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魔矢……? え? 何それ美味しいの?

「……で? 話は何だ?」


「ふぉっふぉっふぉっ、話が早くて助かるわい」


「あんたが旅の話でも聞かせてくれ何て言う訳ないからな」


「やはり持つべきものは友じゃな」


「で? 要件は?」


「うむ……実は狩りで使う魔矢(まや)を作れる者が、最近死んでしまったんじゃ……」


「……なるほど。まず魔矢が何か分からん」


「そこからか……魔矢は矢に魔法を込めた物じゃ。例えば【火球】とか【風切り】とかの。魔矢を放てばその矢に込められた魔法が発動するのじゃ」


 ……なんか既視感ないか?


「あんたらが作る事って出来ないのか?」


「作れんことはない。ただ、彼の作っていた物よりも威力が半減してしまうのじゃ」


「あんたでもか?」


「儂も歳を取ったという事よ」


 ベクト爺は恐らく森人族の中で一番魔法に長けていると思うんだが……。


 そのベクト爺でも出来ないのか。


「分かった。で、何をして欲しいんだ?」


「彼が作っていた魔矢と同じ強さの魔矢を作って欲しい」


「はぁ?」


 ベクト爺でも出来ないのを出来る気がしない。


 まあ裏技(バグ)を使えば出来るだろうが、魔矢を作る裏技なんてない。


「もちろんタダとは言わん。お主に凄腕の弓職人が作った弓を――」


「あ、それはもう間に合ってる」


 銃があるからな。


「そ、そうか……では便利な裏技を――」


「それも間に合ってる」


 森人族の裏技はフル暗記してるからな。


 まあまだ見つかったないのがあるかもしれないが。


「ならば…………ええい! 何なら良いんじゃ!」


「逆ギレすんなよ」


 まず俺に拒否権は無いのか?


「分かった! もしやってくれたら、お主とお主の仲間達は自由にこの村に入っても良い事にする!」


「やらせて貰おう」


 森人族の村に自由に出入りできるというのはかなり美味しい話だ。


 ここの裏技は戦闘じゃなくて生活を楽にさせる方だからなー。重宝しまくる。


「良かったわい! ならば、早速制作場に行くぞ! 付いてくるんじゃ!」


 ベクト爺がルンルンスキップで歩いて行く。


「嬉しかったんだなぁ……」


 何というか小さな子供を見る気持ちで付いて行った。





 ベクト爺が少しボロい建物の前で止まる。


「ここじゃ」


 そしてギィィと扉を開ける。


「ここで……作るのか?」


「そうじゃ」


「結構(ほこり)っぽいここで?」


「そうじゃ」


 マジかよ。


「これが矢じゃ。この本を右上左右下左の順に動かせばそこにまた矢が出てくるから、無くなったらやるのじゃ」


 こういうのにも裏技使われてんのねー。


「それじゃあ儂は行くぞい」


「行くって……どこへ?」


「決まっているじゃろう。教会じゃよ教会」


「あぁ、もうそんな時間か」


「うむ、ではまた今度の」


 そう言ってベクト爺は出て行った。


「……さて、と……」


 部屋をグルっと見回す。


「いやホント埃っぽいな」


 まずは少し掃除するか。


 床に落ちている紙などを拾い、机の上に乗せる。


 そして


「【水出現】!」


【水出現】で出た水を【氷雨(ひさめ)】で凍らせる。


「後は……おらっ!」


 足でガッと蹴って割る。


 扉を開けて、割れた氷を放り投げる。


「よし、頑張るか」


 足がガンガンと蹴りまくり、放り投げたり、蹴飛ばしたりして扉から氷を出しまくる。


 そして氷が無くなった。


「よし、床の掃除終わり!」


 後は壁や天井の掃除か……どうしよ。


 天井はギリ氷を割るやつで掃除が出来るとして、壁は無理だぞ。


 本が沢山あるし、ヤバげな色をした魔法陣が描かれているし。


 水かけたりして大爆発したら大変だからな……やめとこう。


「あ! そうだ!」


 ベルトから銃を引き抜く。


 そして【神速】の魔法をかける。


 扉を開けた出入り口を狙って、発砲する。


 すると、凄い速度で発射された弾で風が巻き起こり、埃が舞いまくる。


 そこでもう一発【神速】をかけた弾を放つ。


 するとまた風の力で埃がこっち側にくる。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 ま、まあこれで埃を一箇所に(まと)められたし、これで作業が出来るな。


 そして俺は椅子に座り、作業を開始するのだった。


『面白い!』


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