源泉付近だからってそれはないだろ!
「足元気を付けろよー」
「そんな事言われなくてもだいじょ――うわぁ!?」
「言わんこっちゃない」
転んだルリカの手を掴んで立たせる。
「ありがとうイイジマ」
「マジで気を付けてくれよー?」
デコボコとした地面を進み、依頼された源泉付近に行く。
「ここか」
「なんか変な臭いがするわね」
「硫黄の臭いだな」
さてと、この付近に魔物が出るから討伐して欲しいって依頼だったが……。
「魔物……いなくね?」
「いないわね……」
「なんだか……拍子抜け……」
「平和がいちばぁーん!」
一応魔王のレカが平和が一番って言うのなんか新鮮だなぁ。
まぁ、魔王が平和主義者でも良いんだけどね。
「念の為周りを探索しておこう。いたら普通に倒す感じで」
「分かったわ」
「分かった……」
「行こー!」
という訳で周りを探索する事になった。
だが、ジェットパックで上空から探したりして、1時間半程経ったが何もいなかった。
「マジでいないなぁー」
「そうねー。でもだとしたら何であんなクエストがあったのかしら?」
魔物がいなければ当然その魔物を討伐して欲しいというクエストは生まれない。
火のないところに煙は立たぬというヤツだ。
ただその報告を受けた時はいて、俺らが来た時にはもう移動してしまっていたのだろうか?
一応その可能性があるんだよなぁー。
その場合だったらクエスト破棄になる訳だが……色んな温泉入りまくれるというのが無くなってしまうのは惜しすぎる!
こんな事言うのも何だが、モンスター出て来てくれー!
温泉入りまくりたいんだぁー!
『ピチョ』
……水音?
『ピチョ』
「なあルリカ」
「何?」
「聞こえるか?」
「え? 何が?」
あれ? やっぱ気のせいか?
「いや……私には……聞こえてる……」
ニルが聞こえてるなら気のせいじゃないな。
『ピチョ』
「「!?」」
近くで音がしたので即振り返る。
『ピチョ』
振り返った先には……
『『『『『ピチョ』』』』』
沢山の数の人の形をした水がいた。
「あれが……魔物か?」
『ピチョ』
動いた。
どうやら魔物で合ってるらしい。
「んで……あれなんだ?」
あんな魔物インワドには確実にいなかった。
「取り敢えず……一体倒してみるか」
銃を抜いてパァンと撃つ。
放たれた弾は魔物をドンドンと貫通していったが……魔物はどうやらノーダメージのようだ。
『ピチョ』
「え!? 何であいつらやられないんだ!?」
「……! 分かった……! あいつら……源泉なんだ……! 水だから……物理攻撃が効かない……!」
「源泉から魔物出来ちゃってるの!?」
今すぐこの源泉封鎖した方がいいと思うんだが……まぁ距離が離れたらただのお湯になるとかなんだろう。
というかめんどくさすぎるだろこれ。
よーするに魔法とかスキルじゃないと倒せないって事か?
マジめんどい。
てか俺に水を蒸発させる様な魔法とかあったっけ?
あーそういえば【業火斬り】ってのがあったなー……まあ剣ないから使えないけど。
というか使ったところであれ水を蒸発させられるほどの温度は出せないんだよなぁ……。
しゃーない、ここで出すのはめんどいが裏技をやるとしよう。
何の裏技かというと、単純にあっつあつの炎を出す裏技だ。
本来は鉄を溶かしたりする時に温度上げるのめんどいからやる裏技だが、まさか戦う為に使うとはな。
「裏技をやるから少し離れてくれ」
「分かったわ!」
三人が俺から離れる。
さてと、これで遠慮なく裏技が出来る。
んじゃあまず……跪こう。
「「「!?」」」
後ろからルリカ達の驚愕の視線が伝わってくる。
そして両手をパチンと合わせ、口の元に持って来て、横にクルッと回りながらフッと息を吹く。
そして手を前にパッと放てば、小さな激熱の炎がポワッと地面から出る。
因みにこの炎普通に温度太陽の表面とかそんくらいある。
なんで周りが燃えてないのかというと、物体がそこに触れないと意味がないらしい。
ただ、一番下の方は触れても大丈夫の様だ。
いやー、マジでこの裏技は超便利なんだよなぁ。
インワドでは凄いお世話になった。
さてと、ではこいつを……
「よっと」
下からすくって指先に乗せる。
なんかこれ魔法使いみたいな感じで良いなぁー。
そう思いつつ指先をヒュンヒュンと左右に移動させる。
『ピチョ』
早速一体近づいて来たので、炎で触れてみる。
『ジュワー』
おっ、沸騰してる沸騰してる。
これなら簡単に倒せそうだな。
何十体ものお湯野郎達にその炎を触れさせ、蒸発させていった。
「ふぅー……これで終わったかな?」
辺りを見回してももうあの水で出来た魔物は見当たらなかった。
「よし! 討伐完了だな!」
ルリカ達の元へ戻る前に、炎を消しておく。
やり方は単純で、この裏技を発動した人が上から押し込むだけだ。
それだけで火は消える。
あとまあ大量の水をかければ消えはする。
「終わったぞー」
「イイジマ……あの炎は何?」
「んーと……めちゃくちゃ熱い炎、だな」
「そんなの触ってて大丈夫だったの!?」
「下の方は熱くないんだよ」
「あっ、そうなのね」
「取り敢えず……クエストクリアだよな?」
「ええ! 温泉入りまくれるわよ!」
「よっしゃぁぁ!」
その後、俺らはユ国へ戻り、温泉に入った。
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