進展
部屋に帰ってきた私は、間宮くんに言われた通りすぐにシャワーを浴びた。
そのあとベッドに横になっても全然寝付けなくて、何度も体勢を変える。
全然…眠れないな……
そして朝方。
いつの間にか寝ていた私は寒さで目が覚める。
「いた…」
頭もズキズキする。
まさか……
熱を計ると40度近くある。
スマホを確認すると直人さんから着信が入っていた。
そっか…昨日連絡するって言ってしてなかったから……
私は連絡する気が起きず、その日は安静にして過ごした。
しかし次の日も熱が下がらず、私は会社に連絡をし休みをもらった。
とりあえずご飯を食べようとベッドから起き上がり、キッチンの方へ向かう。
ーAM7:20ー
「間宮どうした…?こんな朝早く……」
「……紗和さんと何があったんですか」
「え…?」
「土曜日、紗和さん一人で雨に濡れて…目も真っ赤で…多分泣いてました」
「雨に…!?」
「また紗和さんに何かあったらどうするつもりですか!?あんな状態の女の子が一人で居たら変な男に声かけられてもおかしくないですよ!?」
「………………………」
「何回紗和さん傷付けるんですか?紗和さんの事…ちゃんと分かってあげてるんですか?何を求めてるか」
「それは……」
「紗和さんの事大事にしたいのは分かります。でも紗和さんの気持ちも…もっと考えてあげて下さい」
「……そう…だよな…」
「紗和さん、今日体調不良で休むってさっき連絡がありました。雨に濡れたせいじゃないですか」
「だから電話……出なかったのか……」
「……ちゃんと…紗和さん守ってあげて下さい。俺、まだ紗和さんの事諦めてないんで。その気になればいつでも奪いますよ」
「奪う…!?お前何言って……」
「じゃ、俺行くんで」
「おい…間宮………」
バタンッ
〜♪
「もしもし…」
「良かった…やっと繋がった…体調はどうだ…?」
「え…どうして体調のこと……」
「間宮から…聞いた」
「そっか……大丈夫……熱があるだけだから……連絡できなくて…ごめんなさい……」
「いや…この間は……悪かった」
「……私の方こそ…ごめんなさい」
「……仕事終わったらすぐ行くから」
「え…でも……」
「何か必要な物あるか?」
「大丈夫…だよ…申し訳ないし……」
「必ず行く」
「…………………」
「暖かくして、ゆっくり休め」
「うん…ありがとう……」
直人さんの優しさに胸がキュっと痛くなった。
PM1:00。
ピンポーン
ベッドに横になっていた私は、起き上がり玄関へ向かう。
「え…直人さん…?」
ガチャ
「紗和…体調は…?」
「あ…うん…熱はまだ高いけど…そこまできつくはないかな…」
「良かった……」
そう言うと直人さんは私を抱きしめる。
「直人さん…?仕事は……」
「午前中で終わらせた」
「えっ!?大丈夫…なの…?」
直人さんの仕事量を考えると午前中で終わるはずがない。
「大丈夫だから気にするな」
私の為に…必死で仕事を終わらせたのかと思うと申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが混ざって感情がよくわからない。
直人さんがゆっくり離れる。
「ご飯は食べたか?」
「あ…うん…さっきお昼ご飯食べて薬飲んだところ…」
「そうか」
「直人さん、その袋……」
「とりあえず…必要そうなもの買ってきた」
パンパンの袋の中には飲み物以外にもたくさん入っていた。
「ありがとう……」
「まだ熱あるんだろ…?ベッドで寝てた方が良い」
「でも…」
直人さんともう少し一緒に居たい……
「どうした…?」
「あ…うぅん、何でも…」
すると直人さんが私に近付いてキスをする。
「え…!?」
「俺も傍に居るから…」
「風邪…移るよ…?」
「そんな事どうでも良い」
「…移っちゃ……ダメだよ………」
不意打ちのキスはずるい。
さらに高熱が出そうなくらい体が熱くなる。
私は言われた通りベッドに横になり、直人さんもベッドの近くに座る。
「紗和…」
「何…?」
「ごめん……俺のせいで…こんな……」
「え…どういう意味…?」
「………間宮から…聞いた。紗和が雨に濡れて泣いてたって…」
「えっ、間宮くんが!?なんで……」
「俺…紗和の事守るって言っておいて…本当にごめん」
「直人さんのせいじゃない……私が勝手に雨に濡れちゃっただけだから……」
「でもそうさせたのは俺だろ…」
「私が…自分の気持ち…押し付けちゃったから……直人さんは今日だって…いつだって優しくしてくれるのに…」
「……何も無くて…本当に良かった」
そう言うと優しく頭を撫でてくれる。
「………やっぱり…私、直人さんのこと大好きだな…」
「え…?」
「直人さんにこうやって頭撫でられるだけですごく安心する」
「そ、そうか…」
私がそう言うと直人さんは頭から手を離す。
「直人さん…もしかして照れてる?」
「いや…」
そんな直人さんも愛おしい。
「直人さん…今日いつまでいられる…?」
「……ずっと傍に居る」
「ほんと!?じゃあ直人さんの手料理が食べたい…!そしたらすぐに治るかも…!」
「…分かった。じゃあ気合い入れて作るから」
そう言いながらまた優しく頭を撫でてくれる。
そして夜。
「おいしい…!直人さんの料理やっぱり最高…!」
「…それだけ食欲あれば大丈夫だな」
ご飯を食べ終え、私はお風呂に入った。
「すっきりした…!直人さんも入る?」
「え!?何で…」
「だって…今日泊まって……」
「え…?」
「あ…泊まらない…よね…ごめん……」
「いや…泊まっても良いけど…風呂は…大丈夫」
「無理…してない…?」
「いや…大丈夫」
しばらくして私は寝る準備をする。
「あの…直人さん……」
「ん?」
「直人さんも…隣で寝てくれないかな……」
「隣で…?」
「ダメなら良いんだけど…直人さんがそばに居てくれたらぐっすり寝られるかな…って」
「………分かった」
そして、私と直人さんは隣に並んでベッドに入る。
「直人さん…スーツのままで寝るの…?」
「着替え…無いしな」
私は直人さんと体が触れるくらいそばに寄る。
「私の服…貸そうか?」
「いや…このままで大丈夫」
「そっか……」
私は横を向き、直人さんの胸に手を置く。
「直人さんの体温…落ち着く」
「……………………」
「ごめん…なさい…わがまま…言って……」
「いや……」
全然眠れていなかった分、急に睡魔が襲う。
「直人さん……」
「ん…?」
「この間は…ごめんなさい……」
「……………」
「私…直人さんの気持ちも……考えずに…ごめん…なさい……」
そして私はいつの間にか寝ていた。
「ん…」
目が覚め横を見ると直人さんがいない。
ガチャ
私は部屋を出て、直人さんを探す。
直人さんはソファに座っていた。
「直人さん…起きるの早いね…?」
「……あんまり寝られなくてさ」
「えっ…私…寝相悪かった?」
「いや…寝相が悪いというか……紗和がすごいくっついてくるからさ……」
「ほんとに!?ごめんね、寝づらかったよね……」
「……いや……体調は?」
「すっごく良い!直人さんのおかげ…!」
「そうか…良かった」
そう言って微笑む。
「なんかめっちゃ良い匂いする〜!」
「朝飯作ったから」
「え!?ありがとう…!」
私はルンルンで顔を洗い、リビングに戻る。
「いただきまーす!」
「…紗和……あのさ…体調が完全に治ったら…ご飯行かないか…?」
「うん…行きたい!」
そして土曜日。
私と直人さんはレストランに来ていた。
「今日って何かあったっけ?」
「別に…何も無い…けど」
入ってみると記念日に行ったレストランに引けを取らないくらいの高級そうなレストランだ。
「えっ………めっちゃおいしい…!」
「うん、美味いな」
「直人さんってこういうオシャレな所めっちゃ知ってるよね」
「まぁ……大人だからな」
「それもう良いから…!」
そう言って笑う。
ご飯を食べ終えた私達はレストランを出る。
「紗和、今日…俺の家泊まっていくか…?」
「えっ良いの!?泊まってく…!」
直人さんの家に着いた私達は部屋へと入る。
「やっぱり直人さんの部屋落ち着く…!」
「適当に座ってて」
「うん…!」
お風呂に入り、私がソファでくつろいでると直人さんが飲み物を持って来てくれる。
「ありがとう…!」
「紗和…これ」
「ん?」
直人さんの手元には細長い箱がある。
「何これ…?」
「この前渡せなかったから……」
「えっ…ありがとう……!開けても良い……?」
「うん」
箱を開けるとネックレスが入っていた。
「わ…綺麗…ありがとう…!実は私もプレゼント用意してたんだけどこの間渡せなくて…今度渡すね…?」
すると直人さんがネックレスを取り私に付けてくれる。
私は付けてもらったネックレスを手に取り眺める。
「ほんと綺麗……」
すると直人さんにゆっくり後ろから抱きしめられる。
「直人さん…?」
直人さんは私の肩をゆっくりと自分の方へ回しキスをする。
いつも以上に優しいそのキスに頭が回らなくなる。
「直人…さん……」
すると直人さんが私を抱き抱える。
「え…?」
そして寝室のベッドに優しく下ろしてくれる。
「………………………」
私は戸惑いながら直人さんを見つめる。
直人さんもベッドに座り、私の頭を優しく撫でキスをする。
直人さんの甘い吐息に溺れそうになる。
そして顔をあげ至近距離で真剣な顔で私を見つめる。
「もし紗和が嫌なら言って…絶対無理にはしないから……」
直人さんのその言葉に私は本心を口にする。
「………全然…嫌じゃない………」
こうして、私は直人さんと初めての朝を迎えた。
「ん……」
目が覚めると隣に直人さんが寝ている。
その光景がなんだか不思議で、すごく嬉しかった。
私は体を起こし、直人さんの寝顔を見つめる。
その寝顔を見てたら愛おしくてたまらなくなりキスをする。
すると直人さんが目を開けバッと起き上がる。
「え…今何か…したか…!?」
「キス…したけど……」
「な、何で………」
「……寝顔が可愛かったから?」
「かわ……!?………顔…洗ってくる」
ベッドから立ち上がろうとする直人さんの腕を掴む。
「ど、どうした……」
「もう少し……一緒にいたいんだけど……」
「え……」
後ろを向いてベッドに座ってる直人さんを私は後ろから抱きしめる。
「直人さん…腹筋すごいね」
「ふ、腹筋…?」
「うん…腹筋……」
私はそう言いながらシャツの下から腹筋を触る。
「ちょ…紗和…!やめろって…」
直人さんが私の腕を引き離す。
「直人さんなんかテンション低くない…?」
「お前のテンションがおかしいって………」
そう言うと立ち上がりさっさと寝室から出ていく。
ご飯を食べている時も直人さんは全然私と目を合わせない。
「直人さん…?どうかした…?」
「………いや……何でも…無い」
朝食を食べ終え、私は食器を洗う。
すると直人さんが隣に来て、手伝ってくれる。
「紗和…あの…さ」
「ん?」
「昨日………本当に大丈夫だったか…?」
「え……何が?」
「その……」
「ん…?」
「紗和が無理してたんじゃ無いかって……」
「え…なに……どういう……」
「紗和を傷付けたくないから……」
その言葉に私は食器を洗っている手を止め、直人さんの顔を覗き込む。
「傷付けたくないって……どういう意味?」
「いや…」
私は持っていた食器を置く。
「直人さん…ちょっと向こうで話さない?」
そう言ってソファに移動する。
私は直人さんの顔をじっと見つめる。
「直人さん…私…傷付いてなんかないよ…?」
「……………」
「直人さん…ちゃんと言ってくれないと私わからない…どういう意味…?」
私がそう言うと直人さんは少し黙り込んだ後口を開く。
「………紗和は……過去に色々あっただろ……そういう……事に…嫌な思い出があるんじゃないかって思うと……俺紗和の事…傷付けたくないから……」
「……………………」
その意外な言葉に無意識に涙が溢れる。
「ごめん…紗和………」
私は首を横に振る。
「直人さんがそんなこと思ってくれてたなんて……全然…知らなかった…なのに私……勝手に勘違いして……」
「……紗和の気持ちは知ってた…けど…傷付けたくない気持ちが勝って…あんな態度取って結局紗和を傷付けてしまって……ごめんな…」
「うぅん……私の方こそ…直人さんの気持ちに気付いてあげられなくてごめんね……」
「いや………これは俺の問題だから……」
気持ちが高ぶった私は直人さんに思いっきり抱き着く。
「私…あんな風に優しいの……初めてで……直人さんの愛情がすごく伝わってきて……愛されてるんだってすごく実感した…」
「……………………」
「直人さんは…これから先も…私と…しないの…?」
「え…?」
私は直人さんの顔をじっと見つめキスをする。
「もう…しないの……?」
私は直人さんをゆっくり押し倒し馬乗りになる。
「紗和……ちょ………」
「私は…直人さんだったら…いつでも…良いよ…?」
「いや、何言って…」
「なんなら…今から…する…?」
「いやいや……ちょっと……待て……」
〜♪
「紗和……電話……鳴ってるから……」
私はため息をつきながら直人さんから離れる。
電話をしてる後ろ姿でさえ愛おしい。
私はソファに両腕を置き、直人さんを見つめる。
「うん……それじゃ……」
直人さんが後ろを振り返り、私と目が合う。
「な…何……」
「直人さんってさ…色気…すごいよね」
「い、色気!?」
「大人の色気…?付き合う前から思ってたけど…付き合ってからさらに色気感じるんだよね」
「何を…言ってるんだ……」
直人さんがソファに座る。
「他の女の子の前でその色気出して欲しくないなぁ…」
「そんな事言われても…自分に色気があるなんて思った事ないからな…」
「そっかぁ…」
そう言いながら直人さんの背中に手を回す。
「さっきの続き…する?」
「いやだから…というか…紗和…そんなキャラだったか…?」
「そんなキャラって?」
「いや……なんか…積極的…っていうか……」
「だって…直人さんのこと…愛おしくてしょうがないんだもん…」
「………良くそんな……恥ずかしい事を……」
そう言うと直人さんが両手で顔を覆う。
「直人さん…だからだよ…?愛されてるってすごく感じるから私ももっと愛したいし…なんか今直人さんに触れたくてたまらないし…」
「ふ、触れたいって…」
直人さんがソファから立ち上がり私から距離を取る。
「そういう反応とかたまらなく可愛い……」
そう言って笑う。
「もう良いから…やめろって……」
そんなくだらないやり取りで一日が過ぎていった。
そして次の日。
「間宮くん、おはよう!」
「おはようございます」
「間宮くん…この間はほんとにありがとね」
「いえ。それで佐々木さんと仲直り出来たんですか」
「うん…お陰様で……!」
「………それなら良かったです。紗和さんの笑顔が見られて安心しました」
「ありがとう…!」




