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呪われた性別不明の令嬢ですが、知らぬ間に溺愛されていたようです  作者: 白まゆら


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感動の再開からの

「そんな楽しいことがあったのなら、どうして私も連れて行ってくれなかったのだ」

 涙目のイブニーズル侯爵ことお義父様が、私達の前でお義母様に詰め寄っていらっしゃる。



 夕食後、本日の街での事件を報告していたのだが、どうやら揉め事を楽しい事と勘違いされているようだ。

 いや、分かっていて楽しいと判断されているのかもしれない。

 凄腕の元騎士団長様だしね。

 お義母様はそんなお義父様に呆れたようで、大きな溜息を吐いた。

「仕方がないじゃない。貴方、城にいて屋敷にいなかったのだもの」

「国王陛下に呼ばれてたんだよぅ~。ケリエルが関っている事件は、本当に騎士団を動かさなくていいと思うかと相談されていたんだ。王太子殿下はケリエルと遊べて楽しいから、騎士団はいらないとか言っちゃって、騎士団もその様子にちょっと拗ねちゃってるしさあ。でも正直、魔法騎士団が動いているなら騎士団、邪魔だしね」

「え、邪魔なんですか?」

 お義父様の言葉に私は吃驚して、つい声を上げてしまった。

 騎士団が邪魔って、流石にそれはちょっと言い過ぎではないだろうか。

 私の疑問に、お義父様の代わりに魔法使いであるお義母様が答えてくれた。


「まあね。魔法使いは普通の人より記憶力が良いのは知っているかしら?」

「はい。先日、カーターに教えてもらいました」

 私がそう返事をすると、お義母様は知っているならいいのよと話を続けてくれる。

「そういうことからも分かるように、魔法使いは普通の方より頭が良いのね。その上、騎士団としてそれなりに剣の腕も認められているということは、魔法騎士団そのものが、それなりに精鋭ぞろいということになるわ。騎士団はどちらかというと、考えるのは苦手な方が多いから」

「素直に脳筋と言っていいよ。まあ、ケリエル自身が仕事に熱を入れるような人間ではないからな。普段のいざこざは騎士団に任せきりだったのだが、今回に関しては魔法研究所も関係しているということで、王太子殿下が個人的に魔法研究所の所長と魔法騎士団の団長を動かしたというわけだ」


 お義母様に続いてお義父様が説明してくれたのだが、お二人の話では魔法騎士団はかなり優秀な部署ということになる。

 その上のトップがケリエル様ということは、ケリエル様って実は私が思っている以上に、凄い人⁉

 それなのに偉ぶることもなく、誰にでも優しいケリエル様はなんて出来た方なのかしら。

 私が改めてケリエル様に惚れ直していると、お義父様の話を聞いたお義母様がクスクスと笑う。

「要するに、気心知れた実力者同士で動いているのよね。ギプラの元居た騎士団には悪いけど、それは邪魔されたくないわよね」


「そういうわけでもないのですけど、一応魔法研究所の職員が関係しているので内密に動ける方が後々いいという殿下の判断で、騎士団は排除しています」


 談話室で話している私達の耳に、久しぶりに甘いささやきにも似た優しい声が聞こえてきた。

 内容はちょっと、アレだけど。


 私は勢いよく立ち上がる。

 談話室の扉のそばに見慣れた、けれど久しぶりに拝見した美丈夫様のお顔が優しく微笑んでいた。

 ふわっと両手を広げられたので、私は吸い寄せられるかのように、その腕の中に飛びついた。

 ケリエル様、ケリエル様、ケリエル様だ~~~~~!

 ゴロゴロと擦り寄る私をギュッと抱きしめたまま、ケリエル様も私の頭に頬を摺り寄せている。

 ベッタァ~っとくっついている私達に、ハバスさんの咳払いが聞こえてくる。

 あ、またやってしまった。

 私は慌ててケリエル様から離れようとするが、それを許してくれるケリエル様ではない。

 彼の腕の中からハバスさんをチラリと見て『ごめんなさい』と口パクする。

 ごめんなさい、ハバスさん。はしたないのは十分、分かっています。けれど久しぶりに会えたのですから、少しだけ許してください。

 ケリエル様だけではなく、正直私もまだ離れたくないのだ。


 そうして暫く抱き合っていたのだが、いきなりケリエル様がフワリと空に浮かんだ。

 え?

 地面に置いてけぼりで驚く私と、浮かんだまま不貞腐れるケリエル様。

「何をするのです、母上?」

「いい加減、長いわ。後は二人きりの時にして」

「では、このまま二人で部屋に下がります」

「昼間の説明を聞きに、帰って来たのではないの?」

「明日でもいいです」

「欲を優先させるんじゃないの。仕事を先に済ませなさい」

「久しぶりの褒美なのに。私、滅茶苦茶頑張ってたんですよ」

「だったら、もう少し頑張りなさい」

「鬼畜」

「何?」

「いえ、なんでもないです」


 ケリエル様が一瞬、窓の方まで移動したが、すぐに戻って来てホッとした。

 そして私の前にゆっくりと降ろされた。

 お義母様の魔法だと気付いた私は、青い顔で盗み見る。

 もしかして、ケリエル様を窓から捨てようとされましたか?

 そうだとしたら、いくらここが一階とはいえ、ちょっと怖いです。

 私はお義母様だけは怒らせないようにしようと、心の中で固く誓った。



「ペルから、昼間の件は全て聞きました。カーター、クリス、犯人逮捕の協力ありがとう。助かったよ」

「いえ、ケリエル様のお役に立てたのであれば良かったです」

「うん、やっぱりクラリウスはクリスだね」

「あ」


 昼間の件を話そうと改めてソファに座りなおした私達は、当然のように私の横に座るケリエル様に笑顔で労われ、にっこりと微笑み返した。

 すると、あっさりと変装していたことがバレた。

 あ、あれ? とオドオドする私は、お義母様とカーターが片手で顔を隠すのを目にする。

 これは、やっぱりまずかったですかね?

 ケリエル様は「さぁてと、クリス」と名前を呼んで、私を自分の膝の上に座らせる。

 あの、これ、逃げられなくて、すっごく怖いです。

 ケリエル様は私の金の髪をするりと撫でながら「私のいない間に、この綺麗な髪を隠して遊んでいたんだね。外に出たのは、今日で何回目だったのかな?」と笑顔でたずねてくる。

 何故かプルプルと震える私の体。


「あ~っと、ケリエル。私も一緒だったのよ」

「知っています。私はただクリスの口から、本当のことが聞きたいだけです」

 お義母様の擁護も笑顔で跳ね飛ばし、私に迫ってくるケリエル様。

「そ、そんなにいけないことでしたか?」

 私が震えながら答えると、苦笑するケリエル様。

「いけないことというわけではないが、寂しくはあるよね。私の知らない所でクリスが変装なんかして出かけていたのかと思うと」

「でも、クリスティーンとしてでは外に出られなかったので……」

「それは分かるけど、私がいないのにフラフラと外に出ていたら危ないでしょう。今日みたいなことがあるわけだし」

 ケリエル様が眉を顰めるのを見て、私は首を傾げる。

 そんなに心配されるほどのことは、していないと思うけど?

「カーターもお義母様もいてくれました。危ないことはしていませんよ」

「そうかな? 危ないこと、したでしょう? 男に捕まっていた女性を助け出したと聞いたよ」

 私が恐怖をかなぐり捨てて、必死でとった行動を言われているのだと分かった私は、安心してもらうように、その場の状況を説明した。


「それは、カーターが男性を押さえこんでくれたから。その隙に女性をその場から離しただけです。捕えるのに邪魔にもなると思ったので。男性が自由なら、そんなことはしていません。安全は十分、保障されていました」

「クリスがそんなことしなくても、魔法使いが三人もいたんだ。君は動くべきではなかったと思わないか?」

 それでも危ないというケリエル様に、今度は私が眉を顰める。

「……ケリエル様は、私が余計なことをしたと仰るのですか?」

「そうは言ってないよ。けれど危ないだろう」

「確かに私は何もできません。弱いです。けれど、それでも、頑張りたかったんです」

「私がいない所で頑張るのは、勘弁してほしい」

「!」

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