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呪われた性別不明の令嬢ですが、知らぬ間に溺愛されていたようです  作者: 白まゆら


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悪友との付き合い方

 ペルの言葉に驚いた私は、そのまま両肩を思いっきり鷲掴みにした。

「いってえぇぇぇ!」

「痛くない。それよりどこで見た? さっさと吐け!」

「痛いに決まってんだろ、この馬鹿騎士! 早く放せ。骨が折れる」

 少し肩を掴んだだけで喚くペルに、私は仕方なく肩から手を離した。

 途端に両肩を自身で撫でるペル。

「つぅぅぅ~、力加減考えろ。こっちは研究職一筋なんだ。普段鍛えている騎士と一緒にするなよ」

「大げさだ。私は騎士とはいえ魔法騎士だ。体ばかり鍛えている脳筋騎士とは違う。そこまで痛いはずはない」

 力馬鹿な騎士みたいに言われてムッとした私が言い返すと「謝る気、零かよ!」と喚かれた。

 面倒くさくなった私は「すまない」とだけ言っておく。

 でないと、拗ねたペルがいつまでたっても呪いのことを話しそうにないからだ。


 私の殊勝な態度を見て「全く……」とブツブツ文句を言いつつも、ひとまず溜飲を下げたペルに「で?」と話の続きを催促すると、ものすごく嫌な顔をされた。

 ちゃんと謝ったではないか。しつこいぞ。

「君という男は本当に……。まぁ、十年も調べているのだから仕方がないけれど。ただ期待はしないでくれ。僕はただ見覚えがあるような気がすると言っているだけで、はっきりとは思い出せていないんだ」

「チッ!」

 思わず舌打ちすると、ギロリと睨まれた。

 そのまま言いそうになった「使えねぇ」という言葉は、ゴクリと飲み込んだ。

 私は気を取り直すように、微笑んでみる。


「仕事なんかしなくていいから、集中して思い出してほしい。以前に見た、誰かの魔法の癖とかじゃないのか? ペル、君ほど優秀な奴を私は知らない。君だけが頼りなんだ」

 こちらはニッコリ笑って下手に出ているというのに、ペルはしらけた表情で私を見る。

「……う~わぁ、そんな胡散臭い笑顔初めて見た。だが、そうだな。確かに誰かの魔法だったのかもしれない。うん、ちょっと待っていてくれ。頑張って思い出してみよう。後、仕事はしないといけないから、すぐには返事できないよ」

「何故だ? クリスの問題以上に大切なものがあるとは思えない」

「それは君の思考。一般は違う。とにかく、面倒くさいから一度帰ってくれ」

「ペル!」

「じゃあ、今の婚約者殿に会わせてくれるか? もう一度見れば、今度はハッキリ思い出すかもしれない」

「邪魔をしたな。また来る」

 踵を返して立ち去る私に、後方からペルの「結局会わせないのかよ!」という叫びが聞こえたが、気にしない。

 まぁ、もう少し待って息詰まってしまうようならば、一度くらいは会わせることも視野に入れておこう。

 基本は会わせない。これ一択だ。



 城にある魔法騎士団の自分の部屋へと戻った私は、扉を開けて中を見た途端、勢いよく扉を閉めなおした。

 うん、見なかったことにしよう。


「あ、団長。お帰りなさい」

「食堂でお見掛けしませんでしたが、お昼お食べになりましたか?」

「できれば後で少しだけお時間いただけませんでしょうか? 魔法の調整が上手くいかなくて……」

「ああ、今から見てやるよ。行こうか」

「「「本当ですか。やったぁ~」」」

 可愛い騎士団一年の三人組に声をかけられて、鍛錬場へ向かう私に部屋から勢いよく飛び出してきた副団長のサラン・コードランが飛びついて来る。

 私がかわすと三人組に体当たりしそうだったので、我慢して受け止めた。

 サランがそれを読んでわざとやったのは、明白。

 その光景に驚く三人組の横で「逃がしませんよ~」と怨念でも込めそうな雰囲気でサランが上目遣いで見てくる。


「……いつ、現れた?」

「かれこれ一時間程前です。私の昼休憩返してください」

「分かった、戻る。お前は食堂へ行ってこい」

 私が交代すると言うと、サランはやっと解放されると安堵した。

「え~、団長。魔法看てくれるんじゃなかったんですか?」

 私に稽古をつけてもらえると喜んでいた三人組は、あからさまに文句を言う。

「昼食を食べたら、私が看てやる。先に鍛錬場へ行っていろ」

 サランがそう言うと、ペコリと頭を下げて三人組はその場を後にする。

 去り際「ちぇっ、団長が良かったな」というなんとも可愛い憎まれ口を聞いたサランに「聞こえているぞ」と叫ばれ、慌てて逃げ去った。

「怖いぞ、サラン」

 苦笑しながらそう言うと「貴方には言われたくないですよ」と睨まれる。

「彼らは入団して、まだ日が浅いから普段の貴方を知らないんです。団長に憧れの目を向けているのは、彼ら新団員くらいのものですよ。もう、とにかくさっさと戻ってください。貴方と話をしないと執務に戻らないとか、わけの分からないことを言っているんです。文官達から苦情が来るのも時間の問題です」

 酷い言われようだが、サランには魔法騎士団の執務のほとんどを任せている状態だ。

 ペル以上に下手に出る必要がある。

 そして今のサランの悲痛な表情は、すぐに開放してやらないとかなりやばい状況である。

 だが、あの方はどうしてこうも私に干渉してくるのかな?

 これからの面倒くさいやり取りを考えて、私は大きな溜息を吐きながらも、自分の部屋の扉を開けた。


「お帰り、ケリエル。魔法研究所の方に行っていたのかい?」

「騎士団の仕事で、切羽詰まったものはなかったはずですが?」

「別に騎士団の用事で来たわけではないよ。ここにいれば君に会えるかと思って待っていただけだ」

「私を執務のさぼりの言いわけに、体よくつかわないでください」

「アハハ、バレていたか。サランの困った顔が好きでね」

「可哀そうですよ。彼は貴方に遊ばれているとは知らないんですから」

「いつも仕事を彼に押し付けて研究所やクリスティーナ嬢の所に入り浸っている君に、可哀そうだなんて言われたくないな。まぁ、彼は生真面目だから、私の周りにいないタイプだね。良い暇つぶしになるんだよ」

「暇ではないですよね。文官の顔が半端なく怖いですから」

「ほどよい緊張感を持たせるのも必要だ。でないと私に全てを頼って、自分達では考えないようになるからね」


 私の部屋に陣取っていたのは、王太子殿下。

 備え付けのソファではなく、私の椅子に座って机の上の書類を見ている。

 どうやら暇つぶしに、数枚片付けてくれていたようだ。

 それに関しては素直にありがたい。

 王太子殿下はとても優秀な方で、正直ある程度の執務など短時間で終わらせることができる。

 だが、それに輪をかけたいたずら好きの困った方でもある。

 一日の執務をギリギリに仕上げるために、このように日中、時間を潰して回ることも度々あるのだ。

 それに利用されているのが数人いて、そのうちの一人が私である。

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