魔王様、トテトテと出陣!
「――て!」
「お――て!」
「起ーきーてー!」
「ぶほっ!?」
い、いきなり腹に衝撃が……。
「あっ! 起きたー!」
腹の上にはレカがいた。
「お、おはよう……」
「うん! おはよー!」
俺の腹から降りて魔王がすんごい笑顔でそう言う。
「どうして俺の部屋に来たんだ?」
「遊んで欲しーからー!」
「!?」
遊んで……欲しい……?
魔王と遊ぶって聞いた事無いぞ?
てか俺遊べるのか?
「わ、分かった、何して遊ぶ?」
「うーん……鬼ごっこ!」
あ、俺終わった。
「い、良いぞー」
「わーい!」
「どっちが鬼をやるんだ?」
「じゃんけーん!」
じゃんけんをして、俺が勝った。
「うー! 私が鬼かー」
確実に終わったな俺。
魔王が追いかけてくるんだぞ? 絶望しかない。
「じゃあ10秒後ね! いーち」
やばいやばいやばい走らないと!
部屋から飛び出して【神速】で走る。
と、とりあえず王座がある場所と昨日迷った場所までは行ける。
でもそれ以外はよく分からない。
王座の場所に着き、少し身を隠す。
なんかすっごいデスゲームしてる感がある。
シュンと風切り音がしたかと思うと、レカの姿があった。
「どこ行ったのかなー?」
こっわ! 狩人の目をしてる!
流石魔王だなぁ……。
「見つけたー!」
「!?」
いつの間にか、背後にいた。
「うおっと!」
何とかタッチされる前に避けて、【神速】で逃げる。
「あー! 待てー!」
そう声が聞こえると凄い速度で迫って来た。
いや待て待て! 今俺【神速】で走ってるんだぞ!?
その速度を超えてるとか嘘だろ!?
マジで魔王のステータスバグってるって!
「タァァァーッチ!」
背中に衝撃が走る。
「ぐはぁ!」
んでまあ吹っ飛ぶ。
「す、凄いなレカ……」
「えっへん! じゃあ次はイイジマが――」
「魔王様」
リレオ!? いつの間に!?
まさかお前も魔王側……いや魔族だしそりゃそうか。
「何ーリレオ?」
「実は、イイジマさんに用がございまして……」
「……分かった」
渋々といった表情で立ち去ろうとするレカ。
「先日伝えたラーナ草原の拠点制圧の件ですが……」
そう言った途端くるりとこっちを振り向くレカ。
「レカも行くー!」
……マジで?
「魔王様……申し訳ありませんが魔王様には……」
「行くったら行くのー!」
そう言って俺にしがみつく。
ちょっと痛い……。
「魔王様……」
フゥーと鼻から息を出す。
「分かりました、一緒に行きましょう」
「やったー!」
トテトテと走ってリレオに抱きつく。
「ありがとリレオ!」
「馬の準備をいたしますので、少しお待ち下さい」
そして数分後、俺らはリレオの連れてきた馬に乗ってラーナ草原へと向かうのだった。
「ねえイイジマ」
「ん? どうした?」
「今更でけれど何でレカちゃんがいるのよ」
俺の膝な座っているレカを見てそう言う。
「付いてくるって言われたから……な?」
「付いてきたー!」
「……まあ、レカちゃんなら大丈夫よね……」
だろうな、敵に囚われたとしても確実にフルボッコなら出来るだろう。
「あーレカ、ちょっと良いか?」
「何ー? イイジマー」
「これ付けてみてくれ」
フードを被せる。
「何これー?」
「ただのフードだ」
「何で付けるの?」
「敵にレカだと分からない様にだ。んでこれ付けたまま敵陣行って暴れて貰えないか?」
魔王の力がどんなもんか見てみたいんだよな。
インワドやってる時には魔王と戦った事無かったし。
「分かったー!」
トテトテと敵陣に走って行く。
「……ん!? あれは魔王様!?」
「すまんリレオ、敵陣突っ込ませちゃった」
「イイジマさん……はぁ……まあ魔王様なら負けないでしょうが……」
「悪かったよ、ただレカの力がどんなもんか見てみたかったんだ」
「分かりました、ですがどうか次からはおやめ下さい」
「分かってる、ところでレカが負けないなら何で敵陣に突っ込ませなかったんだ?」
「万が一の為です。負けてしまったら我々の戦う目的が無くなるからです」
確かにリレオ達はレカを支持している派閥だから死んでしまったら困るよなぁ……。
「分かった、マジでもうしないどくよ」
さてさて敵陣はどうなってるかなっと。
「えーい!」
「な、何だあいつは!?」
「触れられただけで……消えた!?」
「おりゃー!」
レカの手から超巨大な光の球が出現し、放たれる。
「「「ぐわぁー!!」」」
……いや万が一が存在しなくね?
今の「おりゃー!」でほぼ壊滅したぞ?
「終わったー!」
その時間、ざっと2分。
「……リレオ」
「なんでしょう?」
「レカが負ける事って本当にあるのか?」
「……無いでしょうな」
レカの頭を撫でる。
「んふふー」
笑顔が可愛いな……。
「それじゃあこの拠点を俺らのもんにするか」
「そうしましょう」
そうして俺らは元敵拠点に向かって歩き出した。
……レカの頭を凄い撫でながら。
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