遊園地
それから数日後。
私達は遊園地に来ていた。
「私、遊園地めちゃくちゃ久しぶりです…!」
「俺いつぶりだろう…小学生とか?」
「じゃあかなり久しぶりですね…!まずは……ジェットコースター乗りましょ!」
私は佐々木さんの手を引き列の後ろに並ぶ。
「結構並んでますね…」
「そうだな……」
「あ、佐々木さん次何乗るか決めておきましょ!」
「もうか?」
「ほら、遊園地広いからどれ乗るか迷いそうじゃないですか…!」
そう言って遊園地のマップを広げる。
「……青木、楽しそうだな」
そう言って佐々木さんが微笑む。
「だって…初デートですよ?しかも佐々木さんと…!楽しいに決まってます!」
「そ、そうか……」
私が笑顔でそう言うと佐々木さんが照れたように笑う。
「あ、そうだ佐々木さん」
「ん?」
「私達、付き合ってますし…呼び方変えません?遊園地でずっと名字呼びも変ですし…」
「確かに…そうだな」
「佐々木さん、何て呼ばれたいですか?」
「うーん…何でも良いけど…」
「じゃあ…直人さん…で……」
「………青木は?」
「私は紗和って呼ばれたいです…!」
「紗和……」
「わ…なんか佐々木さんに呼ばれるとキュンってします!もっと呼んで下さい…!」
「そう言われると呼び辛いだろ……」
「なんか…名前呼びってカップル感増してドキドキします」
「………敬語もおかしいんじゃないか?」
「あ…確かに……」
「あ、前進んだぞ」
「はい…あ……うん!」
それから数十分後、ようやく私達の番がきた。
「やば…緊張してきた…!」
「お待たせしました〜!こちらのイスに座ってくださーい!」
私達が座ってすぐにジェットコースターが進みだす。
「それでは、行ってらっしゃーい!」
数分後。
「…………やばーい!めっちゃ楽しかった〜!」
あの緊張はどこへやら、乗ったら楽しすぎてテンションが上がる。
「ジェットコースター、すげーな……」
「まだ一個目ですよ…?次行きましょう!」
そう言って私はマップを見ながら歩いていく。
「あ…!次はこれです!」
私達は次々とアトラクションをまわっていく。
気付けば外はすっかり薄暗くなっていた。
「紗和…ちょっと休憩しないか?」
「そうですね…!私飲み物買ってきます」
「いや、ベンチ座ってて。紗和何が良い?」
「あ…じゃあ…オレンジジュースで……」
私がそう言うと直人さんは近くにある売店へ歩いて行く。
何度か直人さんの私服を見てるのに、今日は一段とカッコよく見える…
そんな姿をドキドキしながら見ていると、直人さんが飲み物を抱えて歩いてくる。
「はい」
飲み物を手渡され直人さんが隣に座る。
「あ、ありがとうございます…」
「どうした?」
「い、いえ…なんでも……」
「紗和……」
「えっ!?」
ふいに名前を呼ばれて、さらにドキドキする。
「……ずっと敬語になってるぞ」
「え!?あ、そういえば……」
直人さんが笑っている。
「頑張りま……が、頑張る」
「にしても…遊園地ってこんな疲れるのか……」
「色々連れ回しちゃってごめんね……」
「紗和は全然平気そうだな。年の差感じるな……」
「そんなことないよ…!私も少し疲れたし……」
と気を遣って嘘をつく。
「………………………」
「………あれ、また乗るのか?」
「……え!?あ、大丈夫…」
「乗りたそうな顔してたけど」
無意識にジェットコースターを見ていたのがバレた。
「そんな顔してないよ…」
「これ飲んだら乗りに行くか」
「え、うぅん大丈夫だよ!直人さん疲れてるでしょ」
「……俺ももう一回乗りたいし」
「ほんとに…?」
「ほんと、ほんと」
「じゃ…乗りたい…!」
「やっぱ乗りたかったんだな。……じゃあ行くか」
そして私達は二回目のジェットコースターを楽しんだ。
「もうだいぶ暗くなったね……」
「だな…そろそろ帰るか……」
「うん………あっ!最後にあれ乗りたい!」
私は観覧車を指さす。
「観覧車……よし、行くか」
私達は観覧車に乗り込む。
他の乗車客もカップルだらけだ。
「わ…夜景めっちゃ綺麗…!観覧車からみる夜景って癒されるよね…」
私は外の景色を見ながら言う。
「確かに…なんか癒されるよな」
直人さんも同じように外の景色を見ている。
「隣…行っていい?」
「あ、うん」
私は直人さんの隣に座る。
頂上付近に来た所で、外の景色を見ている直人さんの袖を引っ張る。
「ん?」
直人さんが振り向くと私はゆっくりと目を瞑る。
「え…?」
「………………」
私は目を瞑ったままじっと待つ。
少し間が空いた後、直人さんの唇が私に触れる。
目を開けると直人さんはまた外の景色を見ている。
きらびやかな夜景のせいか、観覧車の中という空間のせいか、もっと直人さんに触れたいと思った。
「ねぇ…直人さん………」
直人さんが振り返ると私はまた目を閉じる。
「…………紗和…………」
その声色で直人さんが困っているのがわかる。
唇に触れてすぐに離れる直人さんに私はさらにねだる。
「もっと……長く…………」
「え……!?」
戸惑っている直人さんの顔を見つめ、また目を瞑る。
しばらく沈黙が続く。
そして直人さんは私の頬をそっと包み、気持ちに応えてくれた。
「…っ」
私はギュッと直人さんの袖を掴む。
すると直人さんはパッと私から離れる。
「あ、ごめん…大丈夫か…?」
「あっ…うん……」
私を見つめる直人さんから目を逸らし、外の景色を見る。
直人さんの愛が伝わってきて嬉しかったのと同時にものすごく気恥ずかしくなった。
めちゃくちゃ…上手だったから。
大人の色気を感じて、直人さんに溺れそうだった。
普段の直人さんがそういう雰囲気を出さないからか、余計にドキドキし過ぎて心臓がやばい。
「ご、ごめんね、急に変なこと言って…雰囲気のせいかな……?」
「いや………」
お互い景色を見ながらそう言う。
遊園地を出た私達は、ご飯を食べ家と向かって車を走らせる。
「じゃあ……また月曜日にな」
「うん…送ってくれてありがとう」
直人さんを見送り、マンションのエレベーターに乗る。
さっきの感触がまだ残っている気がする。
私は自分の唇に触れる。
今別れたばかりなのに、もう直人さんに会いたいと思ってしまう。
こんな感情初めてでどうしたらいいのかわからない。
その日は直人さんのことで頭がいっぱいでなかなか寝付けなかった。




