森人族の村は裏技だらけ
「よっ」
木の幹から飛び出し、スタッと着地する。
「ふぅー、やっと森人族の村に着いた……」
と言っても、辺りに家っぽいものは無い。
「ほれほれ、早う早う」
ベクト爺がタタタッと走って木の枝に乗る。
「ほら! こっちじゃ!」
マジでベクト爺のあの身体能力はどうなってるんだ?
「あでっ」
あ、ルリカ達が来た。
「痛ててて……イイジマ! 待ってって言ったじゃない!」
「悪い、気のせいだと思った」
「はぁ……まあ良いけど。それで、ここが村なの?」
「いや、この上」
「上……?」
とんでもない高さのある木の樹頭付近に森人族は暮らしている。
つまり……
「待って、私達これからあの上に行くの?」
「ああ」
「やだぁー!」
ルリカにとっては最悪な場所だ。
「我慢してくれ……」
「バ、裏技でどうにか出来ないの!?」
「こればっかりはなぁ……」
確かにまああの家とかをこの地面に落とすとかやらない事もないが……流石にそんな事はしたくない。
「そんなぁー」
「ほら、諦めて行くぞー」
「嫌よぉー!」
ルリカの服の襟を掴んで、ジェットパックを起動する。
「ぐぇ」
あ、やべ、首締まっちゃってる。
足の上に乗っけて、両手で持つ。
はい、お姫様抱っこです。
「ひっ!」
あ、一瞬下を見たな?
全く、こういう時に下を見ちゃいけないってのは常識なのに……。
「お、もうすぐ着くぞ」
枝にかけられた木の板に乗る。
「ようこそ、森人族の村へ!」
ベクト爺が両腕をグワッと上げる。
ほー、ここはインワドの時と変わらないな。
何気に変わってない町とか村とか無いんだよなぁー。
色々変わりすぎ。
「うぅ……高いぃ……」
ルリカが俺の背中を凄い力で掴んでいる。
意外と痛い。
「大丈夫だルリカ。ここから落ちる事はない」
「え?」
そう言って俺は板の上から飛び降りる。
「ちょ! イイジマ!?」
だがその瞬間――
「よっと」
俺が落ち始めた場所に戻る。
「ど、どうなってるの?」
「裏技だ」
「え、裏技?」
そう、何故俺が一番森人族が怪しいと言ったかの理由はここにある。
森人族は、裏技を使うのだ。
だが、彼らはこれを世界の不備とは思っておらず、樹神様が与えて下さった力という風に考えている。
まあ絶対その方が良いな、うん。
そして彼らは今のように落ちても落ちなかった事にする様に様々な事に裏技を使っている。
移動だって大半は俺もやっているテレポート裏技だ。
いやすげぇな。
死ぬ可能性あるのにポンポン使ってるんだもん。
……それは俺らも同じか。
「ほれほれ、こっちじゃ」
ベクト爺がまた歩き出す。
マジ体力お化けだな……。
そしてベクト爺に付いて行って、教会の前に着いた。
「この奥じゃ」
ベクト爺が扉を開ける。
「おお、ベクト様、ご無事でなによりです」
一人の森人族がサササッとベクト爺の側に駆け寄り、そう言う。
「うむ、ありがとな」
「侵入者の撃破、ご苦労様でした………………! お下がり下さい!」
そう言ってベクト爺に話かけていた奴は俺とベクト爺の間に入って俺にナイフを向ける。
「貴様! 何者だ!?」
……あー、俺今普通に侵入者と思われてる感じ?
「やめたまえ」
「は?」
「そいつは儂の友人じゃ。無礼は許さん」
「も、申し訳ありません! ご、ご友人方! 先程の非礼! お詫びいたします!」
そう言って彼は正座してナイフを腹に刺した。
「ちょぉっ!?」
おいおい何いきなり切腹してるんだコイツ!?
「放っておいて大丈夫じゃ、森人族はこの程度では死なん」
そう言ってスタスタと歩いて行ってしまった。
「マジで……? 切腹しても死なないとか凄すぎないか……?」
そう言いつつベクト爺の後を追う。
因みにルリカ達は引きすぎて何も言わなかった。
「今日はここに泊まるのじゃ」
「おぉ」
意外と広い部屋だ……。
そこら辺の宿屋の部屋よりも広い。
ありがたいな。
「でも良いのか?」
「良いんじゃよ。それよりも、後で旅の話でも聞かせてくれぇい」
「もちろん良いぜ」
そしてルリカ達はベットで休み、俺はベクト爺と一緒に教会を出た。
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