ただいま
「いや、潜入はしなくて大丈夫でしょ。普通に許可を求めれば……」
「その許可はどうやって貰うの?」
「……」
確かに、この国の王様のイリストスさんとイイジマは知り合いではあるけど、別に仲の良い人って訳でもないし入れてはくれなさそう……。
「イ、イライザの力でどうにか出来ないかしら?」
「いやまあ出来るというか、それしかなくない? だって普通に入れてくれるとも思えないし……」
「そ、そうよね……それじゃあお願い」
「分かった。私達は許可を得て王宮の中へと入った!」
その瞬間、お城の前にいた門番さんが近付いて来て、私達に話しかけて来た。
「どうぞイライザ御一行様。お待ちしておりました。王宮内をご自由に探索して下さい」
「あ、ありがとう……ございます?」
や、やっぱりイライザのこの能力凄いわね……! 人の意識とかそういうのも書き換えれちゃうんだから!
「そ、それじゃあ行きましょ? ね?」
そうして、私達は普通に真正面からズカズカと王宮に入って行った。
「それで、裏技が出来る場所はどこだっけ?」
「えっと、この王宮の……二階の突き当たりの部屋の左の隅よ!」
「よし! それならパパパッと行っちゃいましょう!」
上へと続く階段に近い坂を駆け上り、二階に着くと、物凄い長さの廊下が見えた。
「こ、この奥!?」
「行くしかないわよ! 行きましょ!」
そして廊下を全速力で走っていると、突然ドアが開き、中から人が出て来た。
「「「「「うわっ!?」」」」」
私はその人と正面衝突し、吹っ飛ばされて水の影響でゆっくりと地面に落ちる。
「「「「「ル、ルリカ(さん)!」」」」」
「ん? 何だ君達は――っ!?」
その部屋から出てきたのは……
「イ、イリストスさんっ!?」
「イイジマ達じゃないか! ここで何をしている!?」
この国の王、イリストスさんだった。
「い、いやーそのー、私達はぁー」
「私達は、正式な許可を得て入ってる。王様である貴方からも許可は貰っているわ」
「何を言ってい――そうだったな。確かに、私が許可を出していたな」
イライザがすぐに能力を発動してくれたお陰で、何とか難を免れたわ……よ、良かった……。
「それで、何の用でここまで来たのかな?」
イリストスさんはそう言ってイイジマに顔を向ける。
そうよね、イリストスさんはイイジマが記憶を無くしてるのを知らないからそうなるわよね……。
「こ、この部屋の奥に少し用があって、ここに来まして……」
「ほう? あそこはただの面談室だが……まあ、何か大事な用があるのだろう。気をつけるのだぞ」
「はっ、はい!」
そうして、イリストスさんは去って行った。
「あ、危なかったわね……」
「もう、本当に気を付けてよねルリカ」
「ごめんなさい………」
私は立ち上がり、そしてまた素早く駆け出した。
奥の部屋に着くと、念の為そぉーっと開けて、中をチラ見する。
「誰かいた?」
「いない……みたいね」
「それじゃあ、さっさと行って裏技やっちゃいましょ!」
「そうね!」
そうして部屋に入って、部屋の隅へと向かう。
「それで、どうやるんだっけ?」
「確か……まずはあの機械族の核を部屋の隅に置いて……」
コトッ、と機械族の核を隅に置いた。
何というか、こう見ると意外とオブジェ的な感じのビジュアルがとても良いわね。
中にひし形のクリスタルが入った筒形のケースみたいな見た目だからかしら?
「で、それの上にイイジマが立つ」
「だ、大丈夫なんですか? 壊れないんですか?」
「多分大丈夫よ、多分」
「その機械族の核は壊れない!」
「あっ、ありがとうイライザ」
「良いのよ。もう慣れたわ」
イイジマが機械族の核の上に乗り、こちらを見る。
「そしたらね……こう、壁の隅の方を向いて」
「はい」
イイジマが私達から反対方向へと体を向ける。
「それで……左脚で片足立ちになった後両腕を横にピンと伸ばしてその後その場でクルッと一回転。そして着地する際はちゃんと機械族の核の上に乗る様にして、着地した瞬間また少し飛んで機械族の核を壁の隅に向かって蹴り、自分も壁に向かって飛び、機械族の核が腹に挟まるくらいの感覚で壁の隅にビターンと張り付いて、そしたらその場でジャンプ。そして腹に挟んであった機械族の核を落として、それに乗って、今度は隅に向かってひたすらジャンプすると、少しだけ膝が壁に埋まる様になるから、そうなった瞬間頭を突っ込む……んだって」
「な……長すぎませんかそれ……?」
「大丈夫! イイジマなら覚えられる!」
「わ、分かりました……頑張ります……」
そうして、イイジマは左脚で片足立ちて、両腕をピンとした。
そしてそこからさっき私が言った事を全部やって行き、そして膝が壁に埋まるところまで行った。
「き、来ました!」
「そしたら頭突っ込んで!」
「はいっ!」
そう言って頭を壁に向かって突っ込むイイジマ。
すると、頭が壁に埋まり、次第に体全体が緑色と黒色の光に覆われていった。
「「「「「イ、イイジマ!?」」」」」
黒い部分に緑色の数字が出て来たり、よ、よく分からない事になってるわ……。
「だ、大丈夫なのかしら……あれ……?」
手足が大きくビタンビタンと動いていて、なんと言うか見ていて痛々しい具合になっている。
「分からないけど……今は見守るしかないわよ……」
そうして、私達はその後もずっとイイジマを見守り続けた。
すると次第に、体の揺れが収まり、体にあった緑色の数字も消えてたって、色も徐々に戻って行き……
「…………ふぅ」
イイジマが壁から顔を出した。
「イ……イイジマ……?」
「……」
「き、記憶はどうなったの……?」
「……」
「イイジマ……?」
な、何で一言も喋らないの!? もしかして……この裏技はダメだった!?
皆んながそう思っている空気の中、イイジマがピクリと体を動かす。
「くっ、くくく、くはははははははは! お前ら、ビビり過ぎだ! そんなビビんなって!」
「「「「「っ!」」」」」
その顔は、記憶を失うイイジマそのもので――。
「イイジマ! 記憶が!」
「……ああ、戻った」
その瞬間、私は――いや、私達は気付けば駆け出していた。
そしてイイジマを抱きしめ、押し倒す。
「おわっ!?」
「「「「「イイジマ……! おかえり……!」」」」」
「…………ただいま。皆んな」
そして、私達はその後イイジマを見守っていた時間よりもずっと長く、イイジマを抱きしめていた。
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