【SIDE 教会】あの後
「うあ……」
「ん? 目覚めたか」
ギガストが、ベットで目覚めたリタの顔を見ながらそう言った。
「……あ、あれぇ……? ここはどこですかぁ……?」
「ここはビラナの教会の医療室だ。まああの戦いの後だ、皆んなも少々隠れなくてはいけなくなってな、リーチャニット大聖堂の方には戻れず各自の場所にいる。それで私は何だかんだ暇になったのでな、君が起きるのを待っていたという訳だ」
「えぇ……あの戦いの後で忙しくならない事なんてありますぅ……?」
「あ、あったんだ」
目を少し上に背けながら、雑用を全て自分の教会のシスターや部下達に押し付けた事をギガストは隠した。
「そう言えばぁ……僕はぁ……あっ……!」
「ふむ、思い出したか? というか忘れていたのか」
「そうだぁ……僕ぅ……色々と暴れちゃったんだぁ……」
「ああ。まあ君がいなければ我々もかなり危なかったがな」
「って……ていう事はぁ……僕らは勝ったんですかぁ……?」
「どうなんだろうな……あの後アイツが来て戦がうやむやになってしまった」
「?」
「俺らはあの逸脱者に負けた、それは間違いない。そして俺らは反対派の奴らに捕まった……筈だったんだが、アイツ……あの逸脱者が来て俺らは次々に解放されていったんだ。そして反対派の奴らも散り散りに逃げてな……結局、よく分からずじまいって事だ」
「そ、そうだったんですかぁ……」
リタはそう言って俯き、ははっ、とから笑いした。
「僕がぁ……あれほど頑張ってもぉ…………逸脱者には負けちゃいましたかぁ……」
「ああ。まあ正確に言えばお前は逸脱者と禁書図書館の司書に負けたんだがな」
「うぅ……」
「よく頑張ったな。リタ」
「ギィ……ギガストさぁん……」
勢いよくリタがギガストの腹に抱き付く。
「ぬぉっ!?」
「慰めてくれてぇ……ありがとうございますぅ……!」
「は、離れろ離れろ!」
「失礼しまー――……失礼しましたー」
「待てビラナ! 誤解だ!」
引き止めようとするも、惜しくも空を切る手。そして閉まる扉。
「く、くそぉ……!」
リタが抱きつかなければ……! と思ったギガストであったが、リタが一番の功労者である為、何も言えなかった。
ただ、先程の誤解だけは解かなばなるなまい。とギガストは心に決めた。
「ともかく、まずは離れろリタ」
「は、はいぃ……ほんどうにありがどうございましだぁ……!」
「もう泣くな。それよりも、傷が癒えたらビラナの所に行くぞ。彼に教皇様の場所まで連れて行って貰うからな」
「分かりましたぁ……」
「じゃあまた今度な」
そう言って、ギガストはリタの部屋から退室した。
「ふぅー……さてと」
まずはビラナの誤解を解かなければな。と思ったギガストは、ドシドシとビラナの所へと歩いて行った。
「さてと、もう傷は治ったのかな?」
「はいぃ……もうすっかりぃ……」
「なら良かった。君が一番の功労者だったからね」
「あははぁ……どうもぉ……」
「さて、そろそろ本題に入るとしよう。議題は皆も分かりきっているだろう。我々がこれから何をすべきか、だ。反対派の者達によって我々の信者達は言ってしまえばズタボロにされてしまった。そして今はあの逸脱者がリーチャニット大聖堂を支配している為帰る訳にもいかない。だがそれでは信者達の信仰が薄れてしまう。そこで、我々はどうにかして、アルカニット教を広めていかなければならない。なので、皆んなの意見を聞く事にしよう」
アーガストはそう言ったが、誰も言葉を発しなかった。
「……まあそうなるか」
そう、誰も何も、思いつかなかったのである。
「教皇様。お言葉ですが……〝アレ〟をやるしか……」
「アレか……」
アーガストは少し唸った後、ゆっくりと頷いた。
「分かった。やってくれ」
「かしこまりました」
そうギガストが言うと、大司教達の視線が、一人、ヴァイナへと集まった。
「分かりました〜☆ じゃあ私〜☆ 頑張りますねぇ〜☆」
そうして、ヴァイナはその部屋から出て行った。
「しかし……もう片方の逸脱者に《《世界の不備を教える》》なんて、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だ、きっとな」
その言葉で、会議は終了となったのであった。
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