ニルの過去 ④
※微グロ注意
「…………」
拷問を受け続けて、3日目。
ニルはようやく気が付いた。
死ぬのだと。
ここで死ぬのだと。
いや、正確には初日で気付いていたのかもしれない。
だがそれが嫌で目を背けていたのだろう。
ニルが拷問で何をされたのかというと、まずは定番の爪剥ぎ。
そしてそこから骨を折られ、魔法で重力を底上げされて押し潰されたり、息が出来ないようにされたり、目玉をくり抜かれたり、舌を引っこ抜かれたりされた。
だがその度に、向こうにいる優秀な回復術師が【大回復】で傷を治してきた。
【大回復】は無くなった部分を再生する事は出来ないが、離れ離れになった部分をくっ付ける事くらいは出来る。
よって、くり抜かれた目玉も、引っこ抜かれた舌も、今は何事もなかったかのように動かせる。
だが、自分の目玉と舌があの汚い男の手で触れられたのだと思うと、吐き気がして来てニルは少し吐いた。
「なあ、そろそろ言えよー」
少しだけ奥にいる男がニルにそう言う。
「俺らも少し飽きて来たぜー?」
そっちが勝手にやって来ているだけなのに何を言う。とニルは思った。
「じゃあ、やるぜー」
「……」
ニルは感情がほぼ無くなった。
多少押し殺しているのもあるが、本当に元々の感情表現に比べると無くなった。
「おらっ!」
「うっ」
まずは足の指が全部逝った。
そして手の指もやられ、さらにそれをグリングリンと回してくる。
「あがぁぁああぁぁぁあああ!」
弱体化を受ける前のニルだったら、この程度「痛っ」と言う程度で終わっただろう。
だが、弱体化を受けている今、その痛みは何十倍にもなる。
「マジでサッサと言えよー、なぁー?」
先程よりも強く回される。
「あがっ」
痛すぎて脳が最初、足の指先が冷たくなったと勘違いし、すぐに本来の痛みが正常な感覚としてニルを襲う。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
「よし、治してくれ」
「分かった。【大回復】」
奥から出て来たもう一人の男が、ニルの手足を綺麗に治す。
「うぁ……あ……」
ついでに叫びすぎて痛くなった喉の痛みも治っている。
「さて……次はどこをやろうか?」
そして今度は変な器具を持って、目の位置に持って来た。
ああ、また目玉をくり抜かれるのか。
と、ニルが思ったその時……
「拷問をやめろ」
暗闇から一人のスラッとした男が出て来た。
「で、ですが彼女からはまだ何も……」
パァンと、〝銃声〟が部屋の中に鳴り響く。
「これで、もう拷問は出来ないな」
バタッと先程までニルを拷問していた男は倒れ、続いた銃声ではニルに【大回復】を掛けていた男が殺された。
そしてその男はニルの方を向く。
「弱体化の魔法はもう掛かっていないよ。まあ弱体化魔法の副作用で以前より全ステータスが下がってはいるが、自分の力でその漆黒の蜘蛛の糸を引きちぎる事は出来るだろう」
ニルは試しに手足に力を入れてみる。
ぶちん、とまるで鉄をちぎったかの様な音がして、手足が自由になった。
「……ありがとう……」
ニルは暗闇のせいでよく姿が見えない男にそう言った。
「なに、気にする事はない。上からの指示でやっただけだ」
「上からの……指示……?」
「聞かない方が良い。彼らみたいになりたくなければね」
そう言って男は倒れた獣人族の近くで足をコンコンとやった。
「分かった……聞かないどく……」
「賢明な判断だ」
「じゃあ……違う質問……一つ……良い……?」
「良いだろう」
「私の……剣は……どこ……?」
「あぁ、それなら、この部屋の向こうにある机の上に置いてあるよ」
「……教えてくれて……ありがとう……」
「それじゃ、私はこれで行くよ。時間が押していてね、では」
そう言って男は暗闇の中へと消えた。
ニルは寝っ転がっていた台から降りる。
辺りには、先程撃たれた人達の血と、自分が出した大量の血があった。
男に言われた通り部屋を出て、机の前に行くと、確かに自分の剣があった。
「あった……」
それを手に取り、近くにあった布で体に縛り付ける。
「じゃあ……もう出よう……」
壁に向かってグーパンをして、穴を開ける。
陽の光が薄暗い通路を照らし、ヒュオオオとニルに向かって風が吹いた。
自分の体を見ると、血だらけだった。
「どこかで……体を洗おう……」
そしてニルは、壁の穴から出た――。
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