さん……」









「……ここに…座ってても…良いか…?」








「……うん……」








「……………………」








「……………………」










「紗和……」









「…?」









「俺の事…嫌いになったか…?」









「嫌い…?そんなわけない……」










「じゃ…俺の事…怖いか…?」










「…………怖くない……はず…なのに…私にもわからない…」










「……俺が…紗和を責めるような言い方したから…だよな……」









「責められて当然…私が悪いんだから……」









「紗和の過去知ってるのに…俺何であんな言い方……」









「違う…私が…弱いだけだから…いつまでも過去に縛られて……また発作起こして………なんで…私ってこうなんだろ…」









そう言うと涙が溢れてくる。










「紗和……」








私が顔を上げると、私に近づこうとしてそこにとどまる直人さんの姿があった。









「悪い…近付かないから……」










椅子に戻り座って両手で顔を覆う直人さんの姿を見て、私はとてつもなく心が痛んだ。










「直人…さん……」








「……………………」









「手…握ってくれないかな……」










私がそう言うと直人さんは顔を上げる。










「良い…のか……?」










「うん…」










すると直人さんがゆっくり私に近付く。









私が直人さんに手を差し伸べると優しく握ってくれる。








「平気か…?」








「……………」









「………手…震えてる……やっぱり怖いか……」









「……ごめん…なさい……手が勝手に……」









「いや…悪い…責めてる訳じゃないから…」









「………………………」








「…………それじゃ…俺そろそろ…帰るな…」









「……うん…」










直人さんは私から手を離し病室を出ていった。










そして次の日。









目が覚めると、そこに直人さんの姿はなかった。









何を期待してるんだろう私……










相変わらず食欲がなくほとんど病院食を食べられなかった私は、気分転換のために屋上へと向かう。











柵に両手を置き、しばらく走る車を眺めていた。










ガチャ









「紗和っ…!!!」










その声に私は振り返る。










「直人さん…?」










直人さんが走って私に駆け寄る。










そして私をギュッと抱きしめる。










「紗和…お願いだから…それだけは……」









「え…?」









「紗和に何もしてあげられなくて本当にごめん…どうすれば紗和が俺の事怖がらずに居てくれるか分からなくて……でも紗和の事変わらず愛してる……だから…変な事考えないでくれ頼むから…」










そのまっすぐな言葉に、気付けば私は涙を流していた。










「紗和ごめん…苦しいよな……」










その言葉に私は首を振る。











「直人さん…何か勘違い…してる…」











「え…?」










「私…景色…眺めてただけ………」










その言葉に直人さんが私から離れ顔を見つめる。











「へ…!?……あ………ご…ごめん…!」










「そういう風に見えちゃった…?」










直人さんは真っ赤になった目を擦る。









「………ごめん…今日も朝病室に行こうと思ってたのに…昨日中々眠れなくて…気付いたら昼で……それで花屋寄って急いで来たら紗和居なくて…」











早口で焦りながら喋る直人さんを私は見つめる。









「それで屋上来たら…昨日の紗和の様子見てたら何かずっと不安で…それで俺勘違いして……あ……さっきはごめんな…勢いで抱き締めてしまって…驚かせて悪かった……」










そう言うと私から距離をとる。










その必死な姿を見ていたら、私は自然と笑みが溢れていた。









「………?」









「ごめん…直人さんがそんなに早口で喋ってる姿…初めて見たから…なんか…おもしろくて…」










「………………………」










すると直人さんがため息をついてしゃがみ込む。










「あ…ごめんね……私のこと心配してくれてるのに……さっきの直人さんの言葉…すごく嬉しかった…」









私は直人さんに近付く。










「……良かった……」









「ん?」









「紗和がまた笑ってくれて…本当に良かった……」










そう言うと顔を上げて私を見つめる。










その表情に私は思わず直人さんをギュッとする。










「直人さん…ごめんね…心配かけて……」










直人さんの温もりに、久しぶりに心から安心した。










「無理してないか…平気か…?」









直人さんは私を気遣って、触れないように手を下ろしている。










「うん大丈夫…だから直人さんもギュってして欲しい…」









そう言うと直人さんは優しく私の背中に手を回す。










私達はそこでしばらく抱き合っていた。













直人さんと病室に戻ると、ベッドの上に花が置かれていた。










「あ…さっき慌てて病室出たから……」










直人さんが花を手に取る。









「これ直人さんが…?」










「少しでも紗和の気分が明るくなったら…と思って…」









「すごく綺麗…ありがとう……」










私は花瓶に花を飾る。










「それじゃあ……俺そろそろ帰るな」










そう言うと直人さんは病室を出ようとする。









「帰るの…?」










「……あんまり長居すると紗和に負担かけるからな…」









「………来てくれてありがとう…気をつけて…帰ってね」








私がそう言うと、直人さんは微笑み病室を出ていった。








その夜、少し食欲を取り戻した私は久しぶりに発作も起こさずぐっすりと寝られた。









翌朝、目が覚めると隣に直人さんの姿があった。










「え…直人さん…?今日仕事じゃ……」









「今日は少し時間に余裕あるから、顔見に来た。昨日帰る時紗和寂しそう…だったし」










「………………………」











「……悪い。俺が会いたかっただけ」










その言葉にキュンとなった私は直人さんに抱きつく。









「合ってるよ…私…昨日寂しかった…直人さんに早く会いたかった……」











「そうか……」










その後少しして、朝食が運ばれてくる。











「いただきます…」










私が食べていると、直人さんが微笑む。









「…?」









「食欲戻ったんだな…良かった」









そう言われて、私は普通に食事していたことに気付く。









「ほんとだ…私普通に食べられてる……」










そして涙が溢れてくる。










「ちゃんと…おいしく…食べられてる……」











すると直人さんが優しく背中をさすってくれる。










「俺も嬉しい……」









「ありがとう…直人さんのおかげ……」











そして無事退院した私は久しぶりに家に帰り、リビングに入ると詰まれたダンボールが視界に入る。









「家…出ようとしてたんだな……」








「………うん……」









すると直人さんが私を抱きしめる。










「ごめんな…追い詰めて……」










「………直人さんが謝る理由なんてないから……もう謝らないで……」









私は直人さんから離れ、顔を見つめる。










「直人さん…あの……話……」









私がそう言うと直人さんが優しく頭をなでる。











「それより退院したばっかりで疲れただろ。何か食べたい物あるか…?一応何でも作れるように材料は揃えたんだけど…」










そう言って冷蔵庫を開ける。











「………直人さん……私…あんなことしたのに……なんで…そんなに優しいの…?」










「………言っただろ?俺の気持ちは変わってないって」









「私がまた発作起こしちゃったから…それで……気を使ってくれてるなら…無理しないでほしい…」










「……………………」











「私…直人さんが別れてくれって言うならちゃんと別れる覚悟できてるから……だから…直人さんの正直な気持ち…教えてくれないかな……」











「…………………」












「私…これ以上直人さんに迷惑かけたくない……直人さんは優しすぎるから…また甘えちゃう…私なら大丈夫だから…また発作起こしてもそれは私の問題で直人さんは関係ないから……はっきり言って…?」








「…………………………」










「…………………………」










「…………紗和があの話を俺にしようと思った理由…聞いても良いか…?」











「…………それは……」











「……………………」











「………今さら何を言っても…言い訳にしかならないから……」










「……俺との将来…考えてくれてたから…」









「え…?」










「………悪い。間宮から聞いた」










「………間宮くんから…?」











「本当…なのか…?」










「…………うん………直人さんに嫌われてもいいから話そうって決めた……」











「…そうか……」









「でも直人さんが家を出ていって……本当に嫌われたって思ったら…思ってた以上に苦しくて…長期で有給休暇取るくらい私に会いたくないんだ…って……こんなに…直人さんのこと…大切なのに…傷付けて…私最低で……」










「……………紗和から…あの話聞いた時は…正直落ち込んだ」










「……………ごめん…なさい……」










「でも…紗和は軽い気持ちでそういう事する人じゃないって事も分かってる」









「……………………」









「間宮の事大切に思うが故の行動だろ?」









私は無言で頷く。









「それでもあの時は、一度紗和と離れて冷静になりたかった」










「………………………」










「だから…紗和の事嫌いになった訳でも無いし……何度も言うけど、俺の気持ちは変わって無い」









「……………」









「でも……これからは…どんなに大切な相手だとしてもそういう事して欲しく無いけど……」










その言葉に私は直人さんをギュッと抱きしめる。











「もう絶対しないっ…本当に…直人さんを傷付けてしまってごめんなさい……」










「…………俺の方こそ…また辛い思いさせてごめんな…」









「もう謝らないでってば……」










「…………あのさ…有給休暇の事だけど…あれはたまたまだから…」










「え…?」









「社長に消化するよう言われてて…タイミング悪かったよな…」










「そう…だったんだ…」










直人さんの言葉に安心していると私のお腹が鳴る。











「ごめんね…こんな時に……」










すると直人さんが笑う。











「お腹空いただろ。ご飯作るから待ってて」











直人さんが私から離れる。












「私も一緒に……」











「紗和は休んでろ。な?」










そう言うと優しく頭をなでキッチンへ向かう。










「ありがとう……」











私はソファに手を置き、直人さんの姿を見つめる。












するとキッチンで忙しなく動く直人さんと目が合う。










「…………紗和?」











「ん?」









「どうかしたか…?」










「うぅん何でもない」










「見られてると料理しづらいんだけど…」










「直人さんの姿見てたくて」









「……………………」










すると直人さんが私に近付きくるっと体を回す。










「………恥ずかしいからテレビでも見てろ」











私は笑いながら言われた通りテレビを見る。











数十分後。










「どれもおいしそう…ありがとう直人さん…!」










「張り切って作り過ぎた…」










そう言うと頭をかきながら笑う。









その言葉にキュンとなる。










「いただきます…!」








久しぶりの直人さんの料理はおいしすぎて心と体に染み渡る。









私が食べている様子を直人さんが微笑みながら見ている。









「なに…?」









「紗和が美味しそうに食べてるの見てるとこっちまで幸せになるな」










「だって…どれもおいしすぎるもん……」











「作った甲斐があるよ」










そう言うと嬉しそうに笑う。










「直人さん……」









「ん?」









「…………キス…していい?」









「キ…え?急にどうした……」










「ダメ…かな」










「いや…ご飯食べ終わってからでも……」










「ダメ…?」










私は直人さんの顔をじっと見つめる。











「……良い…けど……」











その言葉に私は立ち上がり、直人さんをギュッとハグする。










そしてキスをする。











「直人さん……愛してる」











「え…?あ、あぁ…」












「直人さんは…?」











「あ…愛してる……」












直人さんは戸惑いながらそう答える。











私は椅子に座り、またご飯を食べる。










「直人さん、今日一緒にお風呂入らない?」










「え…風呂…!?いや…風呂はちょっと……」










「直人さんも疲れたでしょ。私背中流してあげる」











「……や…大丈夫」










「遠慮しないでいいって」










「………いや……一人で平気」










「じゃあ…私の体洗ってくれる…?」










「……え…?」











その瞬間直人さんが自分のお箸を床に落とす。











「……何を…言ってるんだ…」










直人さんがお箸を拾いながらそう言う。











「………相変わらず可愛い反応するなぁ…直人さん」










そう言って笑う。










「だから…そうやってからかうのやめろって……」











「直人さん彼女とお風呂入ったことないの?」











「な…無いよ……」











「じゃあ私が初めてかぁ…」










「え…本気で一緒に入ろうとしてるのか…?」










「嫌…?」










「…恥ずかしく…無いのか……」










「直人さん…なんか変な想像してる?」










「し……して…無い……してる訳…無いだろ……」











やばい…可愛すぎる………











「じゃあなんの問題もないね!」










「…………分かったよ……一緒に入るのは良いから…体洗うのは自分で…してくれ…」











そして夕ご飯を食べ終えた私達はお風呂場へ向かう。










「紗和…やっぱり……」











脱衣場でそう言う直人さんの言葉を聞こえないふりをして服を脱ぐ。












「ん?何か言った?」










「さ、紗和……」











直人さんは私を見ないように後ろを向く。











「私先入ってるね?」










「あ…あぁ…」











私がお風呂場で待っていると少しして直人さんがドアを開ける。










私をチラっと見ると下を向き、私に背を向けて椅子に座る。











「直人さんなんでタオル巻いてるの?」











「いや…そりゃ…そうだろ……」











「じゃ…髪洗ってあげる…!」










「い…良いって……」










「髪ならいいでしょ?シャワーかけるよ…!」










「…………………」










直人さんは観念したのか言う通りに下を向く。











私はシャワーをかけシャンプーを手に取り直人さんの髪につけ洗う。










「どう?気持ちいい?」









「…………あぁ…」









「力加減大丈夫?」









「……大丈…夫……」









洗髪が終わると直人さんはすぐに体を洗い始める。











「直人さんタオル取らないの?」










「取るよ…取る…けど……」










そう言うと直人さんがチラっと私を見る。










「……な…何でこっち側…向いてるんだよ……」










「別にいいじゃん…直人さん意識しすぎじゃない?」









「………恥ずかしい…からこっち見ないでくれ……」









「……わかった」










私が笑いながらそう言うと直人さんは少しして巻いていたタオルを取り、急ぐように体を洗う。











そしてすぐにタオルを巻き直す。











「じゃ…俺先に出るから」











振り返らずにそう言うとさっさとお風呂場を出ていく。











少しして私もお風呂を出ると、直人さんはリビングのソファに座っていた。











「直人さんお風呂出るの早すぎ…!」











「いや…だって……」










「一緒に浴槽浸かったりしたかったのに…」










「な…何言って……」










「なに?私変なこと言った?」










「いや…ずっと…変だぞ……」











「…………大好きな人とお風呂に一緒に入りたいってそんなに変かな?」











「……紗和は……今までもそういうこと…あるのか…?」










「……まぁ…私から言ったわけじゃないけど…一応…?」










「……そうか」










「……あ、嫉妬した?」










「いや……すごいな…と思って…今の若い子は……」










直人さんのその言い方に私は思わず笑ってしまう。











「なにそのおじさんっぽい発言……」










「いや実際そうだろ…」











その言葉に私は直人さんをギュッと抱きしめる。











「…………だって…直人さんとひと時も離れたくないんだもん…」










「え…?」










「それに…直人さん全然おじさんじゃないよ…」










「いやどう見たって……」










「だってお風呂場で見た直人さんの体…色気やばかったもん…」










私がそう言うと直人さんが私から離れる。










「……見てたのか…!?」










「当たり前じゃん…そのために一緒に入ったんだから…」










「な…何だその理由は………」











「直人さんだって私のこと見てたくせに……」











「み…見ないように努力はした……」











「努力って……別にお互い初めて見るわけじゃないんだから……」











そう言って私は笑う。











「………と…とにかく…もう風呂は勘弁してくれ……」










「えーどうしよっかなぁー」









「紗和……」








そんな直人さんが愛おしくて私はまたギュッと抱きしめた。

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