まあ色々聞かせてよ
「イイジマ……ほんどうに……ほんどうに治っで良がっだ……」
「俺も、記憶が治って嬉しいよ」
「う゛う゛う゛ほんどうに良がっだぁー!」
「ちょぉっ!?」
俺の服が涙と鼻水だらけに……いやまあ、海水で落ちるから良いけどさ……。
「ルリカ……いや、今は止めるのは野暮ね」
「うおいっ!?」
イライザ! そこは止めてくれよ! 俺このままだと明日には筋肉痛だぞ!?
「イイジマ……」
「ん?」
その時、ニルが俺にそう声を掛けて来た。
「おかえり……」
そうして、珍しくニッコリと笑う。
「ただいまだ、ニル」
「おかえりぃー!」
そう言ってレカも俺に抱き付く。
「お、おう、ただいまレカ」
「記憶、ちゃんと戻ってるのね?」
「イライザ。ああもうそりゃあもうバッチリと。というか……」
俺は辺りを見回す。
海の中だし建物的にもここは確実に人魚族の街。そして部屋の構造的や柄、日光の入り方を見るに二階の奥の部屋。更に今いる場所がその部屋の隅。
間違いない、あの裏技だな。
「これ、リロード裏技か。よく見つけたなこんなの。普通の裏技より複雑なのに」
「あれ? イイジマ、記憶を失ってた頃の記憶は無いの?」
「ん? ああ……そう言えば無いな」
俺が元の記憶を取り戻したから、その記憶はデータ的に消されちゃったのか……?
分からないが……今は記憶を失ってる間に俺が変な事言ってないかが怖い。
「ヴァイナに教えて貰ったのよ。彼女がいなかったら貴方はまだ記憶を取り戻してないわ」
「ヴァイナが……そうか、彼女は裏技を知っていたしな……いやでも、教えるメリットが……」
「私達もそう疑ったんだけどね……現にこうしてイイジマの記憶を取り戻せてる訳だし」
「まあそうだな。今度会ったら一応お礼の一つくらいは言うとしようか」
「そうね」
「で……」
「「うわぁ〜ん! イイジマァ〜!」」
「お前らはいつまで俺に抱きついてるんだ!」
「だ……だってぇ〜!」
「イイジマの記憶が治ったんだもぉ〜ん!」
「それは俺も嬉しいが良い加減離れろ!」
そう言って俺は俺に張り付いていたルリカ達を引っ剥がす。
「はぁー……記憶を取り戻した瞬間これってなんだよ……」
「皆んなそれほど嬉しかったんだよ。特に、その二人は」
「……」
俺は涙を拭こうと袖を顔にやり、海の中だから拭く必要性が無い事に気付いた二人を見る。
「なるほどなぁ……」
「? イイジマ?」
「……ありがとうな、皆んな」
俺は皆んなの顔を見ながらそう言った。
「「「「「どういたしまして!」」」」」
そうして、俺らは笑い合った。
「で、まあ俺が記憶を失ってた間の事は色々と聞きたいが、まずは俺の記憶を消した奴、そしてそいつの配下共の事が知りたい。何か情報はあるか?」
「いやー……それが……」
「まさか、無い感じか?」
「一応、彼らのチートって呼ばれてる力の強大さは分かったわよ」
「おっ、あいつがチートを使ってるってとこまでは漕ぎ着けたのか。流石だな」
「え……えへへ……」
「はいそこデレない。で、そのチートの力の強大さだけど、私の能力が効かないくらい強いのよね……」
「あー……まあ、確かにそうかもな」
「そっ、そうかもなって……! 貴方チートが何か知ってるの!?」
「まあな。裏技とちょこっと似てる部分はあるからな」
「そ、そうな――いや、確かにそうね。めちゃくちゃな能力だもの」
「そういうこった。でもイライザの能力が効かないか……大分キツいなぁそれ」
「ええ。そのせいでイイジマの記憶を治せなかったのだもの」
「そっか、そうだよな確かに。思い付かない筈が無いもんな」
じゃあ完全にイライザの能力はあいつ相手には封じられていると考えた方が良いか……。
「ともかくイイジマ。今日は休みましょ。あの裏技の影響でどんな事になるか分からないし」
「ま、そうだな。俺もあの裏技は見つけた時以降やってないからな。大人しく休むとするよ」
「その間、イイジマが記憶を失っていた話をしてあげるから」
イライザさん? 何でそんな笑みを浮かべているんですかね?
「何か……嫌な予感がする……」
「それじゃあ、宿にでも行きましょうか。ほらほら二人共、そろそろ立ち上がって」
イライザはそう言ってルリカ達の襟を掴み、立ち上がらせた。
「本当に、記憶が戻って良かったわ」
「俺も、心底そう思うよ」
俺はイライザにそう返して、その部屋を出た。
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