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獣人族との戦闘……楽勝だね

「あ……」


 入って来た虎人族(タイター)を見て、ニルが身体中の毛をブオオッと逆立てた。


「んー? 何で人族なんかがいんだよ」


 虎人族が俺に近づいて来る。


「わ……私の……主様……だから……」


「ブフッ! え、お前っ、人族に負けたのか? フハハッ、まあお前弱いしな」


「……」


「おいそこの人族」


 そして俺を見る。


「ニルなんかを従わせない方が良いぜぇ? そいつ、この国一番の雑魚なんだ」


 ニヤッとしながらニルを見てそう言う。


「安心しろ、元からニルと主従関係になる気はない」


「ほぉー、良い選択だな」


「俺はニルが誰にも束縛されずに生きてくれりゃあそれで良い」


「おおっと、そいつは無理だな」


「何でだ?」


「誰かに挑んで負けた挙句に従属にしてすら貰えないとなりゃあ、奴隷まっしぐらだ」


 じゅ、獣人族の世界厳しすぎだろ……。


「つまり、俺が従属させないといけないって事か……」


「そういう事だ。まあ、お前なら奴隷行きを選択す――」


「んじゃ従属させる」


「なっ!? 正気か!?」


「お前の方こそ正気か? 奴隷になるって分かってて、見捨てるとか無いだろ」


「やっぱり人族は愚かだな……」


「お前を見て獣人族も愚かだと思うよ」


 そう言うと虎人族の目が俺を睨む。


「何つったてめぇ?」


「獣人族も愚かだなぁーって」


 そう言うとみるみる顔に青筋が浮かび始める。


「人族ごときがッ! 俺ら獣人族を罵るんじゃねぇ!」


 そう言って殴りかかろうしてくるが


 ヒョイっと右に避けて俺を殴る為に突き出した右腕を下に降ろし、肩に手を置いて普通にその場に座らせる。


「あがっ!?」


 やべ、力入れすぎて結構強めに座らせちった。


「て、てめぇ……一体何しやがった……?」


 お尻をさすりながら虎人族が聞いてくる。


 人族だったら今ので骨折してるだろうから……やっぱ獣人族って頑丈なんだな。


「いや、単純に座らせた」


「は、はぁ!?」


 獣人族からすれば人族に座らされるなんて考えられないのだろう。


「てめっ、ど、どうやったんだよ!」


「どうやったって……力技でとしか言いようがないな」


「なぁ!?」


 (あご)がんがっと開きっぱなしなる。


 顎が外れた……訳ではなさそうだ。


 驚きで口が閉じないというやつだろう。


「……凄い……」


 ニルは安心したのかソファーにストンと座る。


「な、何者なんだお前はぁー!」


 勢いよく立ち上がりこっちを勢いよく指さしてくる。


「何者って……」


 ルリカの元に高速で移動する。


「えっ、ちょ、何よ!?」


「な、なあルリカ。この状況でお前は何者だって聞かれたら何て答えたら良いんだ!?」


「えっ、それは冒険者だって……いや、名前……? た、確かになんて答えれば良いんだろ……?」


「両方言えば良いじゃーん!」


「……それだ!」


 レカナイス過ぎるぞ!


「俺は冒険者のイイジマだ」


「イイジマ……ふん! 今日はこのぐらいにしておいてやる!」


 お前手も足も出てなかったけどな。


 あとそのセリフ捨てゼリフの王道すぎんだろ……。


 虎人族は扉の無くなった出入り口から出て行った。


「……ありがと……イイジマ……従属にしてくれるって言ってくれて……」


 ニルが俺の服の袖を掴む。


「あー……従属にするって言ったが……俺はなぁ……こう言うのもなんだが、普通に仲間になって欲しい」


「え?」


「従属とかいう従わせるって行為好きじゃないんだよなぁ……てか今朝お前に言った通り、俺はそういう柄じゃない」


「……仲間に……なっても良いの……?」


 ニルは俺ではなくルリカとレカの方を見る。


「私は……ま、大丈夫よ。ただし、また殺しに来ないでよね!」


「良いよー! 楽しそうだしー!」


「だとよ」


「…………ほんとに……ありがと……」


 そして彼女はコントラバスを専用のバックに入れて背負う。


「この後……演奏があるから……その……よかったら……来て……」


 そう言って部屋を出ていく。


「……なあ」


「どうしたの?」


「場所聞いてなくね?」


「あ」


 その後、急いでニルを追いかけ、演奏する場所を聞き、そこに向かうのだった。


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