あら……意外と……
「ここがユ国……!」
「へぇー、良い場所じゃない!」
辺りを見回しながらとリーファとイライザがそう言った。
実は、何気に私も久しぶりに来て結構ワクワクしていたりする。
だって前回来た時はあまりここにいられなかったし……。
でも! ちゃんとイイジマの記憶を取り戻す方法を探すのが第一目標よ!
「それじゃあ早速、皆んなで温泉に入ってみるとするか?」
「良いね……あ、でも……」
クルッ、とニルがイイジマの方を向く。
「? 俺がどうしました?」
「イイジマ……イイジマは男だよね……?」
「と、突然どうしたんですか?」
「男って事は……私達と入れないって事よね……?」
「あっ!」
確かにそうだ! 当たり前すぎて忘れたけど、これじゃあイイジマが機械族いっぱいの温泉へ一人で何の情報も無しにぶち込まれる事になっちゃう!
ど、どうしましょ……流石に心配すぎるわ……。
「ふっふっふ、皆んな、心配しないで良いわ。私の能力、忘れちゃったの?」
「? ……っ! まさか……!」
「え? 何? どういう事?」
「それじゃやるわね。〝イイジマの性別は女になった!〟」
「!?」
イイジマが困惑した顔をした瞬間、みるみるイイジマが女性の体型になっていく。
いや、顔や髪の形も変わっていき、数秒もしないうちに物凄い美人な女性になってしまっていた。
「え!? え!? な、何ですかこれ!?」
「貴方を女性にしたのよ。あぁ安心して、性別を女性にする際に女性の体に欲情しない様にしたから」
「そこじゃないですよ! 何で俺の体を女にしたんですか!?」
「そりゃあ、一緒に入る為でしょ」
「何で!?」
「私達が貴方を心配しているからよ。この国は機械族っていう人族とは別の種族の人達が大勢住んでる国なの。だからそんな所に一人行かせるのはなぁーっていう事よ」
「そ、そういう事だったんですか……でもまあ、その事を教えてくれれば一人でも行けた気がしますけどね……」
「細かい事は良いのよ。それよりもイイジマ、意外と……」
「そうだな、意外と……」
「な、何です?」
私もマジマジとイイジマの顔や体型を見る。
シュッとした鼻、パッチリとした目、ふっくらとした唇にプルプルしていそうな肌、そして……デカい胸!
な、何なのこれ!? 私のくらいあるじゃない!
「大きいー!」
レカちゃんがイイジマの胸を指差しながらそう言った。
「レ、レレレレカちゃん! 思っててもそう言うのは言っちゃダメよ!」
「ご、ごめんなさい……」
「謝れて、偉いわね」
そう言ってレカちゃんの頭を撫でる。
「えへっ」
可愛いっ!
「それじゃあ改めて行きましょうか! 温泉へ!」
「「「「「おー!」」」」」
「お、おー……」
そうして私達は早速温泉へと向かったのであった。
「ここがユ国の温泉なのね!」
着いて早々リーファが感動した様に温泉の脱衣所内を歩き回る。
「こらこらリーファ、他の人の迷惑になるからやるならあまり動き回らずに、な?」
「なはは……ごめんなさいイネさん」
そんな事がありながらも、私達は服を脱いでお風呂場へと入る。
「わははー! 温泉だぁー!」
「レカァー、走っちゃダメよー!」
レカちゃんを座らせ、シャンプーなんかをしてあげて、私もやっていざ湯船へと浸かる。
「「「「「ふぅ〜……」」」」」
やっぱり温泉は気持ちいいわねぇ……。
「最高だなぁこれは」
「そうねぇ……私の国にも作らせようかしら?」
「リーファ……君はそんな凄い人だったのか……?」
「あっ、一応ドワーフと獣人族の連合王国の女王をやってるわ」
「とんでもない肩書き過ぎじゃないか!?」
「あはははははは!」
そんな会話をしている二人を横目に、私はイイジマの隣にいた。
「どおイイジマ、何か思い出せた?」
「すみません……まだ何も……」
「そう……」
まあ流石に温泉に入っただけで思い出せないか。
「それなら、この温泉を楽しみましょう!」
「は、はい! ……っ!」
「? どうしたの?」
「いや、その……」
「ん?」
イイジマが私から目線を逸らす。
な、何でなのかしら……?
「あ〜、イイジマのえっち〜」
イライザがイイジマを見ながら意地悪そうな顔をしてそう言う。
えっち? えっちってどういう……。
あっ、そういう事?
でもイイジマは女性の体を見ても欲情しない筈じゃ……。
いや、ぶっちゃけ私達もお互いの体を見たいって訳じゃないし、多分そういうのと同じね。
出来れば見たくないってやつ。
「か、からかわないで下さい!」
「あはははは!」
イライザとイイジマがそんな会話をしながら、ゆったりと時間が流れる。
「……良い湯だね……」
「そうね……あったかくて気持ち良いわ……」
「ぶくぶくぶくぶく」
イイジマの隣に人が座る。
結構人も増えて来たわね。
そろそろ上がっても良い頃合いかも。何だかんだで一時間くらい入ってるし。
丁度その時、前の方に人が座った。
今私達が入っているお風呂は細長い長方形の湯船なので、前の人との距離が意外と近い。
「……あら?」
すると、前にいた人が私の顔を見た。
「貴方もしかして……ルリカさん?」
「え?」
目の前の人は、髪の毛やまつ毛、目も真っ白で、肌も白い人だった。
「やっぱり。つまり横にいるのは……もしかしてイイジマさん、かしら?」
「……貴方……何者なの……?」
「私の事、覚えてないのですか?」
覚えていないわ……。
というか、何でイイジマの事を知っているの?
「何々? ルリカの知り合い?」
「貴方、心読んで分かってるでしょ」
「なっはっはー」
「それで、えっと……すみませんが、どちら様でしょうか?」
「まあ、こんな見た目なっているから分からないとは思っていました。私ですよ、私。リレオです」
「「「「「…………え?」」」」」
その日、私達は今までで一番の素っ頓狂な声を出したのであった。
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