リレオのあの後
「リ、リレオ!?」
「はい、そうです」
リレオが何をしたのか分かっている私とレカちゃんとニルとリーファは、そのリレオと名乗る機械族に対して身構える。
「? 何者なんだ?」
「前に、私達の国を壊そうとした人物よ!」
「何っ!?」
事情を聞いたイネさんも身構え、風呂場内にとてつもなく険悪な空気が流れる。
「おや、そんなに敵意を向けられるとは心外ですね」
「どの口がっ……!」
「まあ安心して下さい。もう私には貴方達に敵意はありません。それどころか、私はもう戦えません」
「……? どういう事?」
「説明いたしますから、一旦その構えを解いて貰ってもよろしいでしょうか?」
「……」
皆んなに目配りをし、コクリと頷いてゆっくりと構えを解く。
「ありがとうございます」
「それで、早く説明して」
「はい。えーと、ではまず私がイイジマさんにやられた後の話をしましょう」
そうして、リレオは自分に何があったのか話し始めた。
「んん!? 何だこりゃ!?」
とあるガラクタ置き場にて、一人の老人がガラクタ漁りをしていると、何やら人型の機械があった。
「ア……あア……」
「ふんっ! ぶっ壊れちまった機械族かよー! 材料は揃ってんだよ!」
「ま……テ……くだ……サ……」
「んぁ?」
「わ……ワた……しは……こワれ……てなド……」
「……お前! もしかしてあの白髪の奴か!?」
「わタしを……ごゾんジで……?」
「ご存知も何も、俺がお前ぇの体を改造したんじゃねぇか! ワオ! こんな事あるんだなぁ!」
「エ……?」
リレオが見上げると、そこには人体改造屋のヴィヴィスがいた。
「なるほどなぁ……! お前、あいつに渡したあの機械を入れられたんだな! はっはー! 傑作だなこりゃぁ!」
「……」
リレオは少し困惑したような表情をしながらヴィヴィスを見続ける。
「まあ良い! それよりもお前! まだ死にたくないだろ! 意識あんならちぃと俺の実験に付き合ってくれや!」
「じっケん……?」
「ああ! 最近新たな人体改造の機構を思い付いてな……どうせ死ぬ命だったんだろ!? ならその命使わせろよ!」
「…………ワかりマ……した……いイで……しョう……」
「よーし! んじゃあ早速連れて帰るぜー! いやー今日は探索に来て良かったー!」
そう言ってヴィヴィスは雑にリレオを背負っていたリュックの中に詰め込むと、その年齢と見た目からは想像もできないほど速く、そして軽やかに帰路に着いた。
「よっこらせっとー!」
店に戻ったヴィヴィスはリレオを作業台の上に置き、自分の改造道具を並べ始めた。
「アの……」
「何だぁ!?」
「せメて……ワたしガ……なにヲ……サれ……るノか……オしエ……てくレま……せんカ……?」
「あぁーまあ良いだろう! 今からお前さんは俺の新発明した機構に意識を移ってもらう! 安心しろ、痛くはねぇ!」
「ナるほド……わカり……まシた……オねガい……シまス……」
「おう! 任された!」
そうしてヴィヴィスはリレオを別の機構に組み替えて行く。
「ここがこうで……あー! 良いなぁ! 最高だ!」
頭の中でより良いアイデアを浮かべながらヴィヴィスは組み替えを続ける。
「さてとー! 自我はちゃんとー……保ってるな! よしよし!」
そんなこんなしながらヴィヴィスは組み替えを終える。
「よーし! 終わったぞ!」
それを聞いたリレオは、ゆっくりと立ち上がり、自分の体を見た。
そして、すぐに違和感に気付いた。
「あの……」
声で更に違和感が募る。
「これ、女性用の体では?」
そう、リレオの意識が移った機械は、女性の形をした物だったのだ。
「そうだ! だが安心しろ! お前の意識とかそういうのはちゃんと女性用のもんにしといたからな! 今女の裸体を見ても興奮しないぞ!」
「えぇ……」
近くにあった鏡の前に行き、自分の姿を見てみる。
素っ裸だからよく分かる。
自分は今とてつもない美女になっている事が。
美しい顔、美しいハリ、美しいボディーライン。
全てが美しかった。
「これは……凄いですね……」
「そうだろ!? そうだろ!? 苦労して作った甲斐があったぜー!」
人間だと言われてもギリ信じられるくらいに良く出来ている。
それにしては美人すぎるが……ともかく、リレオは自分の頬などを少しつねったりしながら鏡の前で様々なポージングを取ったりした。
「オウ! そうやってちょいと興奮するのは良いが! ともかくこいつを羽織ってくれ! じゃねぇと俺がちょっとヤベェ!」
そう言ってヴィヴィスに渡された簡易的な浴衣をリレオは着る。
「んで! どうするよ! またあいつ……イイジマんとこに行って戦うか!? って言っても、お前ぇさんの体にはもう何一つ戦闘機構は取り付けてねぇがな!」
「……ヴィヴィスさん。私はもう一度死んだも同然。この新たな体と共に、新たな生を生きていきます」
「はっはー! 新たな体の性別はちげぇのに生きてくか! まあ良いんじゃないか! 実際、今はまだ違和感ありまくりかもしんねぇがじきになくなる! そしたらお前ぇは立派な一人の機械族の女さ!」
「……そうなる様、頑張ります」
「おうよ! 頑張れよ!」
そう言って、リレオはヴィヴィスの店から退店した。
「……」
太陽が予想以上に眩しく、思わず手で遮ってしまう。
「それじゃあ……まずはどこに行きましょうか」
そうして、リレオは新たな人生を歩み始めたのであった。
「……ざっと、こんな感じです」
「…………」
え!? 何それ!? 何かもう、凄い色々あったわねぇ……。
「イネさん、どう?」
「嘘は吐いていない様だが……流石に私も機械族相手は初めてだ。だから嘘を言ってる可能性もある」
「分かったわ」
まあでもイネさんは上忍なんだし、機械相手でも嘘看破は通用しそうよね……。
「リレオ、貴方の話、ちょっとは信用してあげる」
「ありがとうございます」
「まず、もう武器は無いのよね?」
「はい。それにこの体も戦闘用では無いらしいので格闘技などを用いて戦う事も不可能です」
「それが聞けて良かったわ」
もし格闘技とかやられてたら勝てないかもだしね……。
「ともかく、貴方がもう私達に楯突く事は無い、って事よね……?」
「そういう事です」
「分かったわ……それで良いかしら、リーファ?」
恐らく、リレオの行動の一番の被害者であろうリーファにそう聞く。
「…………私は……死人の相手をする気は無いわ」
そう言って、リーファはそっぽを向いた。
「だそうよ」
「……ありがとうございます。リーファさん」
「…………」
「私はお邪魔になってしまいそうなので、先に上がらせて貰います。もしまた会う事がございましたら、是非お話しさせて下さい。特に……そこの〝彼女〟と」
「ひっ」
狙いを付けられたのを察したイイジマがそう言う中、リレオはペチペチと音を立てながら浴場から出て行った。
「……まあ、ハプニングがあったけど、温泉を楽しみましょうよ」
「そうだな。それが良い」
そうして私達は、ホッと息をしてから存分に温泉を堪能するのであった。
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