ニルの覚醒
「こっち……!」
非常階段に向かって走る。
いやーでもまさか敵対してる国が攻めてくるなんてなぁー。
近くには斬られた獣人が沢山いた。
「うっ……」
インワドだったら、やられたプレイヤーとかNPCはキラキラになって消えるから、血がダラダラと出てくる死体とかには流石に慣れていない。
てか俺今までグロゲーを一切やってこなかったからマジ耐性ないんだよなぁ……。
今まで倒して来たモンスターとか全部血の出ないヤツだったから何とかなってたけど……そろそろ慣れないとか。
だとしても人の死体は流石にハードル高すぎやしませんかねぇ!?
「大丈夫イイジマ?」
「あ、あぁ……お前も大丈夫か?」
「え、ええ! 私は大丈夫よ! 全然!」
大丈夫じゃないな。
やっぱこの状況になって怖くない奴いないよな。
レカは俺に背負われているのだが、顔をうずくめている。
ニルは……前にいるから分からない。
「そこが……非常階段……!」
「よし!」
扉を開けて、ルリカ達を先に行かせる。
レカをルリカに預けたその時――
非常階段への入り口が消えた。
正確には、上から降って来た瓦礫によって入り口が塞がれたのだ。
「うそーん……」
流石にこの大きさの瓦礫はどかそうにも時間がかかるな……。
「どうする……?」
「どうするったってなぁ〜」
今出来るのは、別の道を探すor地道に掘るのどちらかしか無い。
「しょうがない、別の道を探そう」
「……分かった」
そして俺とニルは歩き出した。
「なあ、別の非常階段とかないのか?」
「あるにはある……けど……」
「けど?」
「……結構……ここから遠い……」
「マジかぁ〜」
遠いって事はさっきのアイツみたいな奴にほぼ確実に出会うって事だろ?
嫌だなぁーそれ。
まあだとしてもやるっきゃ無いのだが。
「うし! 頑張るぞニル!」
「う、うん……!」
そして俺らは走りだす。
非常階段の道中、やはりお面を付けた奴に絡まれた。
俺は銃を撃ち、ニルは蹴りを相手に入れたりして倒して行った。
今は座って弾込めをしている。
そういや弾がそろそろ無くなって来たな。
久々にあの裏技をやるかぁ……。
そう思っていると、ニルが俺の肩を叩いた。
「なん――」
ニルが口に人差し指を立てる。
「……」
何だ? とジェスチャーでやる。
ニルが隠れながら前方の天井を指さす。
こっそり見ると、今まで来た敵とは違う奴がいた。
白髪の獣人が、天井に空いた穴からこっちを見ていた。
小声で会話する。
『何だアイツは?』
『今日……攻めて来た奴らの……エリート』
『エリート?』
『凄い……強いって事……』
もう一度見てみる。
「!?」
い、いない!
『……どうしたの?』
『いない!』
『えっ』
ニルも柱から少しだけ顔を出す。
だがその瞬間
「んっ!」
ニルの顔の前を〝剣先が通り過ぎて行く〟
「今の避けられるだー、凄いねぇー」
気付けば先程天井にいた白髪の獣人、狼人族がいた。
「あれー? もしかして……ニルちゃーん?」
「……」
どうやらニルと面識がある奴のようだ。
「人族なんかといるなんてー、何があったのよぉー?」
「……私の……主様……」
「…………は?」
狼人族が剣をニルに向ける。
「じゃああんた人族に負けたって事?」
「……そういう事」
「あんた……そこまで落ちたのか」
そして彼女はニルに高速で接近して殴る。
「昔のあんたなら今のを避けれたしね……本当に弱くなったんだね」
「……」
「んじゃまず人族から殺すかね」
おっと、まずは俺かよ。
「よっ」
狼人族が剣で斬ろうとして来たのでのけぞって回避する。
そしてベルトに挟んである銃を抜いて発泡した。
「うぉ!? 何だその武器は? 見た事無いねぇ」
そしてまた接近してくる。
今度は蹴りと共に剣が迫ってきたので、銃口を顔に向けつつ足を殴り、発砲。
しかし頭をクイッと曲げられて避けられる。
「くっ! 【透明化】!」
「な!?」
姿を消して背後から発泡してやろうとしたが
「バレバレだよぉ!」
後ろ向きに蹴られて吹っ飛ばされる。
「あークソ痛ぇ……」
何とか銃口を構えようとするが、腕を踏まれて構えられなくなった。
おいおい嘘だろ? 俺ダンジョンの壁を破壊できるほどの力があるのにそれ止められるの?
「やっぱ人族は弱いわねぇ……んじゃ、さいなら」
狼人族がそう言った時
『ボゴベギィ!』
向こうの方で何かを壊す音が聞こえた。
「……何だ?」
狼人族がその方を見ると、そこには……
「イイジマに、触れないで」
頭の色を、白……いや、銀色にしたニルが、見た事の無い剣を持って立っていた。
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