こいつ、偽物だな
「き、樹神様……!?」
ベクト爺達が跪く。
「おおお……! 樹神様が……! 樹神様が下界に降りて下さったぞぉ……!」
周りを見ると他の森人族達も跪いている。
「樹神様、この下界に何の御用がお有りなのでしょうか……?」
跪いたベクト爺を、自称樹神が見る。
「願いを聞き届けたのです。この下界に降り立って欲しいという願いを」
下界に降り立って欲しい……?
何だその誰にもメリットの無さそうな願いは。
いやまあ彼らならあり得るか……。
見れただけで絶対嬉しいだろうしな。
でも、絶対今までの間にそう祈った奴はいた筈なのに、今出て来たんだ?
……おいおいまさか。
「おい、お前」
そう言った瞬間、森人族が俺の事を凄い形相で睨む。
「イイジマ! お前との仲でもその発言は許せんぞ! 謝罪するのじゃ!」
「ベクト爺、気付けよ」
「何にじゃ!?」
「こいつ、本物の樹神じゃねぇよ」
そう言うとベクト爺が樹神を見る。
「ああ樹神様、どうかお許し下さい。こいつは何分人族ですから、貴方様の凄さが分かっていないのでございます」
おい何だとごら。
多分お前らよりは裏技と魔法について詳しいぞ?
「そうですか、では今の無礼、見逃しましょう」
「その寛大な心に感謝します」
ベクト爺がそう言った瞬間、俺は銃を発砲する。
「なぁっ!?」
ベクト爺の口と目が大きく開く。
弾丸はまあ俺の狙ったとことは少しズレて、左肩に命中する。
その瞬間俺の近くにテレポートして来た森人族が俺を取り押さえる。
「イイジマアアァ! 今お主が何をしたか分かっておるのかぁぁ!? 樹神様に対して攻撃を行うとは!」
「いやだからそいつ樹神じゃねぇって」
俺がインワドで戦った樹神はもっと大きく、体が木で出来ていた。
が、今目の前にいる樹神は普通のちょっとアラビアンっぽい肌の仏みたいな顔をしている。
もちろんデカくなくて、身長は180くらいだろう。
「あとなお前ら、人を取り押さえる時はそんなとこ掴んでちゃダメだろ?」
フンと力を込めて立ち上がる。
「「「うわぁぁ!?」」」
周りの森人族が吹っ飛ばされる。
「……貴方、名前を聞いておきましょう」
「イイジマだ」
「イイジマ……イイジマ……ねぇ……」
その顔が完璧に悪役の笑みになる。
「!?」
ベクト爺も偽物という事に気付いたようだ。
「お前がイイジマか」
「おいおい待て待て、お前がってなんだお前がって」
「私はお前を探していてね、森人族に協力して貰おうと思ったら、まさかそこにいるなんて」
「わお、そんなに俺と会いたかったのか」
「ああ、とてもな」
「で、何が目的だ?」
「お前を殺す事さ」
「そうか」
「ほぉ、驚かないんだな」
「生憎そういう言葉には慣れちまってるんだ」
インワドではこういうのがよくあった。
裏技マスターとしてインワドでも知られて来た頃、裏技を使うなんて卑怯だ! とか何とか言ってきて戦闘を仕掛けて来た奴らがいた。
まあもちろんフルボッコにしてやった訳だが、それ以降もそういう奴は後を絶たなかった。
と、いう訳で慣れている。
「それでは、戦いを始めようか」
「あー、待ってくれ」
「……何だ?」
「お前なー、場所を考えろよ。周りには沢山の人がいるし、こんな狭い場所だったら戦いにくいだろ?」
「……そうだな、場所を移そう」
そう言って偽樹神は教会の出口へと向かって歩き始めた。
「イ、イイイイイイジマ!? 大丈夫なの!?」
「大丈夫って、何が?」
「あんな奴と戦うんでしょ!?」
「あれ? 皆んなは戦ってくれないのか?」
「勿論一緒に戦うわよ! でもね! 相手の事なんも分かったないじゃない!」」
「だからこそだ、もしかしたらあいつ弱いかもだろ? それにここは裏技だらけの村だ。負ける訳がない」
「でも危ないわよ!」
「私は……イイジマと一緒に……戦うつもり……」
ニルが少し目を細めてそう言う。
「ニル……」
「イイジマが死んじゃった時は……私が死ぬ時……」
「そんな重く捉えなくていいぞ。取り敢えず、レカ、お前は危険だから部屋に――」
「私も行くー!」
「……でもなレカ、あいつの正体が何なのかすら分かったないんだ、そんな奴と戦わせられない」
「でも私がいないとイイジマ死んじゃう!」
凄い逆な気がする。
「でもなぁー……」
「行くったら行く!」
レカがトテトテと教会の出口の方へと走る。
「おい!」
「行くもーん!」
レカが教会から出た。
「あぁ〜全く! 俺らも行くぞ!」
「うん……!」
「え、ええ!」
そして俺らは偽樹神と戦う為に教会を出た。
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