リレオの最期
「……リレオ」
「私は……負けたんですね……」
「ああ、お前は負けた」
「ははは、そうですか……」
ぐったりと項垂れる。
「お前はしっかりと罪を償うべきだ……と、言いたいが、国を潰そうとしたんだ、処刑は免れないだろうな」
「そうでしょうな……」
「まあ、来世は善行を積みまくるんだな」
そう言って立ち去ろうとした
「イイジマさん」
……が、呼び止められる。
「なんだ?」
「どうか最後に一つ言わせて下さい…………貴方以外にも、〝裏技〟に似た力を持っている人がいます〟」
「!?」
は!? マジで!?
「誰だそいつは!」
「……………………」
あれ?
「リレオ? リレオ!?」
リレオの口からタラーっと血が出る。
よく見ると、胸に小さく穴が空いていた。
「まさか、狙撃っ!?」
辺りを見回すが、それらしき人影は見えなかった。
「リレオ……もしかして死んじゃったの!?」
「ああ……殺されたっぽい」
周りがザワザワとなる。
「静かに」
リーファが周りのドワーフ達を静める。
「イイジマ、取り敢えず貴方はリレオを倒した訳なんだから、休んでて。リレオの死因や犯人探しは私達に任せて」
「あ、ああ……分かった……」
ストンと椅子に座り、考える。
俺以外にも裏技、もしくは裏技に近い何かを使える奴がいる?
そんなバカな。
確かに裏技を知っているNPCはいるが、流石にNPCが裏技を使う事は出来ない。
理由は単純だ。普通自分の世界に裏技のようなものがあると思うだろうか?
仮に思ったとしても裏技を発動させるまでの動きをやろうという考えにはならない。
まあ頭のイカれたNPCの可能性もあるんだが…………もしや、俺以外にもプレイヤーがいる?
いや、少し考えすぎかもしれない。
でも警戒はしておこう。
今はNPCがやっているという可能性を考えよう。
だとしたら……一番怪しいのは森人族だなぁ……。
でもあいつらがやる動機が思い浮かばない。
森人族の所に行ってみるか。
「ルリカ」
「何イイジマ?」
「次に行く場所を決めた」
「どこ?」
「森人族の森だ」
それを言った瞬間周りのドワーフが俺を見る。
「イイジマさん、マジですか?」
「マジだ」
「でも……森人族ですよ?」
「分かってる、でも行かないと」
森人族は他の種族とは全く違う文化なのだ。
まず自分の国に入れてくれるかどうか怪しい。
さらに魔法に秀でているため、魔族と同じように魔法とスキルが効かない。
それどころか、相手に発動するタイプのだけではなく自分に発動するタイプのですら効かない。
よーするに【透明化】とか【足音消去】などが効かないのだ。
なので【透明化】でこっそり入るとかが出来ない。
まあプレイヤースキルでどうにでもなるかもしれないが……あいにく俺はリアルで忍者の修行を受けてはいない。
なので無理だ。
「何をしに森人族の所へ?」
「もしかしたら森人族の奴がリレオの言ってた奴かもってな」
「た、確かに森人族は不思議な力を使うと言うが……」
周りがまたザワザワとなる。
だが、リーファのそのザワザワに入っているので誰も止められなかった。
「皆の衆、聞いてくれたまえ」
いや、止めれた。
リヴェットだ。
「我らが彼を森人族の教祖の前に連れて行こう」
「マジで!?」
森人族の文化は他とは違う、と言ったがそれはどういう事かと言うと、彼らは宗教=この世の全てという感じなのだ。
なので森人族に王様などはいないが、教祖がリーダーの用な役割を担っている。
「本当だとも」
「助かるよ」
「団員の願い事は出来るだけ叶えてあげたいものでね」
リヴェットはそう言うと奥の方へと行く。
「別れを済ませておきたまえ、森人族の所に行くなら長旅になるだろう」
「そうだな」
リーファの元へ行く。
「まーそういう訳で、行ってくる」
「……」
「リーファ?」
その瞬間俺に抱きついてくる。
「うわっとっと」
「ぐす……」
リーファは泣いていた。
「おいおい、もう二度と会えない訳じゃねぇんだから、泣くなよ」
「でも……」
「絶対戻ってくるから、な?」
「……ずずっ」
ゆっくりと俺の脇の下に通していた腕を抜いてくれる。
「ギーダ、元気でな」
「イイジマさんも、ウォシュレットが恋しくなったらいつでも戻って来てくれ」
「あははは、あれはいつでも恋しくなるよ」
そう言ってリヴェットの元へ行く。
「別れは済んだな?」
「ああ」
「ならば行こう」
そしてまたテントに炎が付けられる。
「じゃ! 行ってくるわ!」
「皆さん! お気を付けて!」
俺らはリーファ達に手を振る。
そして、視界が臙脂色に染まった。
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