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ベーナダンジョン(二国付き)、再び

『ゴゴゴゴゴ』


 さてと、ベーナダンジョンに戻って来たわけだが……。


「こっち……」


 まさかここにドワーフ族の国以外の国があるとはなぁ。


 しかも入口も一緒だし。


 てかどこあった?


 階段は一方通行だし……。


 突如ニルが立ち止まって壁に手を付く。


「これを……こうっ……」


 そして彼女が力を入れると壁が動く。


「えぇー……」


 んなとこに道あったのかよ。


 てか多分それ自力で動かしてるよな?


 力強っよ。


 壁が完全にずれて灯りで照らされた道が見える。


「付いて来て……」


 ニルがその道を進む。


「み、道あったんだな……」


「気付かなかったわ……」


「行こー!」


 レカがトテトテと走ってニルの元へ行く。


「レカは元気だなぁ」


「そうねぇ」


 そして俺らもニルに付いて行き、何分か歩くと空間が広がる。


 ドワーフの国のような美しさは無く、いかにも岩を掘って造りましたといった感じの街並みだ。


 だが、至る所から音楽が聞こえ、ここの風景が岩の壁しかない事が忘れられる。


 てかドワーフの国の近くにこんな所が……。


 あと、周りの獣人族から変な目で見られている。


 だが俺らを見るというよりは、ニルを見ている。


 多分だが、俺らを殺しに行ったニルが生きているのが不思議なのだろう。


「おら! 歩け!」


「うっ!」


「……」


 あれが……主従関係になってる奴か。


 だが、あれは流石に扱い酷すぎないか?


「あれって……」


「……あれは……この国で一番……扱いの酷い奴だから……反面教師として……見といて……」


 なるほど、つまりああはなるなって事だな。


 って俺が聞きたいのはそんな事じゃ無くて


「助けてやらないのか?」


 よし、言えた。


「敗者は勝者の命令に従う……敗者の責任……」


 つまりこの国では何事にも責任が(ともな)うって事か……。


 いや元の世界もそんな感じか。


 まあ、負けなきゃ良いって事だ。


 岩で出来た階段を登って一つの扉の前に着く。


「ここが……私の家……」


 そうニルが言って扉を開いた。


「「「おぉ……」」」


 中は意外とちゃんとしており、ソファーと机とサンドバッグとなんかの本が何冊、そして形と大きさからしてコントラバスが置いてあった。


「そのソファーで休んでて」


 そう言ってニルが別の部屋に行く。


「凄い……街ね」


「そうだなぁー、ドワーフのとことは大違いだ。

 でも、ダンジョンの国って聞いたらぶっちゃけ俺はこういう風なのを想像しちまうなぁー」


 そう言ってソファーにダランと座る。


 ドワーフのところのヤツより固い。


 立ち上がり、近くにあった本を手に取る。


『魔物でも分かる! コントラバスの弾き方!』


 魔物でも分かるって凄いな……。


『ガチャ』


 扉が開き、ニルが出てくる。


 手にはお茶が入ったコップが四つあった。


「あ……それ……」


 机にコップを置きながら俺の持っている本を見てくる。


「あー悪い、見ちゃダメなやつか?」


「別に……大丈夫……ただ……コントラバスに……興味あるのかなぁー……って……」


 そう言ってニルがコントラバスを持って来る。


 そんな簡単に持てる物なのか……。


「……やってみる……?」


「すまんが大丈夫だ。弦楽器(げんがっき)は弾けないんだ」


 もちろん裏技(バグ)を使えば弾けるが、やるのが面倒なのでやらない。


「……そっか……」


 ニルが少しショボンとしつつコントラバスを元々あった位置に戻す。


 俺もソファーに戻り、お茶を飲む。


「美味いなこのお茶」


「……ありがとう……ベーナダンジョンにしかない葉で……作った……」


「マジで!?」


 ベーナダンジョンの葉ってどれもクソ不味かった筈なんだけど……


「よくこれ作れたなぁ……」


「……頑張った」


「うーん、ちょっと苦ーい」


 レカにはまだ早かったようだ。


「ほれ、水」


 携帯していた水を渡す。


「ありがとイイジマー!」


 そう言ってレカが水を飲み始める。


「それで、私達を何で貴方の家に連れて来たの?」


「……それは――」


 ニルが続きを言おうとしたその時


『ドォォォォン!』


 と、扉が吹き飛ばされた。


「ニルゥー! いんのかぁー!?」


 そして入って来たのは(とら)の耳が付いた獣人だった――。


『面白い!』


『気に入った!』


『続きが読みたい!』


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